オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第49回は「薬局」「薬店」「ドラッグストア」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
◆更新履歴は「お知らせ」に載せています。
nbandr / Pixabay.com
↑ここはドラッグを売るお店。危なそうだから近寄らないほうがいいかもしれない...
まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「薬局」「薬店」「ドラッグストア」はそれぞれどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します(※3つともほぼ同じ訳語が見つかったため1つにまとめています)。
インターネット上の主な英語訳
1. apothecary('s shop)
2. chemist('s) (shop)
3. dispensary
4. drug shop
5. drug store / drugstore
6. pharmacy
bab.la(辞書)
ベルリッツ
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英語いいね!
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
RareJob English Lab
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
Yahoo!知恵袋
YOLO
ご覧のとおり、主に6つの訳語が見つかりました。「薬」の英語として最も一般的な medicine という単語を使った表現が1つもありませんが、これらのどれを「薬局」や「薬店」に使えばいいのでしょうか?
以下では、調剤を専門または主に行う「調剤薬局」の表現も含め、「薬局」「薬店」「ドラッグストア」の英語について分かりやすく説明します。
「薬局」「薬店」「ドラッグストア」の違い
まず、日本の「薬局」「薬店」「ドラッグストア」の違いを簡単に説明すると次のようになります。
昔は病院や診療所の中にもあった医師の処方箋に従って薬剤を調合する場所で、今は施設として独立して存在。薬剤師の常駐と調剤室の設置が義務付けられており、市販薬や日用品なども売るお店もある。
調剤はできず、市販薬や日用品などだけを売るお店。「薬局」と名乗れないため「○○ドラッグ」や「クスリの○○」などの店名が多い。薬剤師の説明が必要なタイプの市販薬も売る場合は薬剤師の常駐が必要。
1. 市販薬や日用品などだけを売る従来のタイプ
(つまり「薬店」と同じまたはほぼ同じ)
2. 処方箋に従って店内の調剤室で処方薬の調合もする新しいタイプ
(つまり市販薬や日用品なども売るタイプの薬局と同類で、薬局開設許可があれば「薬局」とも名乗れる)
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↑「ドラッグストアはドラッグじゃなくてお薬を売るお店なんだよー」「ドラッグってなーにー?」
アメリカとイギリスでの表現は?
では、薬を売るお店やその中の処方箋受付窓口(カウンター)はアメリカとイギリスでそれぞれ何と呼ばれているのでしょうか? 同じ国でも地域や人によって違う可能性はありますが、基本的には次のようになります。
昔は主に薬を売る小さなお店(地域によっては今もあり)を pharmacy または口語で drug store と呼んでいたものが、薬以外の商品が増えてお店の規模が拡大し、今は薬の他に多様な商品を売るお店は店名が "○○ Pharmacy" でも drugstore (または2語のまま drug store) と呼ぶのが普通。そのお店やスーパー、デパート、病院などの中にある処方箋受付窓口は pharmacy (counter)。
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ただし大きな drugstore に行く場合でも薬を買うのが目的であれば "go to the pharmacy" と表現したり、スーパーのような大手チェーン店はもう drugstore とは呼ばない人もいる。
以前は薬や美容品を売るお店を chemist('s) (shop)、処方箋受付窓口を pharmacy (counter) と呼んでいたものが、今はお店自体も pharmacy と呼ばれるようになっている(そのお店で働く「薬剤師」も今は (dispensing/pharmaceutical) chemist ではなく pharmacist と呼ぶのが普通)。
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お店自体も pharmacy となったため、処方箋受付窓口は prescription counter (処方箋カウンター) と呼んで区別できる。スーパーや病院の中にある処方箋受付窓口は pharmacy (counter)。
アメリカでは違法薬物だけでなく医薬品も drug と呼ぶため薬を売るお店をこのように drugstore と呼ぶわけですが、医薬品を「ドラッグ」とは呼ばない私たち日本人まで真似して「ドラッグストア」と呼んでいるのは滑稽な気がします。一方、イギリスでも違法薬物と誤解されない状況では drug を医薬品に使いますが、アメリカを真似したり店名/社名に使う以外は薬を売るお店を drugstore とは表現しないので注意が必要です。
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↑「ほら、pharmacy で市販薬買ってきたから早く飲んで」「chemist's って呼ぶのやめたのか?」
日本の「薬局/薬店/ドラッグストア」は英語で何と言う?
では、日本の「薬局」「薬店」「ドラッグストア」はそれぞれ英語でどう表現すればいいのでしょうか?
調剤室があって薬を専門または主に売る「薬局」は pharmacy(ただし日本と違って調剤室がなく調剤済みの既製薬を処方箋に従って出すだけのお店も含む)またはアメリカ英語では drugstore も可、調剤を専門または主に行う「調剤薬局」は compounding pharmacy と表現するのがいいでしょう(調剤を全くまたは専門としないお店を retail pharmacy や dispensing pharmacy と表現している英語サイトもあります)。
一方、薬局と違って処方箋の受付をしておらず主に市販薬を売るお店の「薬店」と処方箋の受付をしないタイプのドラッグストアはアメリカ英語では drugstore(イギリスではこのタイプのお店はあったとしても処方箋の受付をしていないため pharmacy とは呼べない)、処方箋の受付もするタイプのドラッグストアはアメリカ英語では同じく drugstore でイギリス英語では pharmacy になります。
「薬局/薬店/ドラッグストア」のその他の訳語
最後に、今回見つかった「薬局」や「薬店」のその他の訳語について簡単にまとめておきたいと思います。
古語のため店名に使うなどの例外を除いてこの単語を使うことは普通ない。
イギリスで病院や薬局の中にある薬を用意する部屋に使われることがある単語(dispense は compound と違って薬剤を「調合する」とは限らず、調剤済みの既製薬も含め単に「用意して与える」という意味)。アメリカでは今は合法的に大麻を買える場所の意味で使われているらしい。
少なくとも今このように表現することは普通ない。
毎回冒頭に注意書きしているとおり、このブログはアメリカ英語とイギリス英語に限定しているため、その他の英語圏の国にはこれらの説明が該当しない可能性があります。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? これで「薬局」「薬店」「ドラッグストア」の違いや drugstore と pharmacy の違いが分かりやすくなったかもしれません。
過労などで体調を崩してしまった方は、早速ドラッグストアに行って店員さんに「お勧めのドラッグはありますか?」と相談してみましょう(逮捕される可能性あり)。