#129 「契約社員」の英語は本当に contract employee や contractor?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。
第129回は「契約社員」の英語についてです。

注意 言葉は時代、状況、文脈などによって変化する場合があることを留意してお読みください。また、以下の内容はアメリカとイギリス以外の英語圏には該当しない場合があります。

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↑雇用契約 (employment contract) を結んで社員 (employee) になる人。だから「契約社員」は contract employee?


まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「契約社員」はどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをそれぞれアルファベット順に記載します。

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「契約社員」
インターネット上の主な英語訳
1. contract worker
2. contract(ed) employee
3. contractor
4. fixed-term employee
5. permatemp
訳語が見つかった辞書・サイト
bab.la(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英辞郎 on the WEB(辞書)
英会話スクールBEGIN
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
PARAFT
フィリピン在住のPinaさんのブログ

Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「契約社員 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、主に5つの訳語が見つかりました。この中で圧倒的に多かったのは contract employee で、次いで多かったのは contractor です。これらは本当に「契約社員」なのでしょうか?

以下では、以前取り上げた「派遣社員」や「パート/アルバイト」との関連性も含め、今回見つかった「契約社員」の英語表現を分かりやすい順に説明します。

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Fixed-Term Employee

まず、日本の雇用形態は正社員と非正規社員に大きく分かれ、非正規社員はさらに契約社員、嘱託社員、派遣社員、パート/アルバイトなどに分かれています。「契約社員」という言葉は契約期間が無期ではなく有期の社員に使うのが一般的とされており、その「有期(契約)社員」を意味するのが fixed-term employee です。

契約が無期の「正社員」と有期の「契約社員」しかいない会社であれば契約社員は fixed-term employee になりますが、契約が有期でも定年後という理由で「嘱託社員」と呼ばれている社員、人材派遣会社から派遣されているために「派遣社員」と呼ばれている社員、勤務時間や仕事内容が理由で「パート」や「アルバイト」と呼ばれている社員もいる場合は、これらの有期契約社員もすべて fixed-term employee になります。

なお、一時的に雇う社員/労働者を意味する英語には #93 「派遣社員」の英語は本当に temporary worker? で説明した temporary employee (臨時従業員) や temporary worker (臨時労働者) があります。

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↑「スミマセン、日本の『契約社員』どういう意味ですか?」「有期契約社員のうち嘱託社員、派遣社員、パート社員とかじゃない普通の有期契約社員の人たちのことよ。少し難しすぎるかしら?」

Contract Employee, Contract Worker, Contractor

さて、今回圧倒的に多く見つかった contract employee は直訳すると「契約社員」、contract worker は「契約労働者」になりますが、contractor という短い言葉を使うほうが普通です。

この contractor は仕事を「請け負う (=期限や報酬を決めて仕事を引き受ける)」人または会社のことで、先ほどの #93 「派遣社員」の英語は本当に temporary worker? でも説明したとおり、個人事業主として仕事を請け負う independent contractor と派遣元の会社の一員として仕事を請け負う agency contractor に分かれます(つまりこの場合の contract は「契約」ではなく「請負」の意味です)。

日本の契約社員は「請負契約」ではなく「雇用契約」を結んでいる社員であり、何らかの理由で雇い止めされるまでその契約を延長しながら正社員と同じ(または正社員でもできる)仕事を正社員と同じように行う人が多いと思いますので、contract employee/worker や contractor と表現するのは適切ではないでしょう。

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↑「どうも、コントラクターのMikeです」「あー、新しく入社された契約社員の方ですかー」

Permatemp

次は、残された permatemp についてです。この言葉は permanent (永久の) と temporary (臨時の) の混成語で、permanent employee (正社員) のような temporary employee (臨時社員) という意味で少なくともアメリカでは使われている比較的新しい言葉のようです。

英語版ウィキペディアの『Permatemp』のページによると、正社員よりも低い賃金や手当なしで正社員と同じフルタイムの仕事を何年も(契約更新しながら)行う社員と人材派遣会社などから派遣されて長期間働く社員の2タイプに分かれるようですが、日本の場合は契約社員だけでなくパート社員でも1つめのタイプに該当する人は結構いると思いますので、この permatemp も契約社員だけを指す言葉としては使えないでしょう。

結局「契約社員」は英語で何と言う?

では、結局「契約社員」は英語でどう表現すればいいのでしょうか?

そもそも日本では直接雇用の有期契約社員を明確な定義もなく「契約社員」「嘱託社員」「パート」「アルバイト」のように分けているため、「契約社員」の英語は次のように状況によって使い分けるしかないでしょう。

その会社に「正社員」と「契約社員」しかいない場合
fixed-term employee
⇒ 契約を更新しながら正社員のように長期間働いている社員と言いたい場合は permatemp
契約社員全員が permatemp に該当し、その他の従業員に permatemp に該当する人がいない場合
⇒ permatemp
嘱託社員やパート社員などではなく普通の有期契約社員のことだと言いたい場合
ordinary fixed-term employee
日本では contractor (請負人) と contract employee (契約社員) は別物という面倒な説明ができる場合
または請負社員と誤解されても構わない場合

contract employee
上のどの表現も嫌な場合
keiyaku employee または keiyaku shain

なお、「嘱託社員」は和英辞書で fixed-term employee や temporary employee と訳されていますが、すでに説明したとおりこれらは派遣社員やパート/アルバイトにも該当する表現です。嘱託社員の多くは定年後に再雇用された人たちだと思いますので、その場合は rehired retired employee と表現するのがいいでしょう。それ以外の人も含む場合は special fixed-term employee とでも表現すればいいと思います。

どちらも立場や仕事内容が基本的に同じ「パート」と「アルバイト」の英語については、#92 「パート/アルバイトをする」の英語は本当に work part-time? で詳しく説明しています。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか? これで「契約社員」の英語表現の違いが分かりやすくなったかもしれません。

「契約社員は英語で contract employee と言います」と教えてくれる英語の先生がいたら、まずは日本の「契約社員」と「請負社員」の違いを説明し、contract employee という言葉はアメリカやイギリスでは「請負社員」のほうを意味することを逆に教えてあげましょう。