#40 「ドラム式洗濯機」と「縦型洗濯機」は英語で何と言う?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。
第40回は「ドラム式洗濯機」「縦型洗濯機」の英語についてです。

注意 言葉は時代、状況、文脈などによって変化する場合があることを留意してお読みください。また、以下の内容はアメリカとイギリス以外の英語圏には該当しない場合があります。

stevepb / Pixabay.com

↑これが日本で「ドラム式洗濯機」と呼ばれている洗濯機。さて英語では何と言う?


まず、「ドラム式洗濯機」と呼ばれる洗濯機はオンライン和英辞書や英語学習サイトでどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをそれぞれアルファベット順に記載します。

「ドラム式洗濯機」
インターネット上の英語訳
1. drum (type) washer
2. drum (type) washing machine
訳語が見つかった辞書・サイト
Reverso Context(辞書)
weblio(辞書)
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「ドラム式洗濯機 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、「ドラム式洗濯機」の英語訳を載せた辞書・サイトは2つしか見つからず、訳語もほぼ同じ表現を1つにまとめると2つしか見つかりませんでした。これらの直訳(またはほぼ直訳)の表現は実際に英語圏で使われているのでしょうか? また、ドラム式洗濯機と対比されることの多い「縦型洗濯機」は英語で何と呼ばれているのでしょうか?

以下では、今回訳語が見つかった辞書で見落とされていた点も含め、「ドラム式洗濯機」と「縦型洗濯機」の英語について分かりやすく説明します。

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縦型 vs ドラム式

まず、日本国内の洗濯機は洗濯方式によって「縦型」と「ドラム式」の2タイプに大別されています(どちらのタイプを買うべきかについて説明したウェブサイトがいくつもあります)。この時点で何か変なことに気づかないでしょうか? 「縦型」に対する表現が「横型」ではないのはもちろん、洗濯方式で2タイプに分けているのにどちらの表現も「どのように洗濯するのか」を説明していないのです。

「縦型」は「縦に洗う」のではなく単に洗濯槽が縦 (垂直) になっているという意味だと思いますし、「ドラム式」は「ドラム」と呼ばれる洗濯槽を使った方式の洗濯機ということは分かるものの、具体的にどう洗濯するのか全く不明な表現です。そして先ほどのように「縦型」と対比させるのであれば「横型」とすべきで、「ドラム式」と対比させるのであれば最低でも「ノンドラム式」と表現すべきではないでしょうか?

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↑「こちらが縦型洗濯機です」「ご説明いただかなくても分かりますが...(というか誰?)」

実際の洗濯方式

洗濯機のタイプについて解説した日本語のウェブサイトでは、縦型は洗濯槽の底部にある羽根のような部分だけを回転させることで渦巻き状の「水流」を作って洗濯する方式、ドラム式はドラムを回転させて洗濯物を上から下に落として「たたき洗い」する方式と説明されています。それならば「水流式」「たたき洗い式」のほうが分かりやすいのではないでしょうか?

試しにショッピングサイトの楽天市場を見てみると、「洗濯機」というカテゴリーの中で洗濯方式によって商品を絞り込めるようになっており、そこにある2つの洗濯方式のうち1つは「縦型」ではなく「水流式」になっています。ところが、もう1つの洗濯方式は「たたき洗い式」ではなくやはり「ドラム式」です。

「ドラム式洗濯機」をそのまま英語化して理解される?

試しに検索エンジンで "What is a drum type washing machine?" と入力して検索すると、ドラム式洗濯機について説明した英語のページは検索結果に表示されません。つまり、英語圏の人たちに対してこの drum type washing machine や drum type washer という表現を使っても、私たちが「ドラム式洗濯機」と呼ぶあの洗濯機のことだと理解されることはまずないでしょう。

また、drum washer と表現すると「日本には太鼓を洗う職業があるのですか?」と誤解される可能性もありますが、英英辞書などで drum washer は製紙用パルプを洗う筒形の機械とされています。

ドラム式の縦型洗濯機もある

drum という単語には「洗濯機などの機械の一部である空洞の円筒状の構造」という意味があり、この定義に従えばかつて主流だった二槽式洗濯機(洗濯槽と脱水槽が2つに分かれた縦型の洗濯機)の洗濯槽と脱水槽もそれぞれ drum と呼べそうですが、これらの槽には drum よりも tub (桶) という表現が使われてきました。

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↑洗濯機がまだなかった時代に使われていたこのような桶も tub(バスタブの「タブ」と同じ)。

一方、少なくとも2000年頃以降に日本で発売された縦型洗濯機の洗濯槽の多くはあのドラム式洗濯機のステンレスドラムを縦にしたような見た目のため、これらの洗濯機は「縦型」でもあり「ドラム式」でもあると言えるでしょう。実際、このような縦型洗濯機の洗濯槽を drum と表現している英語のウェブサイトもあります。

また、例えば東芝のAW-9SD5という縦型の洗濯機は「マジックドラム」というドラムを搭載しており、同シリーズ (S-DD Inverter Magic Drum) の英語CMでもその洗濯槽を drum と表現しています。面白いことに、この縦型でドラム式の洗濯機は価格.comで「ドラム式洗濯機」ではなく「縦型洗濯機」に分類されています。

「縦型 vs ドラム式」ではない新時代に突入?

さて、ショッピングサイトのAmazonでは「洗濯乾燥機」というカテゴリーの中で商品を絞り込めるようになっており、その中の「ドラムタイプ」という項目が何と「縦型横型斜め型」の3タイプに分かれています。これは、「縦型 vs ドラム式」という誤った概念の時代が終わりつつあることを示しているかのようです。

つまり、今ではドラム式洗濯機の中に縦型・横型・斜め型の3タイプがあるため、今までの「縦型洗濯機」については今後は「縦型」と表現できず、先ほどのように「水流式」と表現するようになるのかもしれません。

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↑これは単に横型の洗濯機を斜めにしているのであって「斜め型」の洗濯機ではない。

英語圏での洗濯機の種別名はもっと分かりやすい

さて、アメリカやイギリスでは洗濯方式よりも「どこから洗濯物を入れるのか」のほうが重要なためか、縦型洗濯機は「上から洗濯物を入れる洗濯機」という意味の top-loading washing machine (略して top-loading washer や top-loader)、前面から入れる横型のタイプは front-loading washing machine (略して front-loading washer や front-loader) と呼ばれています。どちらもとても論理的で明快な表現です。

sanitke99 / Pixabay.com

↑"front-loader" という表現はこのように車体前部にショベルや積み降ろし装置がある作業機にも使われる。

日本の「ドラム式洗濯機」は英語でどう表現する?

では、日本の「ドラム式洗濯機」は英語でどう表現すればいいのでしょうか? 先ほど説明したとおりドラム式洗濯機には縦型・横型・斜め型の3タイプがあるため、どのタイプなのかを説明する必要があります(タイプ別ではなく総称として今回見つかった直訳を使うと何が言いたいのかよく分からないと思われるでしょう)。

どれくらい普及しているのか分かりませんが、斜め型のドラム式洗濯機は日本のメーカーなどによって tilted-drum washing machine と表現されています。これは tilted-drum (斜めのドラム) というフレーズによって「斜め型」の部分を説明している正しい表現です。

同じく縦型のドラム式洗濯機は「垂直」を意味する vertical を使って vertical-drum washing machine、横型のドラム式洗濯機は「水平」を意味する horizontal を使って horizontal-drum washing machine と表現するのが最適です(washing machine の部分は washer に変えても大丈夫です)。

なお、今回「ドラム式洗濯機」の英語訳を検索した際に「ドラム式=front load(er)」と説明しているサイトがいくつかありましたが、先ほど説明したとおりドラム式洗濯機には縦型や斜め型もあるため、front loaderfront-loading washing machine は「ドラム式洗濯機」の正しい表現とは言えないでしょう。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回説明した「ドラム式洗濯機」の適切な(タイプ別の)英語訳が多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。

日本の洗濯機メーカーの方は、今後は意味が明快で整合性もとれたタイプ名にしていただけると日英翻訳者がこのように苦悩せずに済むでしょう。

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