#19 『消費税』の英語は本当に consumption tax?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第19回は「消費税」の英語についてです。

◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
◆更新履歴は「お知らせ」に載せています。

kschneider2991 / Pixabay.com

↑上がり続ける消費税の階段。このブログを読んでいる今は何段目?


まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「消費税」はどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。

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「消費税」
インターネット上の主な英語訳
1. consumption tax
2. excise (duty)
3. sales tax
4. value-added tax / VAT
訳語を載せた辞書・サイト
bab.la(辞書)
ベルリッツ
DMM英会話なんてuKnow?
英語ぷらす
EIGORIAN.NET
英語初心者の駆け込み寺
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
MYスキ英語
Reverso Context(辞書)
Spin The Earth
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「消費税 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、主に4つの訳語が見つかりました。この中で圧倒的に多かったのは1の consumption tax と3の sales tax で、次いで多かったのは4の value-added tax / VAT です。

「消費税」を英語にすると consumption tax になりますが、なぜ「売上税」を意味する sales tax や「付加価値税」を意味する value-added tax (VAT) まで載っているのか疑問に思った方もいるかもしれません。

以下では、どの辞書・サイトも載せていなかったこの理由も含め、「消費税」の英語について分かりやすく説明します。

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消費税には種類がある

まず、英語版ウィキペディアの『Consumption tax』のページには『Types』というセクションがあり、そこでは4つの消費税の種類について説明されています。以下は、辞書や他のウェブサイトの情報も参考にしてその4種類の消費税を簡単にまとめたものです。

1. value-added tax / VAT
EU諸国やアジアの一部の国で徴収されている「付加価値税」。
2. sales tax
アメリカで徴収されている「売上税」。
3. excise (tax/duty)
アメリカやイギリスなどで徴収されている「物品税」。(日本でも徴収されていた時期あり)
4. expenditure tax
インドとスリランカだけで徴収されたことがある「支出税」。

このように消費税には少なくとも4種類ありますが、日本では現在そのうちの1つしか存在していません。日本語版ウィキペディアの『消費税』や『付加価値税』のページの説明によれば、日本の消費税は1番目の value-added tax (VAT) に分類されるとのことです。

この時点でもう気づかれたと思いますが、本来は「付加価値税」と呼ぶべき税金を日本では各種類の総称である「消費税」と呼んでしまっているのです。これが和英辞書などで「消費税」の英語に consumption tax だけでなく value-added tax (VAT)sales tax まで載ることになってしまった原因です。

Rawpixel / Rawpixel.com

↑「ではまず consumption taxes について説明いたします」「(えっ? どうして複数形??)」

なぜ「消費税」?

excise (tax/duty) と呼ばれる3番目の「物品税」は、日本では1989年に現在の「消費税」が導入されたときに廃止になっています。このとき、「付加価値税」などもっと適切な名称で導入すべき税を単に「『消費税』のほうが国民にとって分かりやすいから」などの理由で「消費税」と名付けてしまったのであれば、英語学習者や翻訳者にとっては不幸な出来事だったと言うしかありません。

物品税が復活することは絶対にないだとか、支出税や新しい種類の消費税が今の消費税とは別に日本で導入されることが絶対にないのであれば、「消費税」という名称は適切なのかもしれません。

いずれにしても、日本の税制に詳しくない英語圏の人に日本の消費税を説明するときは、consumption tax ではなく VAT または value-added tax と表現するほうが理解されやすいでしょう。相手がアメリカ人の場合は sales tax と説明すればすぐに分かります。

buritora / Shutterstock.com

↑「消費して払うんだから『消費税』でいいじゃねーかー」

「消費税」の例文と注意点

最後は、消費税の例文と注意点です。カッコ内の日本語訳では「消費税」という言葉を使っていますが、先ほど説明したとおりアメリカでは「売上税」、イギリスでは「付加価値税」を意味します。

What is the sales tax rate where you live?
(あなたが住んでいる所の消費税率は何パーセントですか?)

なぜ "in the US?" (アメリカで) や "in your state?" (あなたの州で) ではなく "where you live?" (あなたが住んでいる所) という聞き方にしているかというと、アメリカでは州や市で別々の税率の sales tax を課しているため、そう尋ねないとその人が買い物の際に払っている合計の消費税率が分からないからです(単にその州や市の税率を知りたい場合はもちろん "in your state?" や "in your city?" と尋ねます)。

このように税率 (tax rate) のパーセンテージ (percentage) を知りたい場合は "What is the rate of ○○ tax?""What is the percentage of ○○ tax?" と聞きたくなりますが、上の "What is the ○○ tax rate?" のほうが自然な尋ね方です。"How much is the ○○ tax?" という聞き方も同じ意味で、VAT が日本の「消費税」に該当するイギリスなどでは ○○ tax の部分を VAT に変えるだけです。

Rawpixel / Rawpixel.com

↑「ところでアメリカの消費税って何パーセントなの?」「説明するの面倒くさいな...」

(The standard rate of) VAT was raised from 17.5% to 20% on 4 January 2011.
(消費税(の標準税率)は2011年の1月4日に17.5%から20%に上がりました。)

イギリスの VAT には standard ratereduced ratezero rate の3つがありますが(reduced rate は軽減税率)、カッコの部分は省略しても普通は標準税率の話として理解されるでしょう。「上がりました」の部分には was raised の他に increased や rose (rise の過去形) も使えます。なお、年月日の順番はアメリカでは(コンマを入れて)"on January 4, 2011" になります。

Japan's sales tax has been reduced from 10% to 5%.
(日本の消費税は10%から5%に下がりました。)

仮に日本の消費税が今の10%から5%に引き下げられた場合、アメリカでそのことを説明するにはこのように表現します(イギリスでは sales tax ではなく VAT)。「下がりました」の部分には has been reduced の他に has decreasedhas fallenhas been loweredhas been cut などが使えます。

What do you think about the VAT increase?
(その消費増税についてどう思いますか?)

これは「消費増税」を名詞のまま VAT increase と表しています(アメリカでは sales tax increase)。「増税」には tax hike (口語) や tax rise (アメリカでは普通使わない) もありますが、tax raise とは言わないので注意が必要です。「減税」は tax reduction や tax decrease よりも tax cut のほうが一般的です。

アメリカやイギリスで「消費税」を consumption tax と表現すると、sales tax/VAT のことなのかそれとも別の消費税のことなのか疑問に思われる可能性が高いので注意しましょう。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか?「付加価値税」や「売上税」の英語がなぜ「消費税」を意味するのかという点が多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。

日本の「消費税」にもっと適切な名称が付けられていれば、「消費税は英語で何と言う?」のようなコラムやブログを何人もの人が書かずに済んだことでしょう...

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