オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第110回は「大学」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
◆更新履歴は「お知らせ」に載せています。
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↑卒業を迎えた大学生2人と教授。ここは college それとも university?
まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「大学」はどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
1. college
2. institute
3. school
4. uni / university
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
ご覧のとおり、主に4つの訳語が見つかりました。この中で圧倒的に多かったのは college と university です。この2つの違いは一体何でしょうか?
以下では、「総合大学」「単科大学」「短期大学 (短大)」の表現も含め、「大学」の英語について分かりやすく説明します。
College と University の違い(アメリカ vs イギリス)
まず、アメリカとイギリスでの college と university の違いを簡単に説明すると次のようになります。
college も university も「大学」を意味する同義語として使われているが、university は多分野の教育や研究を行う「総合大学」、college はその中の学部 (department/faculty/school) や1つまたは少数の分野の教育・研究を行う「単科大学」を意味するのが普通。ただし college と名乗る総合大学や逆に university と名乗る単科大学もある。university を uni と略すことはまずない。
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短大(2年制)は1970年頃までは公立も私立も junior college と呼ばれていたが、今では公立の短大は community college と呼ぶのが普通(公立の割合のほうが圧倒的に多い)。
総合大学は university または口語で uni (発音: ユーニ) と表現するのが普通。college は中等教育後の継続教育(16才頃~)を行う学校、高等教育(18才頃~)を行う専門学校、一部の総合大学を構成する各学校(例えば University of Cambridge (ケンブリッジ大学) の中には Christ's College や King's College など31もの college がある)などを意味する。
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短大に該当する学校はないためか、junior college という表現は使われない。community college は中等教育と継続教育を行う学校で、その地域の大人にも教育を提供している場合がある。
このように college はアメリカとイギリスで意味が結構違うのに対し、university はどちらの国でも「総合大学」を意味します。ただ、次のセクションで説明するとおり、大学に通っていることなどを説明する際はアメリカとイギリスで表現が多少違います。
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↑このマサチューセッツ工科大学のように "college" や "university" ではなく "institute" が大学名に使われている例外もある(U が V そっくりに彫られていることのほうが気になるが...)。
「大学に通う」や「大学に在籍している」は英語で何と言う?
さて、アメリカでもイギリスでも university は「総合大学」を意味するのが普通と説明しましたが、実際の会話では次のような違いがあります。
(米) I go to college.
(英) I go to university/uni.
つまり、アメリカでは university に通っていても "go to college" と表現するのが普通で、"go to school" も同じ意味で使えます。一方、イギリスでは総合大学に university または口語の uni を使うのが普通で(大学名に college が含まれていたり university の中に college がある場合を除く)、school という言葉は高校以下の学校をイメージさせるのが普通です(大学名や専門学校名に school が含まれている場合を除く)。
また、例えば大学に在籍していた頃のことを話す場合も次のように表現が違います(この場合は前置詞もアメリカとイギリスで普通は違います)。
(米) When I was in college, ...
(英) When I was at university/uni, ...
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↑「あたしがカレッジにいた頃はね...」「それってユーニのことかい?」
なお、college も university も大学を「1つ」「2つ」と数えることができる可算名詞 (数えられる名詞) でありながら、今挙げた2つの例ではどちらの単語にも冠詞の a または the が付いていません。理由は、どちらの例でも college/university を数えられる「大学という施設」ではなく、「大学というもの」のように数えられないものとして考えているからでしょう("go to school" や "in/at school" も同じです)。
日本の「総合大学」「単科大学」「短期大学 (短大)」は英語で何と言う?
最後に、日本の「総合大学」「単科大学」「短期大学 (短大)」はそれぞれ英語で何と言うのでしょうか?
文部科学省の『Principles Guide Japan’s Educational System』というページでは、日本の教育制度が英語で詳しく説明されています。そこでは、「総合大学」が university、「短期大学 (短大)」は junior college と表現されています。単科大学についての説明は見当たりませんが、日本語版ウィキペディアの『単科大学と総合大学』のページでは日本の単科大学を college と説明しています。
日本では「短大」「SNS」「コンビニ」など言葉を略すのが普通のため、総合大学について話すときもカジュアルな場面では省略形の uni を使うといいでしょう(学校名の場合は略さないほうがいいと思います)。アメリカ出身の人の中には「?」と思う人もいると思いますが、その場合は uni が university の略であり、イギリスやオーストラリアで使われていることを教えてあげましょう。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? これでアメリカとイギリスでの college と university の違いが分かりやすくなったかもしれません。
次回公開予定の #111 『専門学校』の英語は本当に vocational school? でもオンライン和英辞書などでは知ることができない日本、アメリカ、イギリスでの各表現を説明したいと思います。