オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第192回は「複数(の)」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
Roungroat / Rawpixel.com
↑ドアを開けて入ってきた複数の人たち。(いや2人だけのときに「複数」とは普通言いません...)
まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「複数(の)」はどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
1. more than one
2. multi(-)
3. multiple (numbers)
4. plural (form/number)
5. plurality
6. several
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
ご覧のとおり、主に6つの訳語が見つかりました。この中のどれが「複数(の)」と同じ意味なのでしょうか?
以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった two or more と a few の意味も含め、「複数(の)」の英語について分かりやすく説明します。
More Than One と Two Or More の違い
まず、「複数」という日本語は「2つ以上の数」を意味しますが、この「2つ以上」を明確に意味する英語のフレーズが more than one (1つより多い) と two or more (2つ以上) です。日本語には「未満」の対義語がないため1つより多ければ普通は「2つ以上」と言いますが、英語では次のようにどちらの表現も使えます。
Please select two or more products. (商品を2点以上お選びください。)
この more than one と two or more はどちらも数は「2つ以上」で同じですが(1個半などが存在しない場合)、文法上は次の1文目と2文目の違いがあります(参考に3文目も載せておきます)。
Two or more students are coming. (生徒が2人以上来る予定です。)
More than one of the students are coming. (その生徒たちのうち1人より多くが来る予定です。)
なお、「複数回」の場合は同じく「2回以上」と言いたければ more than once (1回より多い) または twice or more (2回以上) と表現しますが、once や twice は形容詞として使えないため例えば「複数回の失敗」は more than once failure ではなく more than one failure (1つより多い失敗) や fail more than once (1回より多く失敗する) と表現します(※どちらもあえて英語に合わせた不自然な日本語にしています)。
McKinsey / Rawpixel.com
↑「5回より多くフラれたんです...」「日本語では『6回以上』って言うのよ」
Plural とは?
この plural は文法の「複数(形)(の)」を意味する名詞/形容詞で、逆の「単数(形)(の)」は singular です。例えば「emoji の複数形は何ですか?」と聞きたい場合は、"What is the plural (form) of 'emoji'?" と表現します(form を付ける場合は plural は形容詞、付けない場合は名詞です)。
文法以外の話でこの単語が使われる例には plural society (複合社会) があり、-ity が付く plurality (複数であること) は #73 『過半数』の英語は本当に majority? で説明した「相対多数」なども意味します。
Multiple と Several の違い
最後は、multiple と several についてです(ここでは形容詞の意味に限定して説明します)。
正確には「2つ以上の」を意味するものの、2つ(や3つ)だけの状況では日本語の「複数の」と同じくこの単語は普通使わない。逆に「多数の」や「多様な」というニュアンスで使われることが多い。
多くも少なくもないと感じる数(感じ方は状況や人によって違う)。主な英英辞書で「3~多くない数」と説明されているものの、2~と考える人や少なくともアメリカには「多い」の意味で使う地域も一部ある。
Rawpixel / Rawpixel.com
↑「残念ですがこの企画には複数の問題点があります」「スミマセン、その『複数』はどれくらいの数ですか?」
例えば上の写真の「複数の問題点」の場合、その問題点の数が「多くも少なくもない」と本人が感じているのであれば several を使うのが最適で(「少し」と感じているのであれば a few、逆に「多い」と感じているのであれば many)、多めのニュアンスを出したければ multiple を使うのが最適と言えますが、数のニュアンスとは関係なく単に「このフレーズには multiple を使うのが普通」のような場合もあると思います。
いずれにしても、multiple は「2つ以上」と「多数」のどちらも明確に意味する言葉ではないため、「複数」という日本語が例えば「商品を複数ご購入された方は」のように「2つ以上」という意味で使われている場合は先ほどの more than one や two or more、少ない数のイメージで使われている場合は a few、少なくも多くもない数のイメージで使われている場合は several を使うのがいいでしょう。
なお、multi(-) (マルチ) も例えば multi-purpose (多目的の) や multifunctional (多機能の) など日本語では「多~」と表現されることが多いですが、実際は several と同程度と解釈するのが適切です。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? これで「複数(の)」は英語でどう表現すればいいか分かりやすくなったかもしれません。
このブログでは他にも違いが分かりにくい英語を複数(...ではなく多数)取り上げていますので、新着順などにアクセスして興味のあるページに目を通してみましょう。
※今回簡単に説明した a few と several の違いは #146 数人, 数回, 数日などの『数~』は (a) few, several, some のどれ? で詳しく説明しています。