オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第166回は「効果」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
Rawpixel / Rawpixel.com
↑マーケティング戦略の効果が出ていることを伝えたい人。さて「効果」や「効果的」は英語で何と言う?
まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「効果」はどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
1. effect
2. effectiveness
3. efficacy
4. impact
5. outcome
6. result
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
ご覧のとおり、主に6つの訳語が見つかりました。この中で最も多かったのはすべての辞書・サイトが載せていた effect です。これは本当に「効果」なのでしょうか?
以下では、effect、effectiveness、efficacy の違いや effective に使える前置詞も含め、「効果」の英語について分かりやすく説明します。
Effect ≠ 効果
まず、effect という名詞は実は「効果」という意味ではありません。「効果」は「効き目」と同じく意図した結果だけを意味しますが、effect はそれ以外の結果も含む単に「作用」や「影響」を意味します。例えば薬を飲んで吐き気がしたらそれは意図しない結果のため日本語では「副効果」ではなく「副作用」と呼びますが、英語ではこれも effect という単語を使って side effect と表現します。
つまり「効果」という日本語の意味を英語で説明する場合などは "intended effect" (意図した作用/影響) のように表現する必要がありますが、そのような場合を除いては effect だけで必然的に「効果」を意味することも多くあります。例えば動詞に achieve (達成する) を使えば effect は必然的に「効果」の意味になり、主語も薬など効果的な作用をもたらすことが目的のものであれば effect だけで普通は「効果」を意味します。
Rawpixel / Rawpixel.com
↑「あぁ...薬の副効果でよく眠れなかったよ」「効いちゃってるならいいじゃん...」
なお、同じく今回見つかった主な訳語の impact (影響) と outcome/result (結果) も、意図していない結果に使えるため「効果」を意味するとは限りません。
Effectiveness と Efficacy の違い
では、effectiveness と efficacy は何を意味するのでしょうか? 名詞の effect は今説明したとおり単に「作用」や「影響」という意味ですが、形容詞の effective になると意図した結果だけに使う「効果的」を意味します。そしてその effective を名詞化した effectiveness (有効性) を使うことで、例えば冒頭の写真の「マーケティング戦略の効果」を "effectiveness of the marketing strategy" と表現できます。
一方、efficacy は「効力 (=効果を生じさせる力)」を意味しますが、「有効性」と「効力」という日本語と同じく英語の effectiveness と efficacy も意味は大して変わらず、effectiveness のほうが一般的に使われる単語で efficacy はやや大げさな/気取った感じがするという違いがあるだけです。
Image Point Fr / Shutterstock.com
↑「ということは effectiveness を使うほうがいいんですね...」「いえ、今から説明するけどそうとは限らないの」
ただ、少なくとも薬理学などでの研究ではこの2語を明確に区別しており、例えば上の写真のような臨床試験ではその薬の効果が最大限発揮される理想の環境で行う試験(つまりその薬が持つ力そのもの (=効力) を確かめる試験)が efficacy trial、そのような理想の環境ではなく現実の環境で発揮できるレベルの効果 (=有効性) を確かめる試験が effectiveness trial と呼び分けられています。
なお、effectiveness に似ている effectivity という名詞を載せている英英辞書や英和辞書もありますが、ネイティブスピーカーでも知らない人が多いので使わないほうがいいでしょう。
「効果がある/効果的」は英語で何と言う?
最後は、効果があること/効果的なことを伝えるいくつかの例文です。
先ほど書いたとおり effect は「効果」ではなく単に「作用」や「影響」を意味するため、この文で good を入れないと動詞の affect (影響を与える) と同じく良い影響なのか悪い影響なのか分かりません(ただし主語が薬など効果をもたらすことが目的のものであれば、good を付けなくても普通は「効果」を意味します)。
It is effective in the treatment of insomnia. (同上)
It is effective for HIV prevention/HIV patients. (HIV予防/HIV患者に効果があります。)
It is effective for colds. (風邪に効果があります。)
It is effective against cancer (cells). (ガン(細胞)に対して効果があります。)
Rawpixel / Rawpixel.com
↑「effective の前置詞は使い分けが難しいわねぇ...」「今はそんなこと考えなくていいんですよ」
この effective はもちろん次のように病気以外にも使え、副詞の effectively (効果的に) も使えます。
It effectively increased the number of voters. (投票者数を効果的に増やしました。)
その他、次のように work (効く) や good (良い) という簡単な単語だけでも「効果」の意味にできます。
It's good for headaches. (頭痛に効きます。)
他にも improve (改善/向上させる) や help/contribute (一助となる) など「効果がある/効果的」の英語に使える表現はいくつかありますので、状況に応じて最適と感じるものを使うのがいいでしょう。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回調べた辞書・サイトで effect が「効果」という意味の単語ではないことを説明しているものはありませんでしたので、少なくとも辞書は説明しておく必要があるでしょう。
このブログでは今後も英語の上達に「効果的」な内容を取り上げていきますが、何らかの「副作用」が生じても責任は取れませんのでご了承ください...