オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第95回は「評価」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
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↑"Evaluation" と題された評価シートの中の "how would you rate...?" という質問。evaluate と rate の違いは一体何?
まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「評価が高い」と「評価が低い」というフレーズはそれぞれどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
1. have a high rating
2. highly appreciated
3. highly evaluated
4. highly rated
5. highly valued
インターネット上の主な英語訳
1. have a low rating
DMM英会話なんてuKnow?
英辞郎 on the WEB(辞書)
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
ご覧のとおり、high(ly) と low を使ったいくつかの訳語が主に見つかりました。「評価が良い/悪い」の英語も検索してみましたが、訳語を載せている辞書・サイトは見当たりませんでした。
以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった注意点も含め、「評価」の英語について分かりやすく説明します。
Evaluate と Rate の違い
まず、「評価する」の英語としてよく使われるのは evaluate と rate ですが、この2つの動詞には「綿密な評価作業をする」と「評価を下す」という大きな違いがあります。
例えば、冒頭の顧客満足度アンケートの写真では製品の quality (品質)、value (価値)、usability (使いやすさ) などを評価するために "Excellent" (非常に良い)、"Good" (良い)、"Average" (普通)、"Poor" (悪い) という4つの選択肢が用意されています。このように何かについて良い/悪いなどの評価を下すことが rate のため、写真の中の質問は "how would you rate...?" (どう評価しますか?) となっているのです。
では、なぜあのシートのタイトルは "Evaluation" なのでしょうか? それは、品質、価値、使いやすさや写真には写っていないさまざまな点について rate するという細かな作業が evaluation だからです。つまり、各点の評価を下すこと (rating) によって綿密な評価作業 (evaluation) をしてくださいということなのです。
そのような綿密な評価作業の evaluation をした後、もし「この製品は最高です」と言えばそれも評価を下す行為のため rate です。evaluate と rate は必ずしもセットではなく、例えば商品の評価を下す際にレビューを一切書かずに「何となくいい感じだから」という理由で星を4つ付けることも rate です。
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↑この場合も評価を下すという行為のため rate という動詞が使われている。
Evaluate を評価の高低に使わないほうがいい
さて、今回見つかった「評価が高い」の英語には highly evaluated という表現が含まれていますが、今説明した evaluate と rate の違いを理解すればこの表現が本当は正しくないことが分かります。evaluate という動詞は analyze (分析する) に意味が似ていますが、同じように highly analyzed と表現すると「分析が高い」や「とても分析された」のようになって意味が成立しないのが分かるでしょうか?
highly evaluated は主な英和辞書の例文でも「評価が高い」として使われていますが、ネイティブスピーカー何人かに聞けば evaluate よりも rate や後で説明する value のほうが適切なことが分かると思います。また、好意的な評価を good evaluation と表現するのも避けたほうがいいでしょう。なぜなら、これは「適切な評価」というのが本来の意味で、例えば最悪の製品を酷評することも good evaluation だからです。
その他、評価結果が "evaluations" のように可算名詞 (数えられる名詞) として表されることもありますが、evaluation はあくまで「評価すること」を意味する不可算名詞 (数えられない名詞) だと言う人もいます。
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↑この写真では「設計→開発→分析→評価」という流れになっており(先に評価してからその結果を分析するほうがいいと思うが...)、この「評価」は綿密な評価作業を意味するため rate ではなく evaluate になっている。
Rate を使って評価の高低を表現する
さて、ここからは「評価が高い/低い」や「評価が良い/悪い」の英語についてですが、最初に断っておくとネイティブスピーカーでも以下で説明する表現について「たぶんそうだと思う」と確信がなかったり、「自分だったらそう表現しない」のように意見が分かれることがあります。
では、まず rate を使った「評価が高い」です。X の部分は商品、ブランド、人などになります。
X is rated highly.(評価する側の人たちが主語の場合は "They rate X highly.")
X is rated high.(評価する側の人たちが主語の場合は "They rate X high.")
X rates high(ly).
X has a high rating.
このようにいくつかのバリエーションがありますが、それぞれどのような違いがあるのでしょうか?
X is rated highly.
これは今回見つかった主な訳語に含まれている highly rated の語順を逆にしたものですが、この語順で覚えたほうがいい理由が2つあります。
1つめは、rate がそれ自体では appreciate (真価を認める) や value (価値あるものと考える) と違って良い意味を持っていないことです(イギリス英語の場合は口語で「良いと思う」という意味がありますが)。
つまり、highly appreciated/valued は highly が appreciated/valued を修飾して「真価がとても認められている/とても価値あるものと考えられている」という意味になるのに対し、highly rated はそうではないため誤りだと言う人もいます(ただし「高く評価されたX」の場合は "highly(-)rated X" になります)。
2つめの理由は、「XはYより評価が高い」のように他のものと比べる場合は "X is more highly rated than Y" ではなく "X is rated higher than Y" と表現するほうが自然だからです。
なお、逆の「Xは評価が低い」は "X is rated lowly" と言いたくなりますが、残念ながら lowly という副詞はこのような場合の「低い」に使えません。では逆は何かと言うと poorly ですが、これは「良い」の反対と考えるほうが正しく、しかも「ダメ」のようなニュアンスのため適切に感じられない場合もあると思います。
X is rated high.
これは例えば品質が「高」か「低」か(つまり high quality か low quality か)を "The quality is rated high" (その品質は「高」と評価されている) のように表現するのが本当は正しいのだと思います。high/low という形容詞で表せないもの(例えば製品自体)でも評価スケール (物差し) 上で高い位置にあるという意味で(または high/low を副詞として)この表現は使えるかもしれませんが、誤りとされる可能性もあります。
冒頭の写真の評価シートでは "Excellent" (非常に良い)、"Good" (良い)、"Average" (普通)、"Poor" (悪い) という選択肢でしたが、この場合も同じく "X is rated good" (Xは「良い」と評価されている) と表現できます。good は high と違って品質などだけでなく製品自体にも使えるため(つまり "a good product" と言えるため)、この場合は X を「製品」にして "The product is rated good" と表現できます。
X rates high(ly).
これは rate を他動詞ではなく自動詞として使っていますが、X がランク的にどの位置にあるかを表している感じです。必ずしも目に見えるランキングである必要はなく、例えば自分の中のランキングで高い位置にあればこのように表現することで「評価が高い」となるのでしょう。その意味では highly より high のほうが正しい感じがしますが、いずれにしても high を使えば逆の「低い」に poorly ではなく low が使えます。
X has a high rating.
これは rate を名詞化した rating を使った表現です。「評価を下すこと」という行為も rating ですが、ここでの rating は数えることができる「評点」のため a が付いて "a high rating" となっています。この可算名詞の rating は必ずしも点数である必要はなく、良し悪しなどの意見(評価コメント)にも使えます。
例えば購入した商品に星を最大5つ与えられる評価の場合、各ユーザーの星の数の平均が仮に4という高い結果であれば、それを "X has a high rating (of 4 out of 5 stars)" と表現できます。一方、例えば「良い/普通/悪い」という3択で「良い」と回答した人の割合が60%と高い場合、良いという評価自体は rating ですが60%という数値は後で説明する score を使って表現するほうがいいでしょう。
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↑「評価を下すこと」という行為も rating だが、その結果与えられた星の数も rating なのだ。
「評価が良い/悪い」は?
今のセクションでは rate と rating を使って「評価が高い/低い」を表しましたが、「評価が良い/悪い」の場合は "X is rated good/poor" や "X has a good/poor rating" と表現できます。ただ、「評価が高い/低い」と「評価が良い/悪い」という日本語が結局は同じことを意味するのに対し、英語の good は「悪くない (=普通)」という意味にもなり得るため「評価が良い」には high(ly) を使うほうがいいでしょう。
また、「好意的に」を意味する favo(u)rably という副詞を使って "X is rated favo(u)rably" (X は好意的に評価されている) と表現してもいいかもしれません(u を入れるのは主にイギリスのスペルです)。この場合は先ほどの highly の逆を lowly とできないことや poorly と表現すると違和感があるのと違い、評価が良くないことを "X is rated unfavo(u)rably" と表現できます。
Score を使って評価の高低を表現する
では、次は今回調べた辞書・サイトが載せていなかった score を使って評価の高低を表現する方法です。
score (得点、成績) は日本語でも「スコア」と表現されることがありますが、先ほどの「60%の人が『良い』と回答したので高評価」のような場合は「○○%」という数値を「評価スコア」と考えることができます。
X scores high(ly).
X has a high score.
1つめの文の score は名詞ではなく「得点する」という意味の動詞です。high と highly のどちらを使うかはネイティブスピーカーでも意見が分かれますが、highly の場合は先ほどの rate のときと同じく逆の「低い」を lowly と表現できず、poorly と表現するのも少し変な感じがします。そのため、高低を対比させるのであれば scores high/low または has a high/low score と表現するのがいいでしょう。
「XはYよりも評価が高い」の場合は "X scores higher than Y" になりますが、score には rate と違って outscore (~より得点が上回る) という便利な動詞があるため、シンプルに "X outscores Y" と表現することもできます(逆は "X is outscored by Y")。
なお、先ほどの rate のセクションも含めここまですべて現在形を使ってきましたが、過去の評価結果として表現したい場合は例えば「高い評価を得た」であれば "X received a high rating/score" になります。
NingZk V. / Rawpixel.com
↑このグラフの場合は75%の支持を得た1つめの製品が50%と25%の支持しか得られなかった2つめと3つめの製品を outscore していると表現できる。
その他の動詞を使って評価の高低を表現する
さて、rate は評価シートや自分の中にある「最高~最低」という評価スケール (物差し) において適当と思うレベルを言葉や星の数で表すときに使い、score はスコア化された評価値の高低を説明するときに使う単語でしたが、他にも物や人の評価を表すのに使える英語表現はいろいろあります。
例えば、「~だと考える」という意味の think や regard を使って "I think highly of X" や "I regard X highly" と表現すると「尊敬/尊重している」のような意味で「高く評価している」になり、highly praise は「とても称賛している」、先ほどの appreciate/value と highly の組み合わせはそれぞれ「真価をとても認めている」と「とても価値あるものと考えている」という意味で同じく「高く評価している」になります。
また、レビューすることも「評価」であり、"X received a good review" と表現すれば X が良い評価を得たことを意味するのが普通です。"Please review and rate it" (レビューを書いて評点を付けてください) という表現がありますが、レビュー内容も評点も日本語では「評価」という言葉で表せます。
このように英語では内容によって「評価」の表現が変わるのに対し、日本語ではすべて「評価」で済んでしまいます。和文英訳をすればするほど日本語(ただし漢字と敬語は除く)がいかにシンプルで習得しやすい言語か分かるようになるのですが、今回の「評価する」や「評価が高い/低い」はそのいい例だと言えるでしょう。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回説明した「評価する」や「評価が高い/低い」の英語表現の違いが多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。
説明がかなり長くなりましたが、難しい内容を分かりやすくまとめることができたと思いますので、このページを高く評価していただきたいと思います(評価ボタンがありませんが...)。