オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第43回は「ブラインド」と「ロールスクリーン」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
Yunava1 / Shutterstock.com
↑「長さ足りない?(汗)」とロールスクリーンを広げて不安になる男性。
まず、「ブラインド」と「ロールスクリーン」はオンライン和英辞書や英語学習サイトでそれぞれどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の英語訳
1. blind(s)
2. roller blind
3. screen
4. shade
5. Venetian blind
6. window blind
7. window shade
インターネット上の英語訳
1. roll screen
2. roller blind
3. roller screen
4. rolling screen
5. shade
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Imagict(辞書)
インテリア用語辞書(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
Reverso Context(辞書)
産業翻訳だよ! 全員集合(辞書)
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
Yahoo!知恵袋
ご覧のとおり、それぞれ似たような訳語がいくつか見つかりました。そしてブラインドとロールスクリーンの両方に roller blind と shade が含まれています。これは一体なぜでしょうか?
以下では、どの辞書・サイトも載せていなかったアメリカとイギリスでの表現の違いも含め、「ブラインド」と「ロールスクリーン」の英語について分かりやすく説明します。
ブラインド vs ロールスクリーン
まず、日本で「ブラインド」と呼ぶものは英語でも blind と表現するのが普通で、窓用ということを明確にした表現が window blind です(ただしどちらの表現も雨戸などを含む意味で使われることがあります)。
カーテン、雨戸、日除けなど窓に取り付ける器具にはそれぞれ役割がありますが、ブラインドは形容詞の blind が「見えない/目隠しの」という意味のため部屋の中を隠すのがその主な役割と言えるでしょう。
一方、冒頭の写真のような「ロールスクリーン」は目隠しや日除けとして窓に取り付ける以外にも、部屋の一部を隠したり間仕切りとして使われることがあります。
Noelle Otto / Pexels.com
↑ブラインドの隙間からこちらを覗いて誘惑するモヒカンの女性。
「ロールスクリーン」は英語で何と言う?
さて、ブラインドには種類があり、ロールスクリーンもブラインドの一種と考えるのがイギリスです。そのため、ロールスクリーンはイギリスで roller blind と呼ばれており、例えば大手通販サイトのAmazon.co.ukでも "Blinds" というカテゴリーの中に "Roller Blinds" というサブカテゴリーが見られます。
一方、アメリカでは blind の他に shade という表現があり、どちらも同じと思っている人も多いようですが(これが辞書で「ブラインド」の英語に shade も含まれている理由です)、多数の羽根板から成る blind と違って shade はシートなど1枚につながっているものを指し、Amazon.comでは "Blinds & Shades" というカテゴリーの中にロールスクリーンに該当する "Roller Shades" というサブカテゴリーが見られます。
ここでの shade は「光をさえぎるもの」という意味のため、blind が「目隠し」だとすると shade は「日除け」と考えることができます。なお、日光や雨を除けるためにお店の窓の外側に面した席や入り口の上に取り付けられたシート状の屋根はアメリカでもイギリスでも awning と呼ばれています。
Antonio Jiménez Alonso / FreeImages.com
↑これはお店ではないが、窓の外側に取り付けるこのような日除け・雨除け・風除けシートは awning。
ブラインドの種類について説明したアメリカのウェブサイトをいくつか見ると、shade はつながった1枚のものだけでなく隙間がとても狭い「1枚に見えるもの」にも使われている印象があり、例えばYouTube動画の中には「すだれ」を bamboo shade と表現しているものがあります。一方、イギリスではブラインド類に shade という単語は普通使わないため、すだれであれば bamboo blind になります。
日本ではなぜ「ロールスクリーン」?
さて、shade は日本語でも「シェード」と呼ばれているようですが(「シェイド」のほうが英語の発音に近いですが)、たくし上げるタイプではなく巻き上げるタイプのシェードになるとなぜか「ロールシェード」ではなく「ロールスクリーン」と呼ぶのが普通のようです。例えば、Amazon.co.jpでは「カーテン・ブラインド」というカテゴリーの中に「ロールスクリーン」というサブカテゴリーが見られます。
ロールスクリーンは目隠しや日除けとしてだけでなく部屋の間仕切りとしても使われるため、その場合は roll screen ではなく roller screen と表現すれば意味的に適切で英語の表現としても自然ですが、先ほど説明したとおりこの製品は roller shade (アメリカ) または roller blind (イギリス) が英語での一般的な呼び名のためこれらの表現を使うほうがいいでしょう。
今回調べた辞書・サイトで「ロールスクリーン」の英語に roller blind を載せているものは2つありましたが(『産業翻訳だよ! 全員集合』『Weblio』)、roller shade を載せているものはありませんでした。
stux / Pixabay.com
↑電気をつけたままロールスクリーンを半開きにしている節電意識の低い男性(休日出勤中)。
1枚のブラインドは A Blind それとも Blinds?
先ほど書いたとおりブラインドには種類があり、2枚目の女性の写真に見られるような標準的なブラインドは英語で Venetian blind と呼ばれています。日本ではこれを「ベネシャンブラインド」と表現するようですが、英語では「ベニーシャンブラインド」のように発音するので注意が必要です。
多数の羽根板から成る1枚の(ベネシャン)ブラインドを単数形で "a (Venetian) blind" と表現するとブラインドの意味にはならないと説明している日本語のウェブサイトもありますが、実際にはそのように羽根板1枚1枚を "a blind" と見なして全体のブラインド1枚を "blinds" と考える人と、羽根板はあくまで "a slat" のため全体のブラインド1枚は "a blind" と考える人に意見が分かれるため、どちらが正しいとは言えません。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回説明した「ブラインド」と「ロールスクリーン」の英語表現の違い、そしてロールスクリーンの呼び名がアメリカとイギリスで違うということが多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。
インテリア業界の方は、これを機にロールスクリーンを「ローラーシェード」や「ローラーブラインド」と呼び始めると、これらの正しい英語名が業界内外に浸透していくかもしれません。