オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第195回は「求人広告」や「募集広告」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
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↑「ええと...求人広告はどこかな~」「今はネットで探す時代ですよ...」
まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「求人広告」と「募集広告」はそれぞれどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
1. classified (employment) ad(s)/advertisement
2. help(-)wanted ad/advertisement(s)/advertising
3. job ad(s)/advertisement
4. job listing
5. job posting
6. recruiting ad/advertising
7. recruitment advertising
8. situation(s-)vacant advertisement
9. want(ed) ad(s)
インターネット上の主な英語訳
1. advertisement for subscription
2. help-wanted ad/advertisement
3. recruitment advertisement(s)
4. want ad
朝時間.jp
bab.la(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英辞郎 on the WEB(辞書)
goo(辞書)
Glosbe(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
Reverso Context(辞書)
砥石と研削研磨の情報サイト
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
ご覧のとおり、いろいろな訳語が見つかりました。一体どれを使えばいいのでしょうか? また、どちらも「広告」を意味する名詞で ad と略せる advertising と advertisement の違いは何でしょうか?
以下では、「求人広告を作成する」や「求人広告を載せる」の表現も含め、「求人広告」や「募集広告」の英語について分かりやすく説明します。
「求人広告」は英語で何と言う?
まず、advertisement は可算名詞 (数えられる名詞)、advertising は不可算名詞 (数えられない名詞) という違いがあるため、数えられる広告1つは "an advertisement"、複数の広告は複数形で "advertisements" と表現します。どちらの単語も口語では ad と略せることから(イギリスでは人、地域、広告の媒体によって advert も使われます)、例えば「多くの広告」は口語で "many ads" と表現できます。
では、今回見つかった「求人広告」の主な英語はそれぞれ何を意味するのでしょうか? アルファベット順に簡単に説明すると次のようになります(ここでは advertisement/advertising をすべて ad と略します)。
classified ad (分類された広告) は新聞などの案内広告/三行広告のこと(文字だけの多数の小さな広告が項目別に分類されたページの中の1広告)。人や物や住居を探している人が見る。employment を付ければ求人広告だけを意味するものの、インターネット上の単独の広告など分類不要の広告には使えない。
help wanted はアメリカで classified ad のページの中の求人広告欄や店頭の「スタッフ募集」に使われてきたフレーズ(ただし求人広告を help wanted ad と呼ぶ人は今は少なくなっている印象あり)。help には雇われて働く人の意味もあるものの、このフレーズの help がもともとその意味だったのかは不明。
単に「仕事の広告」を意味するため、媒体や形式に関係なく求人広告全般に使える表現。
listing は「一覧」のこと。つまり単独掲載の求人広告には使えない。
posting は広告などを(実物の)掲示板に貼ることやインターネット上に投稿することを意味する動詞の post を「貼ったもの/投稿したもの」という名詞にしたもの。新聞などの求人広告には普通使わない。
recruit する手段の1つとして掲載する求人広告に適した表現。recruit については前回の #194 『雇用/採用する』の英語は adopt, employ, hire, recruit などのどれ? を参照。
classified ad のページの中の求人広告欄をイギリスでは主に "Situations Vacant" と表現する(複数のカテゴリーから成るネット掲示板の求人情報カテゴリーにもこの表現は見られる)。
classified ad と同じ意味のアメリカ英語(口語)。つまり求人広告だけを意味する言葉ではない。wanted ad ではなく want ad と表現するのが普通(先ほどの help wanted ad などの場合を除く)。
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↑求人中の企業の採用担当者(主語が I だったら単にストーカーの可能性あり)。
そして例えば「求人広告を書く/作成する」は "write/create a job ad(vertisement)"、「ネットに求人広告を出す/掲載する」は "advertise a job (opening) online" や "post a job (opening)" (opening は仕事の「空き」のこと)、「ネットの求人広告に応募する」は "apply for a job (opening) advertised online" のように表現します(「その求人広告」と言いたい場合は a job ではなく the job)。
なお、「求人サイト」や「転職サイト」と呼ばれる求人情報専門のウェブサイトは、job posting (web)site (広告を載せる側の表現) や job search (web)site (仕事を探す側の表現) と呼ばれています。
「募集広告」は英語で何と言う?
では、「募集広告」は英語で何と言うのでしょうか?
そもそも「募集広告」という言葉だけでは何を募集しているのか分からず、今回見つかった4つの主な訳語を見ても例えば advertisement for subscription は定額制のサービスまたは募金の広告にしか使えないと思われる表現で、先ほども出てきた want ad は日本語で「募集」とは呼ばない物品売買の広告にも該当します。
日本語の「募集」のように人だけでなくアイデアなどを募る場合にも使え、物品を探している場合には該当しない英単語はないと思いますので、「募集広告」という日本語を英訳するときは何の募集なのかを確認した上で最適な表現を使うようにしましょう(例えばルームメイトの募集広告であれば roommate wanted ad)。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? これで「求人広告」や「募集広告」に使える英語表現の違いが分かりやすくなったかもしれません。
現在仕事を探していないのにこのページに求人広告がいくつか表示されている場合は、このページが英語学習者向けの内容ではなく求職者向けの内容だとGoogleが誤解しているのが原因です...