オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第196回は「箱」やその他の入れ物の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
Rawpixel / Rawpixel.com
↑「え?『箱』は英語で何かって? そりゃもちろん packet でしょ」(いや普通はそう答えません...)
まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「箱」はどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
1. box
2. case
3. pack
4. package
5. packet
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
ご覧のとおり、主に5つの訳語が見つかりました。これらは本当にすべて「箱」を意味するのでしょうか? また、箱だけでなく袋や包みにも使えるのはどれでしょうか?
以下では、スペルも意味も似ている pack と package と packet の違いも含め、箱などの入れ物に使われるこの5つの名詞について分かりやすく説明します。
Box
まず、日本語で「その箱」のように単独で「箱」と呼べるものは、少なくともアメリカでは box と呼ぶのが普通です(ただしアイスクリームの箱は carton や tub と呼んだり、他にも後で説明する例外があります)。
日本語の「箱」や「ボックス」にも言えることですが、どのような形・素材のものまでを box と呼ぶかは人によって違います(完全に球形のプラスチック容器でもそう呼ぶ人はいます)。
この単語は cardboard box (段ボール箱)、tissue box (ティッシュの箱)、shoebox (靴売り場などにあるボール紙の靴箱)、gift box (ギフト用の箱)、matchbox (マッチ箱) など日本語で「箱」と呼ぶ入れ物の他、記入用紙などの check box (チェックボックス ※イギリスでは tick box も可) や昔は多かった (tele)phone box (公衆電話ボックス ※アメリカでは ~ booth) など四角い箱をイメージさせるものにも使われます。
Jubjang / Rawpixel.com
↑box と聞くと四角い形をイメージしてしまうのは、単に四角い箱が多いから。
Case
この case は「箱」を意味する単語ではなく、箱と呼べるものも含め何か特定のものを入れておく専用の入れ物を意味します(カタカナの「ケース」と同じ意味と説明したほうが分かりやすいかもしれません)。
例えば筆記用具入れは「箱」と呼べるタイプ(筆箱)とそうでないタイプ(ポーチタイプなど)がありますが、どちらも総称で pencil case と表現できます(日本語では「ペンケース」)。
同じく日本語でも「ケース」と呼ぶ suitcase (スーツケース) や eyeglass case (メガネケース)、そして "a case of beer/wine" (ビール/ワインの1ケース) など箱売りする商品のケースの他、pillowcase (枕カバー) や bookcase (本棚) など日本語では「ケース」と呼ばないものにもこの単語は使われます。
入れ物や製品以外では、これも「ケース・バイ・ケース」や「レアなケース」など日本語でも「ケース」と表現することがある「場合」や「事例」の意味があります。
Rawpixel / Rawpixel.com
↑このスーツケースや奥に写っている枕のカバーも case。パスポートケースの場合はタイプや人によって holder、cover、wallet、pouch、case など使う単語が違うことがある(タイプ別に表現したくない場合は holder がお勧め)。
Pack, Package, Packet
最後は、似ている pack と package と packet の違いについてです(説明しやすい順に説明します)。
アメリカでは package は何かを包装したり箱や袋に入れて封をしたもので、主に郵便の荷物や商品パッケージに使われます。ただし商品パッケージの場合は例えば "a box of cookies" (クッキー入りの箱) や "a bag of chips" (ポテトチップス入りの袋) のように箱であれば box、袋であれば bag と呼ぶのが普通です。
そしてもっと小さくて封がされた商品の中には pack と呼ぶものがあり(タバコなど)、同じ/同類の商品を複数まとめたもので先ほどの case に該当しないもの(飲料の6本パックや靴下の3足セットなど)にもこの単語は使われます。また、backpack (バックパック/リュックサック) を略して pack と呼ぶ人もいます。
Rawpixel / Rawpixel.com
↑郵便の荷物はアメリカでは package と呼ぶのが普通(郵便用語では parcel も使われる)。
一方、イギリスでは郵便の荷物は少なくとも一般的なタイプは parcel と呼ぶのが普通で(package も同じ意味で使われることはある)、商品パッケージの箱や袋は packet と呼ぶのが普通です(そう呼ぶには大きすぎると感じる箱/袋の場合は box/bag)。例えばタバコ/シリアル1箱は "a packet of cigarettes/cereal"、ビスケット1包み(30枚程度を紙包装したもの)も "a packet of biscuits" と表現します。
なお、イギリスでも商品に pack が使われることはありますが、アメリカであれば pack とは呼ばないようなものでもそう呼ぶ人がいるなど、正直なところ何を基準にこの単語を使っているのか不明です。
Rawpixel / Rawpixel.com
↑タバコ1箱はイギリスでは "a packet of cigarettes" と呼ぶのが普通(アメリカのように "a pack ~" と呼ぶ人もいる)。
その他、アメリカでは書類が詰まったフォルダー/バインダー/封筒やシャンプー、サプリメント、ケチャップ、砂糖などの1回分が入った小さな袋(ただし砂糖は日本のようなスティックタイプは稀なため平たい長方形のもの)を packet と呼びます(つまりこれらの中には package、pack、packet のどれにも該当するものがあります)。一方、イギリスではこれらの1回分が入った小さな袋は sachet と呼ぶのが普通です。
そしてチョコバーなど1食分の固形物が1つ入った小さな袋は wrapper と呼ぶのが相応しいなど、いつもどおり英語はバリエーションが多く本当に面倒な言語だと言えるでしょう。