オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第203回は「飲み薬/内服薬」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
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↑「ええと...飲み薬は英語で何だったかな。drinking medicine?」
まず、同じことを意味する「飲み薬」と「内服薬」はオンライン和英辞書や英語学習サイトでどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
1. internal medicine/remedy
2. medicine
3. medicine for internal use
4. medicine taken internally/orally
5. oral medicine
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Ichacha.net(辞書)
Imagict(辞書)
Linguee(辞書)
MYスキ英語
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
ご覧のとおり、主に5つの訳語が見つかりました。「飲み薬」では internal medicine が最も多く、「内服薬」では medicine taken internally が最も多く見られました。ということはできるだけシンプルに表現したければ internal medicine を使えばいいということでしょうか?
以下では、「飲み薬」と「水薬」の違いも含め、「飲み薬/内服薬」の英語について分かりやすく説明します。
飲み薬 ≠ 水薬
まず、「飲み薬」を liquid medicine や medicine that you drink と説明しているネイティブスピーカーも一部見られましたが、これらは「飲み薬」ではなく「水薬 (=液状の飲み薬)」を意味します。
「飲み薬」とは錠剤、カプセル、粉薬、そして今説明した水薬などあらゆる飲む薬の総称で、塗り薬、湿布、目薬などを意味する「外用薬」と対比する場合は「内服薬」という言葉が使われることが多いと思います(この他に同じ意味とされる言葉に「内服剤」「内用薬」「内用剤」「経口薬」「経口剤」があります)。
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↑「どうやら日本じゃ錠剤やカプセルも take じゃなくて drink するらしいぞ」「それ swallow することじゃないかしら?」
「飲み薬/内服薬」は英語で何と言う?
では、その「飲み薬/内服薬」は英語で何と言うのでしょうか?
「飲み薬」の英語として大半の辞書が載せていた internal medicine は実は「内科学」のことで、medicine を「医学」ではなく「薬」の意味で使ったとしても飲み薬以外の体内用の薬にまで該当します。そして「内服薬」の英語として最も多く見つかった medicine taken internally や似た medicine taken orally は take という動詞から普通は飲み薬と解釈するものの、「内部に/口から取り入れる薬」という説明的な表現です。
一方、oral medicine は「口腔内科学」の意味もありますが、先ほどの説明に出てきた「経口薬」の意味でも使えます。ただ、少なくともアメリカの医薬業界では薬を(処方薬であれ市販薬であれ)medication と呼ぶことが多いため、経口薬も業界では oral medication と表現するほうが普通だと思います。
いずれにしても、昔はともかく今は粉薬や水薬は稀なことから、少なくとも一般の人は #181 『錠剤』の英語は pill それとも tablet? で説明した pill (錠剤、カプセル、カプレットなどの総称) という単語を使ったり、medicine や drug など「薬」を意味する単語と先ほどの take を使って飲み薬を表現するのが普通です。
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↑pill とは錠剤、カプセル、カプレットなど丸みを帯びた固形の飲み薬やサプリメントの総称。日本語にはこの総称がないため、粉薬や水薬も含む「飲み薬」や「内服薬」という言葉を使ったり、「錠剤やカプセル」と表現するしかない。
なお、ここまでの説明で「薬」の英語として medicine、medication、drug が出てきましたが、#173 『医薬品』や『薬(物)』の英語は medicine, medication, drug などのどれ? でも説明したとおり、medicine という単語は飲み薬/内服薬のイメージがあると言う人や、水薬を意味するのが普通と言う人までいます。
そのためか外用薬には medication や treatment という単語のほうが多く使われている印象がありますが、medicine を使って外用薬を topical medicine と表現しても誤りではありません(topical の意味は #62 『外用薬』の英語は本当に external medicine? を参照)。実際、イギリスのNHS (国民保健サービス) のウェブサイトの『Types of medicines』というページでは、外用薬を topical medicine と表現しています。
medication や treatment と同じく medicine にも可算名詞 (数えられる名詞) と不可算名詞 (数えられない名詞) の両方の意味があり、不可算名詞の場合は「薬」の他に先ほどの「医学」や「医術」、可算名詞の場合は1つの種類の薬を意味するため、薬の種類が複数あると言いたい場合は複数形で medicines と表現します。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? これで「飲み薬/内服薬」は英語でどう表現すればいいか分かりやすくなったかもしれません。
「飲み薬は英語で liquid medicine と言います」と教えてくれるネイティブの先生がいたら、「先生、それは飲み薬じゃなくて水薬です...」と優しく教えてあげましょう。