オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第42回は「インテリアコーディネーター」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
Douglas Sheppard / Unsplash.com
↑このような美しいインテリアをコーディネートする職業の人を英語では何と言う?
まず、インテリアをコーディネートする職業の「インテリアコーディネーター」はオンライン和英辞書や英語学習サイトでどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の英語訳
interior coordinator
bab.la(辞書)
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
Linguee(辞書)
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
ご覧のとおり、訳語が見つかった辞書のすべてが「インテリアコーディネーター」を interior coordinator と表現しています。英語圏でも本当にこの職業をそう呼ぶのでしょうか?
以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった表現も含め、「インテリアコーディネーター」の英語について分かりやすく説明します。
インテリアは「コーディネート」できる?
まず、coordinate には服装・インテリアなどの色や素材など2つ以上のものを「調和させる」という意味がありますが、室内全体を意味する interior を coordinate するという表現は違和感があり、例えば室内のいろいろな色を調和させるという意味で coordinate (the) interior colo(u)rs のように表現するのが普通です。
つまり coordinate the interior (室内を調和させる) とは普通言わないということですが、そうなるとインテリアをコーディネートする職業の「インテリアコーディネーター」は何と表現すればいいのでしょうか?
日本で「インテリア○○」と呼ばれる職業は?
さて、日本で「インテリア○○」と呼ばれる職業は今回調べられたものだけでも5つあります。以下はその職業名をアイウエオ順に並べて英語表記も載せ、さらに仕事内容と強引に漢字化した職業名も加えたものです。
住宅、店舗、オフィス、公共施設などのインテリア計画の作成や商品選択のアドバイスをする職業。
テレビのスタジオや雑誌の撮影現場などの内装スタイリングを行う職業。
室内空間を総合的に飾り付けながら構成・演出を行う職業。
室内空間の環境設計やインテリア用品のデザインを行う職業。
住宅、店舗、オフィスなどの室内の設計を行う職業。
この1の「コーディネーター」と3の「デコレーター」、4の「デザイナー」と5の「プランナー」はそれぞれ仕事内容が似ている印象がありますが、職業一覧を載せた主なウェブサイトには1と4以外は載せていないものもあるため、日本では「コーディネーター」と「デザイナー」が主な「インテリア」職だと言えるでしょう。
なお、この5つの職業はどれも資格は必須ではないようですが、取得するほうが有利ということで多くの方が取得されているようです。
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↑カラーコーディネートが楽しそうなこの人は「インテリアコーディネーター」に違いない。
アメリカのインテリアコーディネート系の職業
アメリカで一般的に知られているインテリアコーディネート系の職業は、interior designer (インテリアデザイナー) と interior decorator (インテリアデコレーター) の2つだけです。多くの州ではインテリアデザイナーに資格の取得を必須としているようですが、インテリアデコレーターは資格を取得する必要がありません。
一般の人の中にはこの2つの職業が全く同じものと誤解している人もいますが、仕事内容は重なる部分があるのも事実です。インテリアデザイナーの中にはインテリアデコレーターの仕事の室内装飾を行う人もいますが、壁や窓の位置を変えるなど空間・構造的デザインの変更は資格を持つインテリアデザイナーにしかできません。
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↑真面目に聞いてなさそうな新婚カップルに色のコーディネートについてアドバイスするインテリアデザイナー。
イギリスのインテリアコーディネート系の職業
一方、イギリスで一般的に知られているインテリアコーディネート系の職業は interior designer だけですが、アメリカと同じく interior decorator も存在します。
注意すべき点はアメリカでは interior を付けずに decorator と表現してもインテリアデコレーターの意味になるのに対し、イギリスではそう表現すると「塗装・壁紙張り業者」の意味になってしまうことです。一方、interior を付けて interior decorator と表現するとアメリカのように「室内装飾家」と解釈する人と、「室外の作業はしない塗装・壁紙張り業者」と解釈する人に分かれます(後者の解釈のほうが普通のようです)。
つまり、イギリスではアメリカや日本で「インテリアデコレーター」や「インテリアコーディネーター」と呼ばれる人たちが行う室内装飾を多くのインテリアデザイナーが仕事の一部として行っていることになります。
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↑イギリスの「デコレーター」はこのような危険な職業なのだ。(全員がこれをやるわけではないですが...)
日本の「インテリアコーディネーター」は英語でどう表現する?
インテリアデコレーターの資格について説明した日本語のウェブページの中にはインテリアデコレーターとインテリアコーディネーターの仕事内容に大きな違いはないと説明しているものもあることから、インテリアコーディネーターという日本の職業は英語で interior decorator と表現するのが最適と言えるでしょう(先ほど説明したとおりイギリスでは塗装・壁紙張りをする内装業者と誤解される可能性がありますが)。
なお、interior stylist は英語圏でも使える自然な表現で、オーストラリアでは先ほどの2の日本のインテリアスタイリストと違ってメディア関連の現場の内装スタイリングだけでなく住宅の室内スタイリングをする人も多いようですが、アメリカやイギリスでこの表現を使うと何らかの理由で自分を interior designer/decorator とは呼びたくない(または呼べない)人だと思われるかもしれません。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか?「インテリアコーディネーター」の英語として interior decorator が多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。
インテリアコーディネーターの方々も少なくともアメリカでは interior decorator と名乗ったほうがすぐに職業を理解してもらえるため、英語版の名刺に "Interior Coordinator" と記載している方は今のうちに刷り直しておいたほうがいいかもしれません...