#13 「美容院」と「エステ」の英語は両方とも beauty salon?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。
第13回は「美容院」「エステサロン」の英語についてです。

注意 言葉は時代、状況、文脈などによって変化する場合があることを留意してお読みください。また、以下の内容はアメリカとイギリス以外の英語圏には該当しない場合があります。

Delbeautybox / Pexels.com

↑ここはエステではなく「美容院」。でも本当に "beauty salon" と呼んでいい?


まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「美容院」はどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをそれぞれアルファベット順に記載します。

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「美容院」
インターネット上の主な英語訳
1. beauty parlo(u)r
2. beauty salon
3. beauty shop
4. hair salon
5. hairdresser's (salon)
6. hairdressing salon
7. hairstyling salon
訳語が見つかった辞書・サイト
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英語ぷらす
英辞郎 on the WEB(辞書)
英これナビ
Glosbe(辞書)

goo(辞書)
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
おかしもんの大人になってから始める英会話
Reverso Context(辞書)
weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「美容院 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、訳語が beauty から始まるものと hair から始まるものにほぼ二分されています。「美容院」を beauty ○○ と表現するのは正しいように思えますが、実はそう単純な話ではありません。

以下では、今回調べた辞書・サイトで説明が見られなかったその他の点も含め、「美容院」と「エステサロン」の英語について分かりやすく説明します。

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「美容院」とは

まず、beauty parlo(u)rbeauty salonbeauty shop の3つは日本語の「美容院」や「美容室」のように表現が若干異なるだけのため、以降ではアメリカとイギリスの両方で今も一般的に使われている表現でスペルも同じ beauty salon に統一して話を進めます(日本語も「美容院」に統一します)。

「美容院」は主な国語辞書で「パーマなどの美容術を施す営業施設」、日本語版ウィキペディアの『美容所』のページでは「美容(パーマ、結髪、化粧など容姿を美しくする)の業を行うために設けられた施設」と説明されており、髪の毛やその他の容姿を美しくしてくれる施設だということが分かります。

美容系サロン検索サイトでは検索カテゴリーが「美容院/ヘアサロン」「ネイル/まつ毛サロン」「エステサロン」「リラクゼーションサロン」のように分かれており、「ヘアサロン」や「ネイル/まつ毛サロン」は意味が分かりやすく「リラクゼーションサロン」は今回のトピックの対象外のため触れないでおくとして、残りの「美容院」と「エステサロン」は具体的にどのようなサービスを提供しているのでしょうか?

美容院のメニュー

試しに「美容院」と名乗る東京都内のお店のウェブサイトをいくつか見てみると、カット、カラー、パーマなどヘアスタイルに関するサービスに加え、ヘッドスパ、化粧、着付けを行っているお店がそれなりにありました(その他の美容サービスを提供しているお店もあります)。

注目すべきは化粧や着付けなどヘアスタイル関連以外の美容サービスも提供しているお店がそれなりにあることではなく、ヘアスタイル関連のサービスしか提供していないお店が数多くあることです。つまり、日本の美容院は「ヘアスタイル + その他美容」「ヘアスタイル専門」の2タイプに分かれているということです。

kaleido-dp / Pixabay.com

↑「いや、うちは髪の毛オンリーっすよ」「あら、『美容院』って書いてあったからいろいろやってくれるのかと...」

「ヘアサロン」と何が違う?

では、「ヘアスタイル専門」の美容院と先ほどの「ヘアサロン」は何が違うのでしょうか?

インターネット上には「ヘアサロン」は美容院だけでなく床屋・理髪店も含むという情報がある一方、「美容院の別名」や「女性のヘアスタイリング」などの説明を載せた辞書もあるため不明としか言いようがありません。ただ、後で説明するようにアメリカやイギリスでは hair salon と床屋・理髪店を意味する barber shop (アメリカ)/barber's (shop) (イギリス) は別物です。

また、「ヘアスタイル + その他美容」の美容院については、本当に「美容院」と名乗れるほど日々の業務でネイルやスキンケアなどヘアスタイル関連以外の美容サービスも提供しているのでしょうか? 美容師の仕事内容を説明した日本語のウェブサイトによると、ハンドマッサージ、ネイル、エステなどのサービスも提供しているお店もあるものの、多くの美容院はヘアスタイルに関するサービスが中心とのことです。

「エステサロン」と何が違う?

では、「美容院」という名称はどのようなお店に相応しいのでしょうか? 実は先ほどの beauty salon は全身美容を行う「エステサロン」の英語としても和英辞書などに載っています。「エステ(ティック)」に該当する (a)esthetic という単語は形容詞として使う場合の beauty と同じく「美の」という意味のため、英語ではエステサロンの呼び名にわざわざこの学術的な (a)esthetic を使うことは普通ありません。

そのため、和英辞書で「エステ(サロン)」と「美容院」はどちらも beauty salon(またはそれに似た表現)と訳されており、髪の毛のカット、カラー、パーマなどが中心のお店を「美容院」と呼ぶことに慣れてしまっている私たちはそれを見ると「beauty salon って美容院とエステのどっちなの?」と思ってしまうのです。

Iakov Filimonov / Shutterstock.com

↑美しくなるために人間はここまでやらなければならないのだ。

「美容院」は英語で何と言う?

さて、髪の毛のカット、カラー、パーマなどが中心のお店を「美容院」と呼ぶのはどうかと書いたばかりですが、実はアメリカでもそのようなお店は beauty salon と呼ばれています。ただ、ヘアスタイル関連以外のサービスはマニキュアやペディキュアなどが多いため、女性向けのお店というイメージが強いようです(近年は若年男性の間でもスキンケアやマニキュア/ペディキュアなどの美容サービスを受ける割合が増えています)。

一方、ヘアスタイルに関するサービスを専門的に提供する男女向けの施設としてアメリカで普及するようになったお店は hair salonhairstyling salon と呼ばれ、これらのお店で働く人たちは hairstylist と呼ばれています。hairdresser という言葉は女性のヘアスタイリングを行う美容師に対して以前よく使われていたもので、今では時代遅れの表現というイメージがあるようです。

一方、イギリスではヘアスタイル関連のサービスが専門・中心のお店は(男女どちら向けでも)hairdresser's と呼ぶのが普通です(hairdresser's shop の略です)。そこで働く hairdresser は自らを hairstylist と呼んだり、そのお店を salon と呼ぶ人もいるためこれらのお店はアメリカのように hairstyling salon とも表現できます。なお、アメリカとは逆で hair salon は女性向けの古いタイプのサロンのイメージがあるようです。

日本にも言えることですが、若年男性はカットだけでなくカラーやパーマなどもできる美容院に行く人が増えたため、アメリカでもイギリスでも男性向けのカット専門店である床屋・理髪店の数は減り続けています。なお、今回調べた辞書・サイトで先ほどの hairdresser's が主にイギリスで使われている表現だということを説明しているものは2つだけでした(『goo』『weblio』)。

「エステサロン」は英語で何と言う?

さて、アメリカではヘアスタイル関連のサービスが中心のお店でも beauty salon と呼ぶと書きました。では、フェイシャルケアやボディケアなど全身美容を行う「エステサロン」は何と呼ばれているのでしょうか?

温泉療法などを行うリゾート施設と都会に展開している全身美容のお店の両方をアメリカでは spa と呼ぶらしく、リゾート施設のタイプは日本の「スパ」に該当すると思いますが、都会に展開しているタイプは「エステサロン」と同じなのかよく分かりません。一方、イギリスの場合は日本でエステと呼べるタイプのお店は beauty salon、温泉療法などを行うリゾート施設はアメリカと同じく spa と呼ぶのがいいでしょう。

なお、英語版ウィキペディアの『Day spa』のページではリゾート型スパ施設を destination spa や resort-spa、日帰りで行ける全身美容のお店でサウナやプールがあるものを day spa と表現しています(spa には単に「鉱泉・温泉」の意味もあります)。

Pexels / Pixabay.com

↑大自然の spa (温泉) で瞑想により宇宙とつながる男性。

日本の「美容院」にはどの英語を使うのがいい?

最後に、日本の美容院は英語で何と表現するのがいいのでしょうか? 化粧、ネイル、スキンケアなどヘアスタイル関連以外のサービスもそれなりの割合で提供しているお店であれば、beauty salon と表現してもいいと思います(ただしイギリス人にエステと間違われる可能性がありますが)。

一方、髪の毛のカット、カラー、パーマなどを中心に行う多くの美容院はやはり hair という単語を使って表現するほうが適切と言えます。その場合、アメリカでもイギリスでも違和感のない hairstyling salon と表現するのが一番いいでしょう。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回説明した「美容院」のアメリカとイギリスでの表現の違いが多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。

美容院を開業予定の方は、ヘアスタイル関連以外の美容サービスをほとんどまたは全く提供しない場合は「美容院」ではなく「ヘアスタイリングサロン」と呼ぶのがいいでしょう。その場合、そこで働く人はもちろん「美容師 (beautician)」ではなく「ヘアスタイリスト (hairstylist)」になります。

なお、海外で hairdressing salon という表現を使ったお店を見かけても、髪の毛にドレッシングをかけるサロンではないのでご安心ください。