オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第66回は「化粧品」の英語についてです。
注意 言葉は時代、状況、文脈などによって変化する場合があることを留意してお読みください。また、以下の内容はアメリカとイギリス以外の英語圏には該当しない可能性があります。
roungroat / Rawpixel.com
↑「そういえば日本ではお化粧に歯磨き粉も使うらしいよ」「あり得ないんですけど...」
まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「化粧品」はどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
1. beauty preparation
2. cosmetic(s)
3. cosmetic preparations
4. cosmetic product
5. makeup / make-up
6. toilet articles
7. toilet goods
8. toiletries / toiletry
アメリカ生活 101
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
eigonary(辞書)
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
Reverso Context(辞書)
TOEIC990.net
Weblio(辞書)
Weblio英会話コラム
WebSaru(辞書)
YOLO
ご覧のとおり、主な訳語だけでもこれだけの数になりました。そして beauty、cosmetic、makeup、toilet という4つの単語がどれも「化粧」を意味するかのように見えます。
以下では、化粧品の種類である「メーキャップ化粧品」と「基礎化粧品」も含め、「化粧品」の英語について分かりやすく説明します。
「化粧(品)」とは
まず、「化粧」とは口紅、白粉 (おしろい)、アイシャドーなどを顔に塗って見た目を変えること (化けること) やその塗るもの自体を意味しますが、この塗るもの/塗ったものが makeup (または make-up) で、例えば「化粧をする」であれば "wear makeup" と表現します。この makeup はご存じのとおり日本語で「化粧」の他にも「メイク」や「メーク」と呼ばれ、「メーキャップ/メイクアップ」と表現されることもあります。
一方、「化粧品」は主な国語辞書で口紅や白粉を例に挙げて「化粧に用いる品」と説明されているものの、日本語版ウィキペディアの『化粧品』のページを見ると法律上はそれよりも範囲が広く、メーキャップ化粧品、基礎化粧品、ヘアトニック、香水、歯磨き、シャンプー、入浴剤なども「化粧品」とされています(歯磨きやシャンプーも「化粧品」と呼ぶのは理解不能ですが、法律がそう決めているのであれば仕方ありません)。
この広い意味での「化粧品」とほぼ同じ意味の英語が toiletries (複数形にしているため「化粧品類」と同じ) で、日本でも「トイレタリー(用品)」と表現されることがあります。この toilet の部分は「トイレ」ではなく「化粧」(というより「身支度」) の意味ですが、今回調べた和英辞書の多くが載せている toilet articles や toilet goods よりも toiletries と表現するのが今は普通です。
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↑「トイレタリーってトイレ用品でも化粧に用いる品でもなくって『化粧品』なの。言ってる意味分かるかしら?」
「メーキャップ化粧品」は英語で何と言う?
さて、先ほどの説明の中で「メーキャップ化粧品」という言葉が出てきましたが、この不思議な日本語は主な国語辞書で口紅、白粉、頰紅、アイシャドー、マスカラ、マニキュアなど美しく装うための品と説明されているため、これこそ本当の「化粧品 (=化粧に用いる品)」(または「メイク用品」) だと言えるでしょう。では、この正しい意味での「(メーキャップ)化粧品」は英語で何と表現すればいいのでしょうか?
「化粧」を意味する makeup は「化粧品類全体 (メイク用品全体)」の意味でも使えますが、この単語は不可算名詞 (数えられない名詞) のため化粧品1つを "a makeup" と表現したり複数の化粧品を "makeups" と表現することができません。そのため、item (品) や product (製品) という単語を使って "makeup item(s)" や "makeup product(s)" のように表現します。
この「メーキャップ化粧品」という日本語を載せているオンライン和英辞書は2つしか見つかりませんでしたが(『Linguee』『Weblio』)、訳語は makeup products と cosmetics になっていました(cosmetics については後で説明します)。
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↑口紅、頬紅、アイシャドーなど美しく装うために用いる品が「メーキャップ化粧品」。英語では "makeup makeup"?
「基礎化粧品」は英語で何と言う?
さて、先ほどの説明の中で「基礎化粧品」という言葉も出てきましたが、これは洗顔料、美容液、乳液、パック、日焼け止めなど肌のケア用品を指し、化粧をしない人でも使ったりこれだけ使っても「化ける」ことはないため「化粧品」ではなく「肌ケア用品」や「スキンケア製品」と呼ぶほうが適切でしょう。実際、英語ではこれらの品は skin care item/product と呼ばれています(skin care は1語で skincare と書く人もいます)。
なお、この「基礎化粧品」を foundation (cosmetics/make-up) と訳している百科事典や和英辞書もありますが、これは先ほどの「メーキャップ化粧品」に分類される「ファンデーション」のため「基礎化粧品」ではないでしょう。foundation という単語には「基礎」という意味があるため、「基礎化粧品」と間違われてしまったのでしょうか?
この「基礎化粧品」の英語に skin care item や skin care product を載せているオンライン和英辞書は1つだけ見つかりましたが(『Weblio』)、ページ冒頭の「主な英訳」というセクションには載っていませんでした(そのセクションには basic skin care という半分だけ適切な訳語が載っており、他にもこの不要な "basic" を付けた basic skin-care products などの訳語を載せている和英辞書がありました)。
Cosmetics とは何?
さて、今回調べた辞書・サイトで「化粧品」の英語として最も多かったのが cosmetics (これも複数形のため「化粧品類」と同じ) です。カタカナで「コスメ」と表現されることも多いこの英語は一体何を意味するのでしょうか? 英語版ウィキペディアの『Cosmetics』のページでは次のような製品を例に挙げています。
体: デオドラント、ボディーローション、香水、入浴剤
手・爪: マニキュア、 手の除菌用ローション
髪の毛: パーマ剤、ヘアカラー剤、ヘアスプレー、ジェル
歯磨きやシャンプーも含む toiletries と違い、cosmetics は塗ったりスプレーしたり(カラーコンタクトのように)付けてそのまま使うものと言えますが、消費者の間では cosmetics はメイクやマニキュアなどもう少し範囲の狭いイメージだと思います。先ほどの makeup は顔以外に塗るものも含むことがあり、cosmetics は意味が曖昧なためこの makeup と cosmetics の違いがよく分からない人も多いようです。
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↑「そっかー、これは化粧品 (makeup) や化粧品 (cosmetic) じゃなくて化粧品 (toiletry) なのね」「ややこしいわよね」
「化粧品」のその他の表現
最初に挙げた4つの単語のうち残された beauty は、「美容」という意味のため beauty item/product と表現すれば「化粧品」ではなく「美容品」になります。なお、preparation は「調合物」を意味します。
先ほど説明したとおり複数形の toiletries と cosmetics は「化粧品類」を意味するため、「化粧品1つ」と言いたければ "a toiletry/cosmetic" と表現できます。toiletries と同じ意味で personal care という表現もありますが、これは「介護」の意味にもなるので注意が必要です。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回説明した「化粧品」という日本語が持つ複数の意味や「メーキャップ化粧品」「基礎化粧品」の適切な英語訳が多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。
スーパーやドラッグストアにお勤めの方は、同じ「化粧品」だからといって歯磨き粉やシャンプーをメーキャップ化粧品と基礎化粧品の間に置いたりしないようにしましょう(男性の私が近づきにくくなってしまいますので...)。