#132 『バーゲンセール』は本当に和製英語?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第132回は「バーゲンセール」の英語についてです。

◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。

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↑bargain (お買い得) と sale (特売) をつなげた bargain sale。和製英語だとしたら正しい英語は何?


まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「バーゲンセール」はどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。

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「バーゲンセール」
インターネット上の主な英語訳
1. bargain sale
2. sale
訳語を載せた辞書・サイト
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?

英語コーチ工藤 裕(英語英会話オンライン個別コーチング)
英辞郎 on the WEB(辞書)
English Style
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
ネイティブと英語について話したこと
猫と洋書とオーストラリアで

Reverso Context(辞書)
たれおも英語
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「バーゲンセール 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、主に2つの訳語が見つかりました。bargain sale は主に辞書サイト、sale は主に英語学習サイトが載せていましたが、bargain sale を和製英語と説明しているサイトもいくつかありました。それが本当だとすると「バーゲンセール」は単に sale と表現すればいいということでしょうか?

以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった表現も含め、「バーゲンセール」の英語について分かりやすく説明します。

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「セール」と「バーゲンセール」は同じではない?

まず、日本では「セール」「バーゲンセール」のどちらの言葉も使われており、例えばインターネット上では「只今セール中」と「只今バーゲンセール中」の両方の表現が見られます。普段から言葉を短く略す傾向のある私たちが「セール」ではなくあえて「バーゲンセール」と表現することがあるのはなぜでしょうか?

日本語版ウィキペディアの『バーゲンセール』のページでは、百貨店や衣料品店など単価が高い商品を扱うお店で季節の終わりなどに行う在庫一掃セールが「バーゲンセール」、スーパーや食料品店など単価が安くて入れ替わりの少ない商品を扱うお店で行う安売りが「特売」や「セール」と呼ばれることが多いと説明されています。同じ割引率でも単価が高い商品はお得感が大きいから「バーゲン」という言葉を使うのかもしれません。

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↑「やっぱりバーゲンセールはお得だわね~」「お得だから『バーゲン』なんだよ~」

「バーゲンセール」は和製英語?

さて、bargain sale はCollins英英辞書で "an event at which goods are sold at low prices, usually to clear old stocks" (商品を特に在庫処分の目的で安く売る催し) と説明されているため和製英語ではありませんが、bargain (お買い得) と sale (特売) を合わせているので意味が重複した感じがあります。

広告を出す側が通常のセールよりもお得感を出すためにあえてこのように bargain sale と表現しても不思議ではありませんが、この言葉は少なくとも今は商品を安値で慈善団体へ提供する場合に使われるのが普通のようなので、その場合は日本の「バーゲンセール」のイメージで解釈しないよう注意が必要です。

「バーゲンセール」は英語で何と言う?

では、先ほどの日本語版ウィキペディアの説明のように百貨店などが季節の終わりなどに行う在庫一掃セールを「バーゲンセール」と呼んでいる場合、英語ではそれをどう表現すればいいのでしょうか?

一部の英語学習サイトは end of season sale (季末セール) や clearance sale (クリアランスセール/在庫処分セール) という表現も載せていましたが、日本語の「バーゲンセール」に最も近いニュアンスで bargain sale と違って一般的な表現は、どの辞書・サイトも載せていなかった blowout (sale) だと思います。これは主にアメリカで使われている表現で、イギリスではまだ(少なくとも一般的には)使われていないようです。

「(在庫を) blow out する (=吹き出す) セール」という意味のこの言葉は end of season sale や clearance sale ほど直接的な表現ではなく、誇大広告的なところも同じく季節の在庫を一掃する「バーゲンセール」に似ています。逆にこの blowout (sale) を日本語にするときは、「ブローアウト(セール)」と表現すると日本の消費者の多くは意味が分からないので「バーゲンセール」と表現するのがいいでしょう。

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↑「夏のバーゲンセール」を意味する summer blowout。このように sale を付けずに blowout を名詞としても使える。

一方、単にいつものセールよりもお得感を出すために「バーゲンセール」と表現している場合は、英語でもそのまま bargain sale と表現するか、special sale (特別セール) と表現するのがいいでしょう。

その他、通常よりも大規模なセールという意味であれば、super sale (特大セール) や mega sale (メガ級のセール) がお店側の表現として使えます。消費者としてそのような大売り出しを表現する場合は、big/major sale (大規模なセール) や massive sale (超大型セール) を使うほうがいいでしょう。

これらの ○○ sale という表現はすべて "The store is having a ○○ sale" (そのお店は○○セールをやっている) や "The ○○ sale has started" (○○セールが始まった) のように使えますが、「バーゲンセール」という言葉を単に「セール」と同じ意味で使っている場合はもちろん ○○ の部分は不要です。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回説明した blowout (sale) が「バーゲンセール」の英語として多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。

この sale (複数形は sales) という単語には「販売/営業」という意味もありますので、例えば sales department (営業部) を「セール中のデパート」と勘違いしないよう注意しましょう...

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