#130 「自営業/個人事業主」や「自由業」は英語で何と言う?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。
第130回は「自営業/個人事業主」「自由業」の英語についてです。

注意 言葉は時代、状況、文脈などによって変化する場合があることを留意してお読みください。また、以下の内容はアメリカとイギリス以外の英語圏には該当しない場合があります。

Rawpixel / Rawpixel.com

↑「さあ、キミも自分自身のボスになろう!」(ん? 日本じゃそんな言い方は普通しませんが...)


まず、似ている言葉の「自営業」「自由業」はオンライン和英辞書や英語学習サイトでどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをそれぞれアルファベット順に記載します。

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「自営業」
インターネット上の主な英語訳
1. family(-)operated business
2. independent business / independent enterprise
3. one's own business
4. self-employed / self-employment
5. self-owned business
「自由業」
インターネット上の主な英語訳
1. freelance / free(-)lance profession
2. liberal profession
3. self-employed profession
訳語が見つかった辞書・サイト
bab.la(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?

英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)

Linguee(辞書)
ネイティブイングリッシュ
99designs
Reverso Context(辞書)
TRANS.Biz
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
Writers Way
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「自営業 英語」「自由業 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、ほぼ同じ意味の表現を1つにまとめると「自営業」は主に5つ、「自由業」は主に3つの訳語が見つかりました。「自営業」で最も多かったのは和英辞書だけが載せていた independent business、次いで多かったのは self-employedself-owned business です。これらは本当に「自営業」なのでしょうか?

以下では、「フリーランス」や「小規模企業経営者」の表現も含め、「自営業/個人事業主」や「自由業」の英語について分かりやすく説明します。

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「自営業」は解釈が分かれる言葉

まず、自営業について説明した日本のウェブサイトで自営業は「自分で事業を営むこと」や「自らの力で事業を経営すること」と説明されており、フリーランスも自営業に含まれると説明しているサイトもあります。

一方、私たちの中には「自営業」と聞くと農業やお店などを自分で経営しているイメージを持つ人も多く、実際にインターネット上では次のように自営業とフリーランスを別物と考えるコメントが見られます。

「自営業やフリーランスの人には保険が必要?」
「自営業でもフリーランスでもお金が借りれる」
「自営業またはフリーランスの皆様へ」

これは一般の人だけでなく、自営業とフリーランスの違いについて説明したウェブサイトの中にも個人で店舗経営をすることが「自営業」だと説明しているものがあります。

つまり、「自営業は英語で何と言うか?」という問いに対する答えは「自営業とは何か」という解釈の違いによって変わるということですが、今回見つかった「自営業」の英語はそれぞれ何を意味するのでしょうか?

takayuki / Shutterstock.com

↑「自営業で翻訳をやっています」「えっと...翻訳事務所をご自身で経営されているということですか?」

Independent Business, Family-Operated Business, Self-Owned Business

「自営業」の英語として今回最も多く見つかった independent business という言葉は英語版ウィキペディアの『Independent business』のページで「民間企業」を意味するのが普通と説明されており、ほぼ同じ表現の independent enterprise も「独立企業」という意味のため、どちらも「自営業」とは違うでしょう。

いくつかの辞書だけが載せていた family-operated business は、家族経営の事業を「自営業」と考える場合には使える表現です(family-run business や家族経営のお店/会社を意味する family-owned business という表現のほうが普通だと思いますが)。

同じくいくつかの辞書だけが載せていた self-owned business は、「(店/会社)自身が所有する店/会社」という違和感のある表現のため使わないほうがいいでしょう。

Self-Employed, Self-Employment

形容詞の self-employed と名詞の self-employment はどちらも厳密にはフリーランスを含む「自営業」に使われる言葉で、employ/employment を「雇う/雇用」と解釈すると self-employ(ment) は「自分自身を雇う(こと)」になります。どうしてこれが「自営業 (=自分で事業を営むこと)」と同じなのでしょうか?

冒頭の写真の "Be your own boss" (自分自身の上司になろう) というフレーズは自分1人で事業を行うという意味で記事のタイトルなどによく使われますが、日本ではそのような表現は普通しないと思います。同じく日本では「自分自身を雇っている」という考え方をしないからか、自営業者を「自雇用者」とは普通呼びません(少なくともフリーランスの自分は「自分自身を雇っている」と考えたことは一度もありません)。

Africa Studio / Shutterstock.com

↑「雇ってやってるんだから今日も俺の指示どおりに働くんだぞ」(そこにいるのはあなた自身ですが...)

employ には単に「(手段として) 使う」という意味もあるため、self-employ を「(稼ぐために) 自分自身を使う」と解釈すればなぜ self-employed と呼ぶのか分かる気がしますが、いずれにしても英語で "I'm self-employed" と言えば普通は「私は自営業者です」を意味します。ただ、自営業者でもフリーランスの場合は "I'm a freelance (translator)" (私はフリーランス(の翻訳者)です) のように説明するほうが普通です。

この self-employed と同じ意味とされる表現に work for oneself があり、"I work for myself" と言えば(フリーランスも含め)自営業をしている意味になります。直訳すると「自分自身のために働く」ですが、会社勤めでも「自分自身のため」に働いている人は多いのでこの英語フレーズは「自分自身に仕える」と表現するほうが適切かもしれません(個人的には自分自身に仕えていると考えたことは一度もありませんが...)。

なお、自営業者1名は "a self-employed worker"、「自営業者たち」は "self-employed workers" または総称で "the self-employed" と表現できます。

One's Own Business

次は one's own business についてです。このフレーズは「自分自身の店/会社/事業」という意味のため、最初に書いたとおり自営業が「自分で事業を営むこと」や「自らの力で事業を経営すること」を意味するのであれば、running (経営すること) を付けて running one's own business と表現する必要があります。

つまり、"I run my own business" や "I'm running my own business" と言えば日本語の「自営業をしています」と全く同じ意味になりますが、先ほどの self-employed と同じくこれもフリーランスの人であれば "I'm a freelance(r)" と表現するほうが店舗経営をしている自営業者と間違われずに済むでしょう。

nukeaf / Shutterstock.com

↑「(他人のことではなく) 自分のことを気にしていろ (=余計なお世話だ)」という意味で頻繁に使われる
 "Mind your own business" というフレーズ。「自営業のことを気にしていろ」という意味と勘違いしてはいけない...

農業や店舗を経営している場合の「自営業」は英語で何と言う?

さて、「自営業」と聞くと農業やお店などを自分で経営しているイメージを持つ人も多いと最初に書きましたが、その場合の「自営業」は英語でどう表現すればいいのでしょうか?

self-employment (自営業) や self-employed worker (自営業者) でもその意味での自営業(者)をイメージする人は多いようですが、それよりも(法的で少し硬い表現ですが)sole proprietorship という言葉を「自営業」に、sole proprietor を「自営業者」に使うほうがいいかもしれません(農家もこれらに含めている文書があります)。この場合の sole という単語は「1人だけの」という意味です。

proprietor はビジネスの話ではお店や会社の経営者 (business owner) を意味するため、店舗/会社経営者ではないフリーランスは含まないはずです。sole proprietor は日本語で「個人事業主」と表現されることがありますが、個人事業主にはフリーランスも含まれるため、「個人事業主」は本当は self-employed worker (フリーランスも含む意味での「自営業者」) と表現するほうが正しいと思います。

また、この経営者の意味での「自営業者」には small business owner (小さな店/会社の経営者) という表現を使ってもいいかもしれません。経営する小さなお店や事務所で自らも働いている人は "a working owner of a small business" (経営する小さな店/会社で働く人) と表現すると意味が明確になると思います。

「自由業」は英語で何と言う?

最後は、「自営業」と似ている「自由業」の英語についてです。自営業と自由業の違いについてはいろいろなウェブサイトで説明されていますが、「自由業」という言葉はお店や会社を経営している自営業者と違って時間に束縛されずに個人で事業を営んでいるフリーランスのイメージで使われているようです。

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↑時間に束縛されない「自由業」だからといって誰もがこのような態度で働いていると勘違いしてはいけない...

つまり、例えば「自営業者や自由業者」という日本語を英語にする場合は、自営業と自由業を別物と考えているのであれば "small business owners and freelancers" や "sole proprietors and freelancers"、自由業を自営業の一種と考えているのであれば "self-employed workers, including freelancers" (フリーランスを含む自営業者) のように表現するのがいいでしょう。

なお、「フリーランス業」という意味での「自由業」は、今回見つかった主な訳語に含まれている freelance profession のように説明しなくてもシンプルに freelancing と表現できます。また、「自由業」の直訳の liberal profession は少なくともEUでは弁護士や医師など「フリーランス」と呼ぶには違和感のある人たちに主に使われているようなので、そのような職業としての「自由業」に使ってもいいかもしれません。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか? これで「自営業/個人事業主」や「自由業」の英語表現の違いが分かりやすくなったかもしれません。

自由業も含め、自営業の方は上司である自分自身の指示に従って引き続きお仕事に励みましょう...