オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第116回は「毛布」「タオルケット」「ガーゼケット」「キルトケット」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
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↑「どう? この blanket なかなか素敵でしょ?」(えっ、それ毛布なんですか?)
まず、今回主に説明する「毛布」と「タオルケット」はオンライン和英辞書や英語学習サイトでそれぞれどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
1. blanket
2. cover
インターネット上の主な英語訳
1. blanket made of toweling
2. cotton blanket
3. summer blanket
4. terry-cloth blanket
5. towel(-)blanket
6. towel like blanket
7. toweling blanket
8. towelket
bab.la(辞書)
地球に生きてる今を楽しもう!
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Life Dictionary
Linguee(辞書)
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
ご覧のとおり、「毛布」は主に2つ、「タオルケット」は主に8つの訳語が見つかりました。「毛布」の2番目の cover は単に「カバー (覆い)」のため「毛布」とは違いますが、blanket (ブランケット) は「毛布」と同じなのでしょうか? また、「タオルケット」にはどの表現を使えばいいのでしょうか?
以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった表現も含め、「毛布」「タオルケット」「ガーゼケット」「キルトケット」の英語について分かりやすく説明します。
毛布 ≠ Blanket
まず、「毛布」と blanket は同じではありません。なぜなら、例えば日本では「毛布を取ってきてくれる?」と言われてタオルケットを持っていったら「これタオルケットじゃないか!」となりますが、タオルケット(というものはアメリカやイギリスには普通ありませんが)も英語では blanket に該当するからです。
英英辞書の多くは blanket を単に「普通は長方形をしている大きな厚手の fabric/cloth (=織物と編み物の両方に該当) で特にベッドなどで体を温めるために使うもの」のように説明しているのに対し、主な国語辞書は「毛布」を「起毛」させた「毛織物」に限定しています。日本語版ウィキペディアの『毛布』のページには編み物も含まれていますが、それは同ページが英語の blanket の情報を基に書かれているからだと思います。
そもそも「布」とは織物の総称のため、「毛布」も織物のはずです。毛布の種類について説明した日本語のウェブサイトをいくつか見ると「マイヤー毛布」は編み物とされていますが、そのマイヤー毛布も含めどの毛布の写真も編み目のない「布」に見えるものばかりで、冒頭の写真や次の写真のような明らかに編み物に見えるブランケットは含まれていません(そのようなタイプが日本では一般的ではないからかもしれません)。
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↑冒頭の写真やこの写真のようなブランケットを「毛布」とは呼ばないはず。もし「毛布」という言葉の意味が進化してそう呼べるようになっていても、タオルケットまで「毛布」と呼ぶ人は普通いない。
つまり、「毛布」は「起毛 (=毛羽立たせること) させた織物(風)のブランケット」を意味すると言えそうですが、その場合は次のようにあくまでも blanket (ブランケット) の一種になります。
毛布・・・・・・・起毛させた織物(風)のブランケット
タオルケット・・・タオル地のブランケット
ガーゼケット・・・ガーゼ素材のブランケット
キルトケット・・・肌布団(肌に直接掛ける薄い掛け布団)として使うキルティングされたブランケット
その他・・・・・・上の2つの写真のような編んだブランケットなど
なお、#59 『マルチカバー』は英語で何と言う? で登場した throw blanket (スローケット) は起毛タイプであれば「毛布」に分類されるでしょう。
「毛布」は英語で何と言う?
では、まず「毛布」は英語で何と言うのでしょうか? 単に blanket と表現すると、起毛タイプではないブランケットや「毛布」とは呼ばない「タオルケット」や「ガーゼケット」にも該当してしまいます。
絨毯やビロードの表面にある「毛羽」は英語で pile や nap と呼ばれており、アメリカやカナダのメーカーのウェブサイトでは起毛処理をしたブランケットを専門的に napped blanket と表現しています。もし「毛布」という日本語が主な国語辞書の説明のように起毛処理をした毛織物を意味するのであれば、この表現が一番近いと言えるでしょう(タオルケットにも起毛処理をしたタイプがあればそれにも該当してしまいますが...)。
また、口語的には「毛羽立った」や「(毛などが) 短くて縮れた」を意味する fuzzy を使って fuzzy blanket と表現したり、毛羽立っているだけでなくふんわりとした感じであれば fluffy blanket と表現できます。
一方、「毛布」という日本語が今では製法や起毛処理の有無に関係なく「(夏に使うことが多い綿毛布など一部の「毛布」を除く) 主に冬用のブランケット」という意味で使われているのであれば、「マフラー」の winter scarf や「アウター」の winter coat/jacket のように winter blanket と表現すればいいでしょう。
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↑「マフラー! アウター! 毛布! どれも普通は冬のアイテム!」「そうだったー!」
「タオルケット」は英語で何と言う?
では、「タオルケット」の英語は何でしょうか? 先ほど英英辞書の多くは blanket を単に「普通は長方形をしている大きな厚手の fabric/cloth で特にベッドなどで体を温めるために使うもの」のように説明していると書きましたが、タオルケットもシーツや布団カバーに比べれば「厚手」でお腹などを冷えから守るため blanket の一種です。そして今回見つかった8つの主な訳語には次のような違いがあります。
意味としては正しいものの、説明的な表現のため例えば「タオルケットを取ってきてくれる?」と言いたくて "Can you get the blanket made of toweling for me?" と表現するとものすごく不自然になってしまう。タオルケットは単にタオル地を縫い合わせたものではなく別物と化していると考える場合は from を使って blanket made from toweling。タオル地のスペルはイギリスでは l が2つの towelling。
タオルケットには麻や化繊素材のものも一部あるため、タオルケットの総称としては使えない。また、綿素材のものが多い「ガーゼケット」やタオルケットではない「綿毛布」にも該当してしまう。
同じく特に夏に使われることが多い「ガーゼケット」や「綿毛布」にも該当してしまう表現。
ベロアのタオルのようにテリー織り (=普通のタオル地) ではないタオルもあり、タオルケットにもテリー織り以外のものがあると思われるためタオルケットの総称としては使えない。普通はハイフンなしの terry cloth または1語で terrycloth。cloth を省略して terry だけでも可。
正確にはハイフンを入れた towel-like blanket。これも "Can you get the towel-like blanket for me?" (タオル風のブランケットを取ってきてくれる?) のように使うと説明的になってしまい不自然。
逆の「ブランケットでもあるタオル」は blanket towel。これらをペット/赤ちゃん用やビーチ/水泳用に売っているアメリカのウェブサイトがいくつかある。タオルケットはタオルではないので意味が違う。
1の blanket made of/from towel(l)ing と同じくタオルケットの正しい表現でありながら、説明的ではなくシンプルで自然。towel(l)ing という名詞は先ほどの terry cloth (テリー織り) をイメージさせるものの、単に「タオル地」を意味するためそれ以外のタオル地で作ったタオルケットにも使える。ただし「タオルで乾かす」という動名詞と読み間違えると「タオルとして使うブランケット」になってしまう。
「タオルケット」をそのまま英語化した表現。少なくともアメリカやイギリスでは通じない。
このようにそれぞれ弱点はあるものの、タオルケットというものについて説明したい場合は blanket made of/from towel(l)ing、夏用の薄手のもの(ただしガーゼケットや薄い綿毛布も含む)をイメージさせたければ summer blanket、普通のテリー織りのものであれば terry (cloth) blanket、タオルケット全般の商品カテゴリー名には towel(l)ing blanket など、状況に応じて使える表現がいくつかあるということです。
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↑blanket という単語は体に掛けるブランケットを意味するとは限らず、このようにビーチで敷物として使う beach blanket やピクニック用の picnic blanket の他、"a blanket of snow" (一面の雪) のように比喩的にも使われる。
「ガーゼケット」と「キルトケット」は英語で何と言う?
最後は、ガーゼを何重かに重ねて作ったブランケットの「ガーゼケット」とキルティングされた薄手の肌掛け布団の「キルトケット」の英語についてです。
ガーゼケットもタオルケットと同じくアメリカやイギリスには普通ありませんが、towel が「タオル地」という素材ではなく濡れたものを乾かす「タオル」を意味するのに対し、gauze (発音は「ゴーズ」) は「ガーゼ」という素材を意味するため、「ガーゼケット」はそのまま gauze blanket と表現できます。ただ、赤ちゃん用と誤解する人や、かなり薄手のものは blanket ではなく sheet と呼ぶほうが適切に感じる人もいます。
キルトケットは単に quilted blanket (キルティングされたブランケット) と表現すると #15 『敷き布団』『掛け布団』『布団(全体)』は英語で何と言う? で登場した厚手の掛け布団の comforter などにも該当してしまうため、「薄手」を意味する thin を加えて quilted thin blanket または thin quilt と表現するといいかもしれません(どちらも薄手でカラフルな掛け布団の patchwork quilt にも該当してしまいますが)。
そのような薄手でキルティングされたブランケットには意図的に重くした weighted blanket (ウェイテッドブランケット) というタイプがあり、現在の主流のブランケットになっているようです。その適度な重さがストレス・不安の解消や睡眠の質の向上につながるとされていますが、実際の効果の程は分かりません。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回説明した起毛ブランケットや冬用ブランケットの表現が「毛布」の英語として多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。
「毛布は英語で blanket です」と教えてくれる英語の先生がいたら、「先生はタオルケットやガーゼケットも毛布と呼ぶのですか?」と聞いてみるといいかもしれません。