オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第143回は「美容部員」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
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↑「美容部員」とは百貨店などの化粧品売り場で顧客に助言や販売をする人。「美容部」という部活の部員ではない...
まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「美容部員」はどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の英語訳
1. beauty adviser/advisor
2. beauty expert(s)
3. cosmetic consultant
4. cosmetician
DMM英会話なんてuKnow?
英辞郎 on the WEB(辞書)
Reverso Context(辞書)
Yahoo!知恵袋
YOLO
ご覧のとおり、beauty または cosmetic という文字から始まる4つの訳語が見つかりました。この中のどれを使えばいいのでしょうか? また、adviser と advisor はどちらのスペルが正しいのでしょうか?
以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった表現も含め、「美容部員」の英語について分かりやすく説明します。
Adviser/Advisor, Consultant, Counsel(l)or の違い
まず、美容部員には少なくとも「ビューティーアドバイザー (略称 BA)」「ビューティーコンサルタント (略称 BC)」「ビューティーカウンセラー (略称 BC)」という別称がありますが、これらはもちろん英語の beauty adviser/advisor、beauty consultant、beauty counsel(l)or をカタカナにしたものです。
「助言者」を意味する adviser と advisor のスペルはどちらも使われますが(一般的には adviser のほうが普通)、アメリカでは「アドバイザー」という職業の肩書きには advisor のスペルを使うほうが多いとされています。一方、「カウンセラー」のスペルはアメリカが counselor でイギリスが counsellor です。
adviser/advisor と consultant は単に「エキスパートレベルのアドバイスをする職業の人」という意味で使えますが、counsel(l)or は資格を取得して学校や病院で働くカウンセラーを意味するのが普通です。
Beauty Expert? Cosmetician?
さて、今回見つかった訳語には今の説明に出てきた beauty adviser/advisor の他に beauty expert(s)、cosmetic consultant、cosmetician という表現も含まれていますが、前回の #142 『専門家』の英語は expert, specialist, professional などのどれ? でも説明したとおり expert (エキスパート) は単に「達人」などを意味するため、beauty expert は美容師など他の美容職のエキスパートにも該当してしまいます。
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↑サロンで働くこの人たちも beauty expert。でもこの人たちを「美容部員」とは呼ばない...
一方、cosmetic consultant と cosmetician に含まれる cosmetic という単語は「美容の」や「化粧品」の意味でよく使われますが、cosmetician は美容院や撮影スタジオで化粧 (メイク) を施す職業の人などにも該当してしまう表現です(「化粧(品)」という日本語が持つ複数の意味や cosmetic と makeup の違いは #66 『化粧品』『メイクアップ化粧品』『基礎化粧品』は英語で何と言う? で説明しています)。
どの表現を使うのが一番いい?
では、結局「美容部員」にはどの表現を使えばいいのでしょうか? どう表現するかはその人やお店の自由ですが、美容部員についての英語の記事や動画では beauty advisor と beauty consultant が多い印象です。
もし美容サロン/クリニックや顧客の自宅などではなくデパートやドラッグストアなど商店の化粧品売り場で働く美容アドバイザー/コンサルタントだということを明確にしたい場合は、in-store や store-based を付けて in-store beauty advisor や store-based beauty consultant と表現できます。
なお、cosmetic consultant という表現はほとんど見られないだけでなく、少し言いにくい人もいると思いますので特に使う必要はないでしょう。
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↑「私、cosmetic consultant になりたいんです」「今ちょっと噛んだでしょ?」
ただ、この advisor や consultant はそもそも「部員」という意味ではありません。もし「美容部員」という言葉どおりの英語にしたい場合はこの「部員」の意味を知る必要がありますが、国語辞書やウィキペディアにその説明はなく、見つかったのはブログや質問コミュニティーサイトの「美容部に配属する人」や「そこに所属する化粧品の販売員」という説明だけです(メーカーで美容商品を担当する部署の人のことだと思います)。
「部署」の英語には department が多く使われるため「美容部員」であれば beauty department staff (member) になりますが、department にはデパートの「売り場」の意味もあるのでこの表現は「美容品売り場のスタッフ」と誤解されるかもしれません(#115 『売り場』は英語で何と言う? でも説明したとおり、デパートは多くの department で構成されているお店だから department store と呼ばれています)。
そのため、"a representative from the manufacturer's beauty department" (メーカーの美容部から来た販売代理人) と表現すると意味が明確になりますが、そもそも「美容部員」という日本語をこの意味で使うことは稀だと思いますので、日本語でもこの職業は「美容部員」ではなく「ビューティーアドバイザー/コンサルタント」または「美容アドバイザー/コンサルタント」と表現するほうがいいでしょう。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか?「美容部員」の英語に beauty consultant を載せている辞書・サイトはありませんでしたので、少なくとも辞書は載せておくべきでしょう。
美容部員について今回調べた際、質問コミュニティーサイトに「よく美容部員といいますが、美容部ってどんなことをする部活動なのですか?」という真面目な質問が最近投稿されているのを発見しました。やはり誤解を招きやすい「美容部員」という言葉はもう使わないほうがいいと思います...