オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第84回は「ライトユーザー」や「ミディアム/ミドルユーザー」英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
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↑発火するほどヘビーな端末の使い方をする人。もっと軽く使う人や使用頻度が少ない人は英語で何と言う?
まず、使用量や消費量がとても多い人が「ヘビーユーザー (heavy user)」、コンピューターやソフトウェアの高度な機能まで使いこなす人が「パワーユーザー (power user)」ですが、その逆の「ライトユーザー」や使う程度が中程度の「ミディアム/ミドルユーザー」という表現もインターネット上などで見られます。
では、この「ライトユーザー」と「ミディアム/ミドルユーザー」というカタカナ英語はオンライン和英辞書や英語学習サイトでそれぞれどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の英語訳
1. casual user
2. light user
インターネット上の英語訳
該当なし
英辞郎 on the WEB(辞書)
日立ソリューションズ IT用語辞典(辞書)
Linguee(辞書)
サバナビ(辞書)
Weblio(辞書)
ご覧のとおり、「ライトユーザー」は訳語が2つ見つかりましたが、「ミディアムユーザー」や「ミドルユーザー」の訳語を載せている辞書・サイトはありませんでした。カタカナ英語には本当に英語圏で使われているものとそうでないものがありますが、この「ライト/ミディアム/ミドルユーザー」はどちらなのでしょうか?
以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった表現も含め、「ライトユーザー」や「ミディアム/ミドルユーザー」の英語について分かりやすく説明します。
「ライトユーザー」は本当に和製英語?
まず、今回訳語が見つかった辞書・サイトのうち2つのIT用語辞典が「ライトユーザー」は和製英語で正しい英語は casual user と説明しており、パソコンや携帯電話を最低限の使用で済ませる人という意味で「ライトユーザー」を載せている国語辞書でも和製マークが付いています。
ただ、そのようなIT系の分野では light user が和製英語で casual user が正しい英語だとしても、他の分野では英語圏でも light user と表現する場合があります。例えば、Longman英英辞書やCambridge英英辞書では "light users of the service" (サービスのライトユーザー) という例を載せていたり、ネイティブスピーカーが書いた薬物やアルコールに関する文書では同じく軽度使用者が light user と表現されています。
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↑飲酒量が少ない light alcohol user。それでも運転前や運転中は絶対に飲んではいけない。
ただ、この light user という表現はあまり一般的ではなく、casual user は使う量や頻度の多い少ないではなく基本機能しか使わない「軽い使い方をする人」という意味のため、もし「使用頻度が少ない人」と言いたければ occasional user (ときどき使う人) や infrequent user (使用頻度が少ない人) と表現するほうがいいでしょう。逆に「使用頻度が多い人」は frequent user になります。
「ミディアムユーザー」や「ミドルユーザー」は正しい英語?
さて、インターネット上には使う量や頻度が中程度の「ミディアムユーザー」や「ミドルユーザー」という表現がそれなりに見られますが、どちらも日本人が考えそうな表現に思えるものの、medium user はネイティブスピーカーによって書かれたマーケティングや医薬系の文書などで実際に使われることのある表現です。
一方、light user や medium user は適切と考える人でも middle user には違和感を感じるようで、これは恐らく middle が「中間」という相対的な位置を意味するだけで medium のように程度を表す言葉ではないからだと思います。なお、「適度に使う人」であれば moderate user と表現します。
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↑真ん中にいるあの日本人男性が middle user か?(いや the user in the middle です...)
ハイユーザー? ローユーザー?
その他、「ハイユーザー」「ローユーザー」という表現も日本語のウェブサイトで見られますが(なぜか自転車関連のサイトが多い)、英語でもそれぞれ high user、low user と表現していいのでしょうか?
high も low も量や頻度の程度を表す単語のため、例えば研究・調査などの専門的な文書で何がどれくらい高い/低い(または多い/少ない)と high/low に該当するのかが明確に定義されていれば、それらのユーザーを high/low user と表現できます(実際に薬物使用についての文書などで使われています)。
各表現をまとめると?
最後に、ここまで説明してきた各表現をまとめると次のようになりますが、日本語と同じく普段の会話や文章では少なくとも medium user と high/low user は使うのを避けたほうがいいでしょう。
※power user に対して通常のユーザーを normal user や average user と表現することもできます。
・heavy user > medium/moderate user > light user
・frequent user > medium/moderate user > infrequent/occasional user
・high user > medium user > low user
なお、#34 『ユーザー』の英語は本当に user? でも説明したとおり、飲食物や衣類など普通は use (使う) という動詞を使わないものでもマーケティング業界では(「消費者」という意味で)user と表現することがありますが、これも通常は drinker、eater、wearer などの自然な表現を使うほうがいいでしょう。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? これで使う量や頻度が異なるユーザー層を表す英語表現の違いが分かりやすくなったかもしれません。
「ユーザー」という英語は使用者と利用者のどちらにも使えて便利ですが、日本語で表現するほうが分かりやすい場合でも英語を多用するヘビーユーザーをよく目にします。そのような方はライトユーザーかミディアムユーザーになってもう少し普通の日本語で話してみてはいかがでしょうか?