#202 『胃もたれ』の英語は本当に heavy stomach?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第202回は「胃もたれ」の英語についてです。

◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。

Rawpixel / Rawpixel.com

↑「そういえばマナブが heavy stomach で来られないって言ってたけど、日本ではそう表現するのかな」「さあね」


まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「胃もたれ」はどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。

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「胃もたれ」
インターネット上の英語訳
1. being uneasily digested
2. dull feeling in the stomach
3. heavy stomach
4. indigestion
5. lying heavy on the stomach
6. stodginess
7. stomach heaviness
8. stomach upset / upset stomach
訳語を載せた辞書・サイト
48english.com
英語教室ClarityEnglishClubのブログ
英辞郎 on the WEB(辞書)

Go Canada
goo(辞書)
Linguee(辞書)

Nexus English
Weblio(辞書)
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「胃もたれ 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、いろいろな訳語が見つかりました。このうち heavy stomach は『Nexus English』を除く3つの英語学習サイトが載せていましたが、本当に英語では胃もたれをそう表現するのでしょうか?

以下では、indigestionupset stomach などその他の訳語の意味も含め、「胃もたれ」の英語について分かりやすく説明します。

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Heavy Stomach?

まず、胃がもたれている場合に英語では "I have a heavy stomach" と表現すると説明している日本の英語学習サイトがインターネット上にいくつか見られますが、heavy (重い) を使ったこの heavy stomach や意味がほぼ同じ stomach heaviness という表現は少なくともアメリカとイギリスでは普通使われません(※ stomach は正確には「胃」ですが、abdomen/belly (腹部/おなか) と同じ意味でも使われます)。

もちろん食後に苦しそうな顔をしてこれらの表現を使えば「食べ過ぎたからおなかが重たいと言いたいのだろう」と推測されると思いますが、英語では食べ過ぎておなかが張ったり苦しければ "I feel bloated" (膨張感を感じる) や単に "I ate too much" (食べ過ぎた) と表現するのが普通です。ただ、食べ過ぎではなく普通の量でも脂っこさや胃の老化が原因で上手く消化できなかった場合はこれらの表現は適切とは言えません。

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↑少し食べただけでも胃もたれしそうな感じ?

このように食べた量に関係なく感じる嫌な満腹感は uncomfortable fullness (in the stomach) (心地悪い満腹感) と表現できますが、診察時に症状を説明する場合などではなく食事中や食後に「胃がもたれた」と言いたい場合に例えば "I feel uncomfortable fullness" と表現するのは説明的すぎて不自然です。

なお、相手が stomach を「胃」ではなく「腹部/おなか」と誤解した場合は、upper abdomen/belly (上腹部) と同じく upper (上部) を付けるといいでしょう(※ abdomen は日本語の「腹部」と同じく医学や運動の話で使う硬い感じの言葉で、belly は日本語の「おなか」と同じく口語的で引き締まっていないおなかのニュアンスがあるため、どちらの言葉も適切に感じない場合は stomach が同じ意味で使われます)。

Rawpixel / Rawpixel.com

↑「先生、昨夜は abdominal pain がつらくて...」「ええと、患者さんなら普通は stomachache と言いますが...」

Indigestion

さて、胃の膨張感、むかつき/吐き気、げっぷなど胃もたれと共通する症状を挙げているいくつかの英語のウェブページでは、これらを indigestion (消化不良) の症状と説明しています(発音が「インダイジェスチョン」ではなく「インジェスチョン」に近いところが要注意(発音記号は di でも音は弱い「ダ」に近い))。

「消化不良」と「胃もたれ」は同じ意味ではありませんが、英語では食べ物ではなく胃自体が「もたれる」とは表現しないため、残念ながら「胃もたれ」と同じ意味のシンプルな英語表現はありません。そのため、消化不良が原因で上腹部が不快な状態になっていることを意味するこの indigestion という一般的な言葉を使うと分かりやすく、例えば「よく消化不良を起こす」と言いたければ "I often get indigestion" と表現します。

Upset Stomach / Stomach Upset

upset を形容詞として使った upset stomach は「乱れた胃」、名詞として使った stomach upset は「胃の乱れ」という意味で(もっと具体的な症状の「胃荒れ」とは違う)、これらは消化不良による胃もたれや腹痛のときに「おなかの調子が悪い」という曖昧な意味で使われます(語順は upset stomach のほうが普通)。

"I have an upset stomach" と表現できる他、嫌なことで心が乱されているときに "I'm upset" と言うのと同じく upset を動詞(受動態は be upset)として使って "My stomach is upset" とも表現できます。

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↑upset stomach で苦しんでいるのではなく単に upset してベッドにもたれている少年。

「胃もたれ」のその他の訳語

最後は、今回見つかった「胃もたれ」のその他の訳語についてです。

長めの lying heavy on the stomach は、人や胃ではなく食べ物を主語にして「胃もたれを起こしている」と言いたい場合に使えます。この lying は「横たわる」や「のしかかる」を意味する動詞の lie の進行形で、sit (座る) も同じ意味で使えるため例えばピザを食べて胃もたれしている人は "The pizza is lying/sitting heavy on the stomach" と表現できます(アメリカでは前置詞に in を使うほうが普通だと思います)。

一方、stodginess は胃もたれしそうな食べ物の「重たそうな感じ」、dull feeling in the stomach は胃もたれ以外にも該当する「胃/腹の違和感」、being uneasily digested は副詞の uneasilyeasily (楽に) の逆の意味で使えると誤解してしまった誤訳だと思います。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか? これで「胃もたれ」の英語として見つかった各表現が何を意味するのか分かりやすくなったかもしれません。

個人的に胃もたれに悩まされたことはありませんが、ブログの運営上いろいろな問題に悩まされて体が机にもたれていることはよくあります...

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