オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第4回は「通学」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
◆更新履歴は「お知らせ」に載せています。
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↑スクールバスで通学する生徒。さて「通学する」は英語で何と言う?
まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「通学する」はどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の英語訳
1. attend school
2. commute (to school)
3. go to school
ベルリッツ
eigopedia
英辞郎 on the WEB(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
ネイティブイングリッシュ
大人のためのやり直し英語講座、基礎から英語で会話をするまで
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
ご覧のとおり、3つの訳語が見つかりました。この中で最も多かったのは commute to school です。ということは「通学する」にはとりあえずこの表現を使えばいいということでしょうか?
以下では、attend/go to school の意味も含め、「通学」の英語について分かりやすく説明します。
Commute To School ≠ 通学する
まず、どの辞書・サイトも載せていなかった注意点として、「通学する」という日本語と commute to school という英語には次の違いがあります。
・児童、生徒、学生が「学校に通う」ことを意味する言葉。教職員の場合は「学校に通勤する」と言う。
・小学生から大学生にまで幅広く使える言葉。例えば小学生などが学校に行く際に通る道は「通学路」。
・イギリスでは専門学校や大学は(校名に school の文字が含まれていても)school とは普通呼ばない。
・少なくともイギリスでは教職員が学校に「通勤する」ことの意味に誤解される可能性が高い。
・commute は通勤やそれと同じように通学する場合に使う言葉のため、小学生などにはまず使わない。
つまり、例えば明らかに学生に見える人が "I commute (to school/college/university) by train" と言えば電車で「通学」している意味になりますが、学生と教職員のどちらにも見える人の場合は「通勤」と誤解される可能性があるということです(college と university の違いは 第110回 を参照)。
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↑学校に電車で commute するこの人は学生それとも教職員?
「通う」の commute を「通勤する」の意味に限定している英英辞書も多いことから分かるように、この動詞は(少なくともイギリスでは)基本的に「通勤する」を意味します。そのため、例えば高校生でも定期券でそれなりの距離を移動して通学する場合や大学で毎日仕事のように研究する学生が通学する場合など、「通勤」と同じように通学する場合はこの単語を使えます(ただしイギリスでは絶対に使わないと言う人もいます)。
「通学する」や「通学中に」は英語でどう表現する?
このように commute という動詞は誤解を招く可能性があるため、「通学する」の英語には go を使って go to school/college/university と表現するのが賢明です。ただ、少なくともアメリカでは通学の手段を説明する際は、go to {場所} の後に on foot (徒歩で) や by bicycle/motorcycle/car/bus/train (自転車/オートバイ/車/バス/電車で) などのフレーズを使うのではなく、次のように表現するのが普通です。
I ride my bicycle/bike/motorbike/motorcycle to school. (自転車/バイクで通学しています。)
I drive to school. (車で通学しています。)
I take the bus/train to school. (バス/電車で通学しています。)
I take the school bus (to school). (スクールバスで通学しています。)
※「毎日」とあえて説明したい場合は最後に every day を付けます。
アメリカでは専門学校や大学を school と呼んでも違和感はなく、このように通学の手段を説明する際はわざわざ専門学校/大学以上か高校生以下かを区別しないのが普通です。一方、イギリスでは先ほど書いたとおり専門学校や大学を普通は school と呼ばないため、上の例文はすべてそれよりも若い生徒や児童の通学を意味します。なお、通勤の場合は to school ではなく(学校の教職員でも)to work と表現するのが普通です。
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↑自転車で通学する学生。"I bike to ~" やイギリスでは "I cycle to ~" と表現する人もいる。
また、「通学中に」の場合も during one's commute (to school) (この commute は「通勤/通学」を意味する名詞) のように commute を使うのではなく、次のように on one's way to school (登校中に) などの表現を使うほうがいいでしょう(「下校中に」であれば on one's way home from school)。
(彼女は登校中に行方不明になりました。)
※この場合も専門学校生や大学生であればイギリスでは college や university を使うのが普通です。
Attend School も本当に「通学する」?
最後に、今回見つかった訳語で残された attend school も本当に「通学する」なのでしょうか?
これは「学校に(規則正しく)出席する」という意味のため、「通学する」や「登校する」と同じ意味で使えない場合もあります。例えば、「通学中に/登校中に (=学校に行く途中に)」と言いたくて "while attending school" と表現すると、「出席中に (=学校にいるときに)」という別の意味になってしまいます。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? これで「通学する」と commute to school の違いなどが分かりやすくなったかもしれません。
「通学することは英語で commute to school と言います」と教えてくれる英語の先生がいたら、このページを見せて「そう単純な話ではありません」と指摘しておきましょう...