#93 「派遣社員」の英語は本当に temporary worker?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。
第93回は「派遣社員」の英語についてです。

注意 言葉は時代、状況、文脈などによって変化する場合があることを留意してお読みください。また、以下の内容はアメリカとイギリス以外の英語圏には該当しない場合があります。

※投稿日後に情報を更新した箇所とその理由は「お知らせ」に載せています。

takayuki / Shutterstock.com

↑勤務初日で明るい表情を見せる派遣社員の女性。さて「派遣社員」は英語で何と言う?


まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「派遣社員」はどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをそれぞれアルファベット順に記載します。

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「派遣社員」
インターネット上の主な英語訳
1. agency temp
2. contractor
3. dispatch worker
4. dispatched employee
5. temp / temporary
6. temporary employee/staff/worker
訳語が見つかった辞書・サイト
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英辞郎 on the WEB(辞書)
英会話スクールBEGIN
外資系企業で働ける英語力を身につけよう!
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Imagict(辞書)
Linguee(辞書)
PARAFT
フィリピン在住のPinaさんのブログ

Reverso Context(辞書)
weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「派遣社員 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、temp(orary) や dispatch という単語を使った表現が主に見つかりました。この中で圧倒的に多かったのは temporary worker です。これは本当に「派遣社員」なのでしょうか?

以下では、今回調べた辞書・サイトが載せていなかった表現も含め、「派遣社員」の英語について分かりやすく説明します。

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Temporary Worker, Dispatch Worker

まず、temporary worker と dispatch worker はどちらも「派遣社員」ではありません。なぜなら、基本的なことですが worker は「働く人/労働者」であって「社員」ではないからです(重要な点ではありませんが)。また、dispatch worker は dispatcher という職業と間違われる可能性のある表現です。

「社員」に該当する単語は employee (従業員) または staff (スタッフ) のため、今回見つかった主な訳語の中では dispatched employeetemporary employee/staff のほうが表現として正しいように思えます。では、これらは本当に「派遣社員」と呼ばれている人たちを意味するのでしょうか?

Dispatched Employee

dispatched employee は「派遣された社員」という意味で、英語版ウィキペディアの『Dispatched labor』のページでもこの dispatched employeedispatched worker という表現が使われています。ただ、アメリカやイギリスで一般の人が派遣社員や派遣労働者をそう呼ぶということではありません。

また、動詞の dispatch は kill の婉曲語でもあるため、dispatched employeedispatched worker は「殺害された社員/労働者」という意味にもなり得ます。そのため、この dispatch (派遣(する)) という単語を使って「派遣社員」と言いたい場合は dispatch employee と表現するほうがいいでしょう。

Elnur / Shutterstock.com

↑dispatch された社員。

Temporary Employee, Temporary Staff

temporary は「臨時の/一時的な」という意味のため、temporary employee と temporary staff はそれぞれ「臨時従業員」と「臨時スタッフ」を意味します。つまり、これらは派遣社員だけでなく直接雇用の臨時社員(例えば日本では短期アルバイトなど)にも該当する表現です。

省略形の temp を使うと派遣社員/派遣労働者と解釈する人の割合がかなり高くなる印象がありますが、それでも確実ではないため「派遣」ということを明確にしたい場合は派遣会社 (temp agency、staffing agency など) から派遣された臨時労働者を意味する1番目の agency temp という表現を使うのがいいでしょう。

ただ、temporary employee や temp/temporary は退職した正社員の後任が見つかるまでの短い期間や繁忙期に一時的に低賃金で働く人をイメージさせることが多いため、正社員にはないスキルを必要とされて数か月またはそれ以上働くタイプの派遣社員には合わない表現だと説明している英語のウェブサイトもあります。

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↑temp はこのように人材関連のキーワードを集めたワードクラウドでも見られるほど一般的な表現。

Contractor

今回見つかった主な訳語の中で残された contractor (または contract worker/employee) は仕事を「請け負う (=期限や報酬を決めて仕事を引き受ける)」人または会社のことで、会社ではなく人の場合は個人で請け負う independent contractor と派遣元の会社の一員として請け負う agency contractor に分かれます。

どちらの場合も勤務先の指示に従うのではなく自分(たち)のやり方で仕事をするのが普通で、個人で仕事を請け負う independent contractor となるのは個人事業主の人たちです。日本の派遣社員の場合は通常の派遣契約ではなく「請負契約」で働く場合がこの agency contractor に該当すると思いますが、請負契約で派遣された社員を「派遣社員」と「請負社員」のどちらで呼ぶかは派遣先の会社や状況によって違うと思います。

Agency Worker?

最後は、今回調べた辞書・サイトが載せていなかった agency worker についてです。これは先ほどの temp の人たちも含めて人材派遣会社から派遣される人たちを意味する言葉で、主にイギリスで使われています。

つまり、専門性が高く雇用期間が長いタイプの人も含めた派遣社員全般は agency worker、特別なスキルを必要としない短期の仕事をしている派遣社員だけを意味したいのであれば (agency) temp と表現するのがいいでしょう。worker は「社員」ではなく「働く人」のため、日雇い派遣など「社員」とは呼べない派遣労働者にも使えます(agency employee と表現すると派遣会社で働いている人と誤解されるかもしれません)。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 最後に紹介した agency worker が「派遣社員」の英語として多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。

派遣社員として働かれている方は、先ほどの写真の男性のように dispatch されてダジャレになってしまわないよう周囲に不審者がいないことを確認しながらお仕事しましょう...