オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第144回は「美容師」と「エステティシャン」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
Zentangle / Shutterstock.com
↑さまざまな美容サービスを受けられる beauty salon (美容院)。美容師とエステティシャンはどこにいる?
まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「美容師」と「エステティシャン」はそれぞれどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
1. aesthetician / esthetician
2. barber
3. beautician
4. beauty artist
5. cosmetician
6. cosmetologist
7. hair stylist / hairstylist
8. haircutter
9. hairdresser
インターネット上の主な英語訳
1. aesthetician / esthetician
2. beauty therapist
3. beauty treatment technician
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
デュープラー英語学院・オフィシャルブログ
えいいちろうの英語学習奮闘記
英辞郎 on the WEB(辞書)
英これナビ
goo(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
KAMIU
Linguee(辞書)
ネイティブキャンプ英会話ブログ
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
ご覧のとおり、「美容師」は主な訳語だけでもかなりの数になりました。一方、「エステティシャン」は少なめですが、そのまま aesthetician または esthetician と表現していいのでしょうか?
以下では、どの辞書・サイトも載せていなかったアメリカとイギリスでの表現の違いも含め、「美容師」と「エステティシャン」の英語について分かりやすく説明します。
「美容師」は英語で何と言う?
まず、hairdresser (ヘアドレッサー) と hairstylist (ヘアスタイリスト) は髪の毛のカット、カラー、パーマなどを行う髪の美容職の人を意味します。そしてネイリストやエステティシャンなど他の美容職の人にも該当する beautician (ビューティシャン/美容師) という言葉も、アメリカでは同じ意味で使う人が多くいます。
この beautician の中で髪の毛、メイク、ネイル、エステのすべての資格を持つ人を少なくともアメリカの美容業界では cosmetologist (コスメトロジスト) と呼んでおり、これも「美容師」を意味します(beautician は古い表現と考えられています)。これらすべての資格があっても髪の毛を専門または主に担当する人は多く、その場合は hairdresser/hairstylist として働く cosmetologist と考えると分かりやすいと思います。
このように beautician と cosmetologist は髪の美容職の人だけを意味する言葉ではなく、hairdresser はアメリカでは時代遅れの表現と感じる人も多いため、髪の毛を主に担当する美容師は hairstylist と呼ぶのが一番いいと言えるでしょう。イギリスでは髪の美容師は hairdresser が一般的な表現とされてきましたが、同じく今風に hairstylist と自称する人が増えているようです。
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↑「お客様、もしよろしければ明日お食事でも...」「明日はスパコーナーでエステを予約してるのよ」
「エステティシャン」は英語で何と言う?
では、同じく美容職の「エステティシャン」は英語で何と言うのでしょうか?
esthetician (アメリカで主流のスペルで「エスセティシャン」のように発音) または aesthetician (イギリスで主流のスペルで「イースセティシャン」のように発音) の (a)esthetic (エステティック) の部分は単に「美の」や「美的な」という意味ですが、アメリカで esthetician は顔 (メイク含む) と全身のスキンケア (脱毛含む) を専門に行う人を意味します(先ほどの cosmetologist よりもスキンケアの専門性はもっと上です)。
なお、全身のマッサージを行う人は massage therapist (マッサージセラピスト) ですが、esthetician の資格も取って全身マッサージとエステ(スキンケア)の両方を行う人もいるようです。そしてこのように複数の美容セラピー (美容療法) を行う人などを beauty therapist (美容セラピスト) と呼ぶことがあります。
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↑「髪の毛さっぱりしましたね」「あのヘアスタイリストに食事に誘われたわよ...」
一方、イギリスでは (a)esthetic という単語をエステ(ティック)の意味で使うことがまだ一般的ではないためか、(a)esthetician の意味が分からなかったり、発音だけ聞くと別の職業と誤解する人も多いようです。実際には aesthetician や aesthetic therapist という美容職はありますが、アメリカと同じくスキンケア専門だとしてもそのような人は稀なのか beautician や beauty therapist という表現のほうが多く見られます。
ただ、同じイギリスの美容職の人でもこの beautician と beauty therapist という言葉を「どちらも同じ意味で beautician は時代遅れの表現」「メイクやネイルの資格しかない人が beautician でマッサージや電気療法などの資格もある人が beauty therapist」「beautician は化粧品売り場の美容部員のイメージ」と考える人たちに分かれます(美容学校でどう教わったかによるようです)。
このように beautician (美容師) という言葉はアメリカや日本では髪の毛の美容サービスを主に提供する人を意味するのが普通ですが、イギリスでは本来のもっと広い意味で使われているので注意が必要です。
「美容師/エステティシャン」のその他の訳語
最後は、今回見つかった「美容師」と「エステティシャン」のその他の訳語についてです。
beauty artist: 直訳すると「美容芸術家」。少なくとも美容師やエステティシャンには普通使わない。
beauty treatment technician:「美容(技)術を使う人」。これも一般的に使われる表現ではない。
cosmetician: 化粧品を製造・販売したりメイクを施す職業の人に使われることがある。
haircutter: 髪を切る器具だけでなく「理髪師/床屋」の意味でも英英辞書などに載っている単語。器具と誤解されやすいので普通は職業名や店名としては使わない。
このようにどれも「美容師」や「エステティシャン」には使わないほうがいい言葉のため、この2つの職業には先ほどの hairdresser/hairstylist、beautician/cosmetologist、esthetician/aesthetician、beauty therapist の中から仕事内容や国に合わせて最適と感じる表現を使うのがいいでしょう。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? これで「美容師」と「エステティシャン」の英語表現の違いが分かりやすくなったかもしれません。
(a)esthetician という言葉はもともとは美学という学問を研究する「美学者」を意味するようですので、古い書物などにこの言葉が出てきたらエステティシャンと勘違いしないよう注意しましょう...
※「美容院」と「エステサロン」の英語は #13 『美容院』と『エステサロン』の英語は両方とも beauty salon? で詳しく説明しています。