オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第10回は「同僚」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
Christina Morillo / Pexels.com
↑上司に恋してしまったことを同僚に伝える女性。この場合の「同僚」も本当に colleague や co-worker?
まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「同僚」はどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
1. associate
2. colleague
3. compeer
4. confrere
5. co-worker / coworker
6. equal
7. fellow
8. fellow worker
9. friend from work
10. peer
11. someone I work with
12. work friend
13. workfellow
14. workmate
アメリカ発 ビジネス現場の英語
bab.la(辞書)
貿易キャラナビ Tlady
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英語プラス
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Hapa Eikaiwa 英語学習コラム
「本気で学び本気で楽しむ」英会話コミュニティ
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
MYスキ英語
ネイティブと英語について話したこと
Reverso Context(辞書)
RYO英会話教室
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
※アメリカとイギリス以外の国の英語について説明していたサイトは一覧に含めていません。
ご覧のとおり、数多くの訳語が見つかりました。この中で圧倒的に多かったのは colleague と co-worker (または coworker) です。どちらも「同僚」の英語として適切ではない場合があるのをご存知でしょうか?
以下では、どの辞書・サイトも載せていなかったその他の点も含め、「同僚」の英語について分かりやすく説明します。
「同僚」とは
まず、国語辞書などを見ると「同僚」には次の2つの意味があることが分かります。
2. 地位・役目が同程度の人
この1と2の「同僚」に該当する英語はそれぞれ何でしょうか? まずは説明が簡単な2から見ていきます。
地位・役目が同程度の人
例えば、「上司、部下、同僚の中で一番仕事がしにくい相手は誰?」と尋ねた場合の「同僚」はこの「地位・役目が同程度の人」を意味しますが、残念ながら今回圧倒的に多く見つかった colleague と co-worker はこの意味での「同僚」には該当しません。なぜなら、この2つの人たちには地位が異なる人も含まれるからです。
では、この意味での「同僚」は英語で何と言うのでしょうか? 最も理解される可能性が高い単語は、6つの辞書・サイトだけが載せていた peer です(この名詞が「等しい立場の人」を意味することまで説明しているのは『CUERBO』『Imagict』『実用・現代用語和英辞典』『Weblio』の4つの辞書だけでした)。
ただ、先輩・後輩などの上下関係が重要ではない欧米ではこの意味での「同僚」を表現する必要がそもそもないため、この単語を使っても理解されない可能性が高いです。状況や人によっては通じると思いますが、通じなければ "employee(s) at the same level as me" (自分と同じ地位の従業員) と説明すればいいでしょう。
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↑「上司でもないのに上から目線?」と不満げな表情で同僚を見る女性。
職場が同じである人
さて、この「職場が同じである人」という意味での「同僚」の英語が colleague または co-worker です。ただ、どの辞書・サイトでも説明が見られなかった点として、co-worker という言葉はイギリスでは普通使われません(イギリスでは workmate がよく使われると説明しているページはありましたが、これは「仕事仲間」という表現のため「同僚」の英語としては colleague のほうが適切です)。
アメリカで co-worker は同じ職場で一緒に働く人を意味し、上司でも部下でも「一緒に働いている」と言える人にはこの言葉を使えます(同じ会社で働く人全員を「一緒に働く人」と考えることもできます)。一方、colleague は自分と同じ専門職の人を意味するのが普通で、同じ職場で働いているとは限らないため「同僚」という日本語が持つ2つの意味のどちらにも該当しない(つまり同僚ではない)人にも使える言葉です。
このように colleague と co-worker の両方に該当する人もいればどちらかにしか該当しない人もいますが、地域や人によってこの2語の解釈は違う場合があるため、今説明した違いが正解というわけではありません。
一方、イギリスではこのような面倒な区別はなく、同じ職場で一緒に働く人は誰でも colleague です。そのため、co-worker という言葉を使う必要がありません。
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↑ネット動画を見て暇をつぶす「職場が同じ」人たち。社長までこんなでいいのだろうか?
「同僚」のその他の訳語
今回見つかったその他の主な訳語については、少しくだけた言い方の「仕事仲間」を意味する workmate はアメリカでは普通使われず、同じく「仕事仲間」を意味する fellow worker や workfellow も普段使う表現ではありません。一方、associate は「仲間」を意味する少しかっこつけた言い方で、friend from work や work friend は同じ職場の親しい人を表すときに使えます。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回説明した「同僚」という日本語が持つ2つの意味が多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。
アメリカ英語で「職場が同じである人」という意味での「同僚」が colleague と co-worker のどちらか忘れてしまったらとりあえず colleague を使い、「それ co-worker だよね?」と言われてしまったら「実は私はブリティッシュ派なんです」と説明してその場を乗り切りましょう...