オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第140回は「休憩室/休憩スペース」や「休憩所」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
yann maignan / Unsplash.com
↑休憩するための部屋だから「休憩室」。さて英語では何と言う?
まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「休憩室」と「休憩所」はそれぞれどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
1. break room / breakroom
2. common room
3. foyer
4. lobby
5. lounge
6. parlor
7. rest room / resting room / restroom
8. retiring room
インターネット上の主な英語訳
1. layby / lay-by
2. parking area
3. pull-off
4. rest area/house/station/stop
5. resting area/place
6. service area
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英語部
eigopedia
英辞郎 on the WEB(辞書)
goo(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
MYスキ英語
ネイティブ英単語を無料で学習「ねいたん」ブログ
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
ご覧のとおり、どちらもいろいろな訳語が見つかりました。rest (休み) や resting (休むこと) という単語を含んでいないものが多く見られますが、これらは本当に「休憩室/休憩所」なのでしょうか?
以下では、前回説明した break と rest の違いも含め、「休憩室/休憩スペース」や「休憩所」の英語について分かりやすく説明します。
本当に「休憩」するための部屋?
まず、ほぼすべての辞書・サイトが「休憩室」の英語に break room または1語の breakroom を載せていましたが、break と「休憩」は意味が違います。break は単に短い「中断(時間/期間)」や「合間」のことで、例えばデスクワークで運動不足と感じている人はその中断時間に「休憩 (=休んで憩うこと)」をせず筋トレなどをしてもいいのです(詳細は前回の #139 『休憩/休息』の英語は break それとも rest? を参照)。
つまり、仕事などの合間に「休憩」だけでなく遊びや勉強など何をしてもいい部屋はそもそも「休憩室」と呼ぶべきではないのですが、他に自然な日本語がないからそう呼んでしまうのかもしれません。
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↑"Give me a break" (いい加減にしてくれ) というフレーズは少しの間だけ「休ませてくれ (Let me rest)」という意味ではなく、単にうっとうしいこと(文句を言うなど)を少なくともしばらくは「やめてくれ」という意味なのだ。
「休憩室」や「休憩スペース」は英語で何と言う?
では、その「休憩室」は英語で何と言うのでしょうか? もし休憩だけでなく遊びや勉強など何をしてもいい部屋であれば break room (合間の時間を過ごす部屋) と表現するのが最適ですが、寝たりボーっとしたり本当に「休む」ことを目的とした部屋であれば resting room と表現するとその意味になります。ただ、一般的な表現ではないため人や状況によっては寝室などと誤解される可能性があります。
冒頭の写真のように座り心地の良い椅子やソファーがあってくつろげる部屋は一般的に lounge と呼ばれており(この単語には「座ったり横になってくつろぐ」という動詞の意味もあり)、そのような休憩室で従業員用のものは employee(s') lounge、バスなどの運転手用のものは driver's lounge と表現できます。室内の一部にソファーやテーブルを置いて作った「休憩スペース」であれば、lounge space と呼べばいいでしょう。
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↑このような部屋でも日本語では「休憩室」と呼べるが、本当に休んだりくつろいだりできそうにないので英語では resting room や lounge とは呼ばないほうがいい。
「休憩室」のその他の訳語
では、今回見つかった「休憩室」のその他の訳語はそれぞれ何を意味するのでしょうか? 簡単に説明すると次のようになります。
「共用室」を意味する言葉。例えばイギリスの学校で談話や休憩をする部屋に使われる。
アメリカでは家やアパートの玄関の間、イギリスではホテルや劇場のロビーに主に使われる。
アメリカではホテルや劇場のロビー、イギリスでは議院のロビーやアパートの玄関の間などに使われる。
昔はお屋敷の応接間に使われていたり、その後は美容院などに使われていた単語(今は古風な表現)。
アメリカでは公共の建物内にあるトイレを意味する言葉。2語の rest room も同じ(または resting room と同じく寝室などと誤解される可能性あり)。イギリスでは「休憩室」の意味で使えないことはない。
ある場所から退いて何かをする部屋。「休憩室」に限らずこの言葉が一般的に使われることはない(イギリスの裁判所で判事などが判決について話し合う部屋をこう呼ぶという情報はある)。
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↑parlo(u)r は美容院などのお店にも使われていた単語(今は #13 『美容院』と『エステサロン』の英語は両方とも beauty salon? で説明したとおり salon と呼ぶのが普通)。
「休憩所」は英語で何と言う?
最後は、「休憩所」の英語についてです。これも本当に「休む」ことが目的の場所であれば、「休憩」の部分には resting または rest を使えます。例えば、休憩室ではなく屋外の休憩エリアは rest(ing) area と表現するとその意味になります(この場合は rest room と違ってトイレと誤解されることはありません)。
今回見つかった「休憩所」の英語はほぼすべて自動車の運転手や乗客が休むための場所ですが、pull-off (アメリカ英語) と layby / lay-by (イギリス英語) は「休憩所」よりも「道路わきの一時待避スペース」と表現するほうが適切かもしれません。休憩施設の「サービスエリア/パーキングエリア」に該当する rest area や service area については #138 『サービスエリア』は本当に和製英語? で詳しく説明しています。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? これで「休憩室/休憩スペース」や「休憩所」の英語にはどの表現を使えばいいか分かりやすくなったかもしれません。
"Resting Room" と書かれた休憩室を見かけたら、そこは本当に「休む」ための部屋ですので騒いだり議論したりしないようにしましょう...