#79 「クリエイター」の英語は本当に creator?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。
第79回は「クリエイター」の英語についてです。

注意 言葉は時代、状況、文脈などによって変化する場合があることを留意してお読みください。また、以下の内容はアメリカとイギリス以外の英語圏には該当しない場合があります。

sciencefreak / Pixabay.com

↑万物を創造したクリエイター (造物主)。でも今回取り上げる「クリエイター」とはこのような存在のことではない...


まず、テレビやインターネットなどのメディアに「クリエイター」という肩書きの人がときどき登場しますが、この言葉はオンライン和英辞書や英語学習サイトでどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをそれぞれアルファベット順に記載します。

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「クリエイター」
インターネット上の英語訳
1. artist
2. creator
3. designer
4. developer
5. entrepreneur
6. inventor
7. maker
8. professional
訳語が見つかった辞書・サイト
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英辞郎 on the WEB(辞書)

Glosbe(辞書)
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
Reverso Context(辞書)
weblio(辞書)
WebSaru(辞書)

※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「クリエイター 英語」「クリエーター 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

※「クリエイター」と「クリエーター」の両方の表記がありますが、以降でも「クリエイター」を使用しています。

ご覧のとおり、造物主の「神」を意味する DivineLord などを除いてもこれだけ多くの訳語が見つかりました。この中で圧倒的に多かったのはもちろん「クリエイター」をそのまま英語にした creator です。

では、日本で「クリエイター」と呼ばれている人たちは英語でもそのまま creator と表現していいのでしょうか? そもそもクリエイターとはどのような職業の人たちなのでしょうか?

以下では、今回調べた辞書・サイトが載せていなかった情報も含め、「クリエイター」の英語について分かりやすく説明します。

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「クリエイター」とは

まず、日本のウェブサイトで「クリエイター」は「芸術などさまざまな分野で作品を作っている人」「何かを創造する仕事をしていてそれで食べていけるようならジャンルにかかわらずプロのクリエイター」「思いやアイデアを形にする仕事」「なんか作る人」などいろいろな定義がされていますが、最もシンプルで的確な説明は国語辞書に載っている「創造的な仕事をしている人」だと思います。

ただ、例えば創造的な仕事をしている作詞作曲家やインテリアデザイナーが自分の名刺に「クリエイター」とは普通書かないため、少なくとも職業の肩書きとして使われている「クリエイター」という言葉は単に「創造的な仕事をしている人」を意味するものではないはずです。

YAKOBCHUK VIACHESLAV / Shutterstock.com

↑「ねえ、何年くらいシェフのお仕事をされていらっしゃるの?」「創作料理なので『クリエイター』と呼んでください...」

英語で Creator と表現すると?

さて、「クリエイター」という肩書きの人がいることを初めて知ったときは、「何を作るんですか?」と聞きたくなる強い違和感を感じたのを覚えています。彼らは英語圏でも creator と名乗るのでしょうか?

例えば、名刺の肩書きを単に "Writer" と書くと普通は作詞作曲家 (ソングライター) や脚本家ではなく作家や記者を意味しますが、"Designer" と書くとファッションデザイナー、グラフィックデザイナー、インテリアデザイナーなど何のデザイナーなのか相手には想像がつきません(外見で想像できる場合もありますが)。

lenetstan / Shutterstock.com

↑「こんにちは、WEBデザイナーやってます」(いやファッションデザイナーだってバレてますよ)

これが "Creator" になるとさらに意味が曖昧になるだけでなく、大文字で C と書いているため「おお、ついに造物主たる神が姿を現したか」と思われてしまう可能性があります(ありません)。そのため、特定の業界やコミュニティーの中では単に creator と表現して理解される場合でも、名刺などでは "Anime Creator" (アニメのクリエイター) など何のクリエイターなのか分かる明確な表現を使うほうがいいでしょう。

「クリエイター」は英語で何と言う?

さて、日本にはさまざまな分野で活躍するマルチタレント (アイドル含む) や企業でもいろいろな部署での仕事を経験して幅広い業務をこなせるマルチ社員の人たちが多くいます。もしかするとこれと同じように日本にはさまざまな分野の創造的な仕事をする人たちが多くいて、その人たちが自分の職業を何と呼んだらいいのか分からないために (「マルチクリエイター」を略して)「クリエイター」と呼んでいるのかもしれません。

一方、1つの分野を専門とする人が多い欧米では、単に「創造的な仕事をしている人」という意味ではなく肩書きとして creator と表現する場合は何か特定の分野のクリエイターを意味するはずです。そして検索エンジンで "creator job" と入力していくつかの英語圏を調べると、主に見つかるのは content creator です。

content creator とはメディア(特にデジタルメディア)上のコンテンツを作る人のことで、動画やポッドキャストを制作したり、ネット記事やブログを書いている人はプロ/アマ問わず誰でも content creator の部類に入ります(曖昧な表現のため定義も人によって多少違うと思います)。

Jira / Rawpixel.com

↑「なあ、オレのこと神様って呼ぶヤツ多いんだよ」「いやそれ content creator の略だから」

日本では contentcontents も「コンテンツ」と表現するのが普通のため、content creator も「コンテンツクリエイター」と表現するようです。これを「コンクリ」と略すとコンクリート人間と間違われそうなため、もしかすると日本で「クリエイター」と名乗っている人たちもこの「コンテンツクリエイター」を略してそう自称しているだけであり、さまざまな分野の創造的な仕事をしている人たちではないのかもしれません。

ただ、「クリエイター」の仕事について説明した日本のウェブサイトをいくつか調べたところ、インテリアコーディネーターやシェフなど「メディアのコンテンツ制作」とは関係のない職業も含まれており、「コンテンツクリエイター」の記載も見られませんでした(「コンテンツ制作」と書いているサイトは一部ありました)。

つまり、「クリエイター」という日本語は今のところ「創造的な職業(の人)」と解釈されている可能性が高いのに対し、英語の creator は文脈、使う冠詞、c が大文字と小文字のどちらかなどによって「1. 創造的な職業(の人)」「2. コンテンツクリエイター」「3. 神様」のどれかを意味するという違いがあるということです。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 以前取り上げた「インテリアコーディネーター (#42)」や「ホールスタッフ (#69)」は日本語と英語で表現が違いましたが、この「クリエイター」は場合によっては英語でも同じ意味で使えるところが逆に面倒な感じがします

専門分野で創造的なお仕事をされている方は、日本語でも英語でも自分を「クリエイター (creator)」などとは表現せず、「作詞作曲家/ソングライター (songwriter)」「インテリアデザイナー (interior designer)」「シェフ (chef)」など意味が明確な表現を使い続けてほしいと思います。

一方、さまざまな分野で創造的なお仕事をされている方は、英語圏では神様と間違われないよう必ず不定冠詞の a を使い、"I'm a creator" のように自己紹介しましょう("What do you create?" と聞かれるか content creator と誤解されるかどちらかになると思いますが...)