#25 『ボトル缶』と『ペットボトル』は英語で何と言う?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第25回は「ボトル缶」「ペットボトル」の英語についてです。

◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。

Kaitlyn Baker / Unsplash.com

↑ボトルの形をした缶だから「ボトル缶」。さて英語では何と言う?


まず、「ボトル缶」とはボトルの形をした缶のことで、コンビニや自動販売機で売られている飲料に使われている容器の1つです。この容器を使ったボトル缶飲料の代表的な例に「ボトル缶コーヒー」があります。

では、この「ボトル缶」はオンライン和英辞書や英語学習サイトでどう英語に訳されているのでしょうか? 見つかった訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。

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「ボトル缶」
インターネット上の英語訳
1. aluminium can shaped like a bottle
2. bottle can
3. metal bottle
訳語を載せた辞書・サイト
bab.la(辞書)
Glosbe(辞書)
Linguee(辞書)
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「ボトル缶 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、3つの訳語が見つかりました。2番目の bottle can という直訳の表現は英語圏で実際に使われているのでしょうか?

以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった表現も含め、「ボトル缶」や関連性のある「ペットボトル」の英語について分かりやすく説明します。

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飲料の缶に使われる金属は2種類

まず、缶飲料の容器に使われている金属はアルミニウム (通称アルミ) とスチール (鋼鉄) のどちらかのため、aluminium can shaped like a bottle という表現はアルミ製のボトル缶にしか使えないことになります。冒頭でボトル缶を「ボトルの形をした缶」と説明しましたが、英語では「金属製のボトル」と考えるほうが普通で、アルミ製ボトルであればシンプルに alumin(i)um bottle と表現できます(i はイギリスのスペル)。

同じくスチール製のボトルの場合は steel bottle になりますが、普通は錆びないステンレスのスチールを使うため stainless steel bottle と表現されます(日本では「ステンレススチール」というフレーズは長すぎるためか、「スチール」を略して「ステンレス(の)ボトル」と表現されるのが普通だと思います)。

この alumin(i)um bottle や stainless steel bottle はアルミ製のスプレー缶やステンレス製の水筒にも該当しますが、ボトル缶にも使える表現です。ただ、アメリカやイギリスで缶コーヒーは普通売っていないため、例えば alumin(i)um bottle は背の高いスリムな炭酸飲料のアルミボトルをイメージさせるでしょう。

Gabriel Peter / Pexels.com

↑木道の真ん中に置き去りにされたステンレスボトル。

なぜ2種類の金属が使われる?

飲料に使われるアルミ缶とスチール缶の違いを説明したウェブサイトによると、本当はすべての缶飲料に軽量で輸送しやすいアルミ缶を使いたいものの、発泡性のない飲料にアルミを使うと缶の強度が弱く感じられたり、ミルク入り飲料に使うとボツリヌス菌という菌が発生したときにアルミ缶では気づくことができないという問題があったため、一部の飲料の缶にはスチールを使う必要があったようです。

これらの問題は技術の進歩とともに改善され、多くのスチール缶がアルミ缶に置き換えられたようですが、鉄鋼メーカーはスチール缶を使い続けてほしいため缶を軽量化するなど工夫しているようです。

そのため、今後もスチール製のボトル缶は市場に存在し続けるかもしれません。その場合、アルミ製とスチール製のどちらか分からなければ alumin(i)um or stainless steel bottle のように表現するか、今回見つかった訳語に含まれている metal bottle (金属製のボトル) という表現を使うことになるでしょう。

Bottle Can?

では、直訳の bottle can は英語圏で使われているのでしょうか? 答えは「マーケティング業界や飲料業界の人には通じる可能性がある」というレベルです。少なくとも英語のマーケティング系サイトではこの表現は使われています。ただ、これは日本など製造国での表現に合わせたのであって英語圏で生まれた表現ではないと思います。なお、日英翻訳者の立場としては bottle can という表現について次の問題点を挙げざるを得ません。

1. bottle と can という2つの容器の名詞が並んで気持ち悪い
2. ハイフンを使わないと「ボトルが○○できる」のように読めて気持ち悪い
3. でもハイフンを使うと形容詞みたいで気持ち悪い
4. つなげて bottlecan と入力するとスペルエラーの赤波線が表示されて気持ち悪い

このように気持ち悪いことだらけなのですが、少なくとも業界ではボトル缶を bottle(-)can と表現しているためそのままこの表現を使わざるを得ません(英語版ウィキペディアの『Aluminium bottle』のページでもボトル缶は説明されており、表記はつなげて1語にした bottlecan が使われています)。

今回調べた辞書・サイトで訳語に alumin(i)um bottlestainless steel bottle を載せているものはありませんでしたが、bottle can を載せているものは2つありました(『Reverso Context』『Weblio』)。

「ペットボトル」は英語で何と言う?

さて、日本で「ペットボトル」と呼ばれているあのプラスチックボトルは、いくつかの和英辞書や英語学習サイトが説明しているとおり単に plastic bottle と呼ぶのが普通です。

ペットボトル (PET bottle) の PET は「ポリエチレンテレフタラート」というプラスチックの一種のため、例えばスプレーボトルやシャンプーボトルなどポリエチレンテレフタラート以外のプラスチックボトルと区別する場合や、容器のリサイクルの話をするときは PET bottlePETE bottle と表現するほうがいいでしょう。

ただ、PETPETE が何の略か知らないネイティブスピーカーも結構いるため、長くて覚える気がしませんが polyethylene terephthalate bottle と説明するほうがいいかもしれません。

sam26haven / Pixabay.com

↑"PET bottle" と表現するとペット用のボトルかと思う人もいるので注意が必要だ。

一方、ペットボトルとボトル缶のどちらのタイプの飲料を買うかなどの話をしているときは、プラスチックや金属の種類は重要ではないためペットボトルであれば意味が100%通じる plastic bottle を使い、ボトル缶の場合は先ほどのように金属の種類によって表現を使い分けるか、種類が分からなければ metal bottle と表現するのがいいでしょう。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回説明した「ボトル缶」の英語表現が多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。

ペットボトルは「プラボトル」と表現するほうが英語での呼び名に近いだけでなく、略称を好む日本人に合っているとも思います。ただ、今さら呼び名を変えるのは無理なので、英語で表現するときだけ「PET→plastic」と切り替えましょう。なお、私が英語に翻訳する資料の中にはペットボトル飲料が「ペット飲料」と略されていることがあり、それを見るたびに何だか複雑な気持ちになります。

ボトル缶も metal bottle を略して「メタボトル」と呼ぶことを提案しようと思ったのですが、メタボな感じがしてしまい廃案となりました...

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