#80 「おしゃれ」の英語は本当に fashionable や stylish?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。
第80回は「おしゃれ」の英語についてです。

注意 言葉は時代、状況、文脈などによって変化する場合があることを留意してお読みください。また、以下の内容はアメリカとイギリス以外の英語圏には該当しない場合があります。

LightField Studios / Shutterstock.com

↑ファッション業界で働くおしゃれな女性たち。さて「おしゃれ」は英語で何と言う?


まず、「おしゃれ」には「おしゃれをすること」の意味もありますが、今回取り上げるのは「おしゃれだ」や「おしゃれな」を意味する形容詞の「おしゃれ」です。

では、この「おしゃれ」はオンライン和英辞書や英語学習サイトでどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをそれぞれアルファベット順に記載します。

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「おしゃれ」
インターネット上の主な英語訳
1. chic
2. classy
3. cool
4. dapper

5. dressy
6. fancy
7. fashionable
8. gracious
9. jaunty
10. smart
11. snappy
12. sophisticated
13. stylish
14. trendy
15. voguish
訳語が見つかった辞書・サイト
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英辞郎 on the WEB(辞書)

英これナビ
Glosbe(辞書)

Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
MYスキ英語
NexSeed Blog
RareJob English Lab

Reverso Context(辞書)
weblio(辞書)
weblio 英会話コラム
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「おしゃれ 英語」「おしゃれな 英語」「お洒落 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、古語や俗語などを除いた主な訳語だけでもこれだけの数になりました。この中で上の辞書・サイトのほぼすべてが載せていたのが fashionablestylish です。ということは「おしゃれ」にはとりあえずこの2つのどちらかを使えばいいということでしょうか?

以下では、今回調べた辞書・サイトで説明が見られなかった注意点も含め、「おしゃれ」の英語について分かりやすく説明します。

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おしゃれ vs ファッショナブル/スタイリッシュ

まず、「おしゃれ」とは服装や化粧など身なりに気を配ることですが、人でも物でもそれが素敵に見えるときに私たちは「おしゃれだね」と表現し、必ずしも流行のスタイルやデザインである必要はありません(国語辞書の「おしゃれ」の説明にも流行についての記載はなく、あくまで「洗練されていること」「美しく装うこと」「身なりを飾ること」のように説明されています)。

一方、「ファッショナブル」「スタイリッシュ」は国語辞書で「流行の」や「当世風 (=今風)」と説明されています。ということは「おしゃれ」と「ファッショナブル/スタイリッシュ」は意味が違い、流行のスタイルやデザインかどうかに関係なく素敵に見えるものに使う言葉の「おしゃれ」を英語で fashionable や stylish と表現するのは間違いなのでしょうか?

buritora / Shutterstock.com

↑「何だかファッショナブルですね」「あら、おしゃれってことかしら?」

Fashionable vs Stylish

さて、stylish は名詞の style に -ish (~の(性質を持つ)) が付いた形容詞ですが、style には「流儀」「型」「気品」「流行」などいくつかの意味があるため、stylish も「上品な」「(上品かどうかに関係なく) 流行の」「(上品さや流行とは関係なく) その人に合ったスタイルのなど人によって解釈が異なります。

別の見方をすると、「上品な」と解釈する人たちは stylish を "have style" (品がある) と同じと考え、「流行の」と解釈する人たちは "be in style" (今のスタイルである) と同じと考えているのかもしれません。そして単に「その人に合ったスタイルの」と解釈する人たちは「流儀」という意味での style に -ish が付いたものと考えて、例えば自分の服装であれば「自分流」となるのでしょう。

一方、fashionable は「流行の/当世風」を意味します。stylish と違って「上品な」を意味しないのは、名詞の fashion には「気品」の意味がないからだと思います。そして fashionablestylish は同じだと言う人がいたら、その人は stylish を「(上品かどうかに関係なく) 流行の」と解釈していることになります。

Yulia Reznikov / Shutterstock.com

↑fashion にも「流儀」や「やり方」などの意味があるが、fashion magazine の fashion は(特に流行・人気の)服、化粧品、髪型などのスタイルのこと。

Fashionable は本当に「おしゃれ」?

さて、先ほど書いたとおり「おしゃれ」には「流行の」という意味はないため、この日本語を fashionable と表現するのは間違いのように思えます。1970年代後半ごろに流行ってその後に死語となった「ナウい」こそ正に fashionable のシンプルで自然な表現だったと思いますが(fashionable と違って主に若者だけが使う言葉でしたが)、この死語と同じ意味のシンプルで自然な日本語がどうもない気がします。

例えば、相手が着ている流行の服を見て「流行の服ですね」や「今風ですね」と言うと皮肉と思われる可能性があり、「ファッショナブルですね」という表現は少し長くて言いづらいだけでなく英語の fashionable のように「流行の」という意味で解釈されるか疑問です。結局、「流行の服で素敵ですね」という意味で褒めたくてもシンプルで自然な言葉がないために私たちはその場合でも「おしゃれですね」と表現するのかもしれません。

「スタイリッシュ」は「ファッショナブル」よりも少し言いやすいですが、国語辞書の説明のように「流行の」という意味で使われているのかこれも疑問です。「シック」は短くて言いやすいですが(これも死語?)、英語の chicstylish のように「流行の」という意味を含む場合もあるのに対し、日本語の「シック」は国語辞書を見る限り「上品な」や「あか抜けている (=洗練されている)」だけで流行とは関係ないようです。

Rawpixel / Rawpixel.com

↑「アイ アム シック...」(それは「スィック」です)

また、trendy は「流行の最先端を行く」という意味ですが、この言葉はそのような流行やそれを追う人たちを軽蔑する場合にも使われるため注意が必要です(「トレンディー」という日本語も死語かもしれません)。

stylish と fashionable の意味と違っても私たちは何かを見て素敵だと思えば「おしゃれ」と表現するため、この2語は「おしゃれ」と全く同じではないことが分かります。「おしゃれ」の英語としてあれだけ多くの単語が和英辞書や英語学習サイトに載っているのは、意味が広めの stylish でさえすべての「おしゃれ」をカバーできないのと、もっと狭い意味や別の意味での「おしゃれ」をこの2語では表せないからだと思います。

「洗練されている」という意味での「おしゃれ」は英語で何と言う?

さて、ここからは「流行」とは関係ない本来の意味での「おしゃれ」の英語についてです。まず、主な国語辞書が載せている「洗練されている」という意味での「おしゃれ」は英語で何と言うのでしょうか?

sophisticated には「洗練されている」の意味もありますが、例えば "○○ is sophisticated" と表現すると○○が機器であれば「精巧」、人であれば身なりではなくその人自身が洗練されていると解釈されるのが普通です(似た意味の refined も「お上品な人」になってしまいます)。また、例えば "sophisticated styling" と表現しても「洗練されたスタイル」ではなく「洗練された人向けのスタイル」と解釈される場合もあります。

classy は「上品で洗練された」のような意味で、elegant はその少し硬い表現ですが、これも例えば "She is elegant" と言うと話し方なども含めて「お上品/優雅」という意味になります。相手の服装を見ながら "You look elegant" と言えばおしゃれな服の意味になりますが、離れた距離にいる人の場合は例えば "She looks elegant" と表現してもおしゃれとは関係ない「身のこなし」や「姿勢」も意味に含まれるかもしれません。

smart はイギリスで「(見た目が) 洗練されている」という意味で主に使われますが、アメリカでは「聡明」や「賢い」を意味する intelligent や clever (これはアメリカとイギリスでやや意味の違いあり) と同じまたは似た意味で使われるのが普通です。イギリスでもアメリカの影響で smart を intelligent や clever の意味で使うことはありますが、アメリカで smart を「洗練されている」という意味で使う人は稀だと思います。

Chanikarn Thongsupa / Rawpixel.com

↑「ねぇ、その cleverphone ちょっと見せてくれる?」「スマホはイギリスでも smartphone だよ」

先ほどの chic は流行と関係なく単に「上品/洗練されている」の意味でも使えますが、フランス語のためその意味と発音がよく分からない人も多かったり、男性にはあまり使わない言葉だと思います。そのため、同じ意味では stylish のほうがいいですが、すでに説明したとおりこの単語も別の意味で解釈する人たちがいます。

結局、「洗練されている」という意味での「おしゃれ」はイギリスでは smart を使って迷わず "○○ look(s) smart" と表現できますが、アメリカの場合はこのセクションで説明したどの言葉を使っても相手や状況によってそれ以上の意味(または別の意味)になる可能性があるということです。今回見つかったその他の訳語を見ても、相手や状況に関係なく使えて必ず「洗練されていておしゃれ」という意味になるものはないと思います。

「装飾的/凝った感じ」という意味での「おしゃれ」は英語で何と言う?

さて、例えば開発中の商品について「このパッケージデザインを見てどう思いますか?」と質問するようなアンケートでは、回答の選択肢に「カッコいい」「スタイリッシュ」「洗練されている」「おしゃれ」などが含まれていることがあります。この場合の「おしゃれ」は一体何を意味するのでしょうか?

「流行の」という意味であれば fashionable ですが、そもそもパッケージデザインに流行などあるのか疑問です。また、classy や elegant であれば日本語は「上品/優雅」や「エレガント」になっているでしょう。

この場合の「おしゃれ」は「装飾的/凝った感じという意味の可能性が高く、これを英語では fancy と表現します(「装飾的」は decorative ですが、この言葉は日本語と同じでやや説明的です)。先ほどの「流行の○○で素敵ですね」という意味のシンプルで自然な日本語がないのと同じように、例えば「装飾的な/凝ったスイーツで素敵ですね」と言うのは少し不自然なため「おしゃれなスイーツですね」と表現するのでしょう。

PhotoMIX-Company / Pixabay.com

↑上に載っている飾り付けがなければ fancy じゃなくて elegant?

ただ、fancy はおしゃれに見せようと変に凝っていたり高価だったりすることを軽蔑する場合にも使われる言葉のため注意が必要です。また、この単語には形容詞だけでなく名詞や動詞の意味もあり、動詞では "Fancy meeting you here!" (こんなところで君に会うとは!) のように「想像してごらん」や主にイギリスで使われる「好き/欲しい」の意味があることも覚えておきましょう。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか? これで「おしゃれ」と fashionable、stylish、fancy などの関係が分かりやすくなったかもしれません。

ここまで長々と説明してきましたが、服装や品物について「おしゃれ」と言うときは結局どんな見た目でもそれが素敵だということを伝えたいわけですから、今回説明した各表現を使って誤解されるよりも無難に "You look great" や "It looks very nice" と表現するほうがいいような気がします。