オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第206回は「文書」や「書類」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
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↑重要な文書/書類に判子を押す人。さて「文書」や「書類」は英語で何と言う?
まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「文書」と「書類」はそれぞれどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します(※「文書」と「書類」は意味が少し違いますが、同じ訳語が多かったため1つにまとめています)。
インターネット上の主な英語訳
1. document(s)
2. documentation
3. (official) paper(s)
4. paperwork
5. (piece of) writing
6. written document
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
Reverso Context(辞書)
初心者英会話ステーション
Weblio(辞書)
ご覧のとおり、似たような訳語が主に見つかりました(「文書」は他にもいろいろな訳語がありましたが、まともなものだけを載せました)。これらの違いは一体何でしょうか?
以下では、a paper と a piece/sheet of paper の違いも含め、「文書」や「書類」の英語について分かりやすく説明します。
「文書」と「書類」の違い
まず、「文書」も「書類」も同じ意味と考える人や、「文書」は個人的な記録で「書類」は公的な記録の意味合いが強いと説明している人がインターネット上に見られますが、個人的には次の違いがあると考えています。
すべて(または主に)文字で書き記した書類。
文書やその他の書き記したものの総称(普通は公式に使うもの)。例えば案内文、地図のコピー、文字がほとんどない申込用紙の3枚をまとめて「書類」と呼べるのに対し、「文書」と呼べるのは案内文だけ。
なお、「書類」には「類」という漢字が付いているため1枚だけではそう呼べないようにも思えますが、実際には「書類」という言葉以上に「文書」は硬い感じがするためか、1枚の文書でも例えば「この文書にサインしてください」ではなく「この書類にサインしてください」と言うほうが普通だと思います(このように「書類」という漢字は「書いたものの類 (たぐい)」と解釈しておくのがいいでしょう)。
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↑「じゃあこの紙は文書と書類のどっちですか?」「ん~、こうやって会議で使うものは『資料』って呼ぶわね」
Document(s) や Documentation とは?
では、document(s) や documentation は何を意味するのでしょうか?
可算名詞(数えられる名詞)の document は、単数形で "a document" と表現すると1枚または複数枚の紙(電子化されたものも含む)から成る「情報、証拠、手順などを(文字やその他の方法で)載せたもの1つ」を意味します。つまり、「文書」より意味が広く「書類」より意味が狭いと言えますが、日本語で「文書」と呼べるものにはこの単語を使うのが普通です(英語ではわざわざ「文字」で書かれた書類とは表現しません)。
また、パソコン(少なくともWindowsパソコン)では、紙の「文書」や「書類」と違って公式に使うものでなくても何か文章を書けるタイプのファイルは document と呼べます。
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↑「じゃあこの紙の報告書とこのメモ帳のファイルのどっちも document ってこと?」
一方、documentation は「1つ、2つ」と数えられない「不可算名詞」で、文書の意味で使う場合は文書類全体を意味します。例えば、ソフトウェアの販売ページに "Download the documentation here" と書かれていたら、そこから1つまたは複数のマニュアルやその他の関連ドキュメントをダウンロードできるという意味です。なお、この documentation という名詞には「ドキュメント化/文書化」の意味もあります。
Paper(s) や Paperwork とは?
では、paper(s) や paperwork は何を意味するのでしょうか?
paper は可算名詞として単数形で "a paper" と表現すると、1枚ではなく1つの論文(アメリカでは学生のレポートも)や新聞などを意味します。また、証明書類(紙製ではないIDカードなども含む)や家で保管する重要書類(電子化されたものも含む)などは全体を "papers" と表現できます。例えば、警察に車を止められて "Can I see your papers?" と聞かれたら、運転免許証や車両登録証などを見せてほしいという意味です。
逆に不可算名詞として使う場合は単に素材の「紙」を意味し、「紙1枚」は "a piece of paper" (大きさや形に関係ない紙1枚) や "a sheet of paper" (標準的な大きさで普通は長方形の紙1枚)、コピー用紙などの1連(1セット)は "a ream of paper"、単に未使用の紙が積み重ねられている場合は "a stack of paper" (これを "~ papers" とすると書類や新聞が積み重ねられている意味になる) と表現します。
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↑左隅の新聞1部は a (news)paper、両手に持っている各印刷物はそれぞれ a piece/sheet of paper に印刷したもの。
そのため、例えば "I need some paper" と言われたら、どんな素材や大きさの紙が必要なのか分からないものの、論文や新聞や証明書類ではなく何か書いたり包むための紙がいくらか必要だということが分かります。一方、複数形の "I need some papers" の場合はその状況によって新聞などを意味します。
最後に、paperwork は英英辞書によっては前回の #205 『事務職』『デスクワーク』『オフィスワーク』は英語で何と言う? で説明した「(電子文書も含む) 書類を扱う仕事」の意味しか載せていませんが、扱う書類自体や何かの購入・申込などに必要な書類の意味でも使えます。常に不可算名詞のため、例えば複数の書類でも "Please keep all the paperwork" (書類をすべて保管しておいてください) のように単数形で表します。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? これで document/documentation と paper(work) の違いが分かりやすくなったかもしれません。
「ドキュメント」や「ペーパーワーク」は短めで言いやすいですが、「ドキュメンテーション」は長いので「文書」と同じ意味であればかっこつけてカタカナ英語を使う必要はないでしょう...