#155 『通販サイト』の英語は本当に mail order site?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第155回は「通販サイト」の英語についてです。

◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。

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↑通販サイトでサングラスを購入する人。さて「通販サイト」は英語で何と言う?


まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「通販サイト」はどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。

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「通販サイト」
インターネット上の主な英語訳
1. ecommerce site
2. mail order site
3. shopping site
訳語を載せた辞書・サイト
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「通販サイト 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、「通販サイト」の英語を載せているのは2つの辞書だけでした。そしてどちらも載せていたのが2番目の mail order site です。英語圏では本当に通販サイトをそう呼ぶのでしょうか?

以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった表現も含め、「通販サイト」の英語について分かりやすく説明します。

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Mail Order Site?

まず、「通信販売」や略称の「通販」という日本語はインターネットが普及する前からカタログなどに載せた商品の注文を電話などの通信手段で受け付ける販売方式に使われており、これを英語では mail order (system) と呼びます。ただ、この言葉に「(ウェブ)サイト」を意味する site を付けた mail order site という表現をアメリカやイギリスで「通販サイト」に使うことはまずありません。

このようにオンライン和英辞書(特に『Weblio』)は誤った英語訳を載せていることが多く、過去にこのブログで取り上げたものだけでも「キャディーバッグ」「ドラム式洗濯機」「インテリアコーディネーター」「外用薬」「週休2日制」「安心・安全」などで直訳や不自然な表現を載せてしまっているので注意が必要です。

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↑カタログやテレビで紹介した商品の注文を電話や申込用紙などで受け付けて商品を郵送する販売方式が mail order(この mail はメールではなく「郵便」の意味)。 

「通販サイト」は英語で何と言う?

では、通販サイトは英語では何と呼ぶのが普通なのでしょうか?「通販サイト」という言葉の明確な定義はインターネットで調べる限り存在しないようですが、複数の企業や個人商店が1か所で出店するサイト(Amazonや楽天市場)を意味するのが普通で、正式には「電子商店街」や「サイバーモール」と呼ぶようです(他に「ネット商店街」「ウェブ商店街」「オンラインモール」「電子モール」などの呼び名もあるとされています)。

この場合、「通販サイト」のように一般的に使われる英語表現は online shopping site (オンラインの話だと分かる状況では online は不要)、「電子商店街」のような専門用語であれば online marketplace (オンライン市場) になります。なお、1つ1つのお店を意味する「ネットショップ」の英語は #33 『ネットショップ』と『ネットスーパー』は英語で何と言う? で説明しています。

ただ、shopping は「販売」ではなく「買い物をすること」を意味するため、本当に「通信販売をするサイト」という意味で「通販サイト」と言いたい場合は online retail site や retail website と表現する必要があります。この retail は商品を企業やお店ではなく消費者に売る「小売り」のことで、online retail は「ネット通販」を意味します(詳細は #74 『ネット通販』の英語は本当に online shopping? を参照)。

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↑カタカナで「リテール」や「リテイル」と書かれることも多い retail の発音は「リーテイル」に近いので注意しよう。

E-Commerce Site とは?

最後は、今回見つかった主な訳語の中で残された ecommerce site についてです。

ecommerce という単語には e-commerce や eCommerce などの表記もありますが(以降では読みやすいよう e-commerce に統一)、これは electronic commerce (電子商取引) を略した言葉で日本語でも「eコマース」(または略して「EC」) と呼ばれています。そして e-commerce には主に次のタイプがあります。

B2B (Business-to-Business)
会社が商品などを別の会社やお店に売ること(例: 卸売業者→小売業者)
B2C (Business-to-Consumer)
会社やお店が商品などを消費者に売ること(例: 実店舗、通販サイト、ネットショップ)
C2C (Consumer-to-Consumer)
消費者が商品などを別の消費者に売ること(例: オークションサイト、フリマアプリ)

これを見れば分かるとおり、e-commerce site という言葉は B2BC2C のタイプの取引をするウェブサイトにも該当してしまいます。B2C に限定するには B2C e-commerce site (またはシンプルに B2C site) と表現する必要がありますが、それでも通販サイトだけでなくネットショップにまで該当してしまいます。

つまり、「通販サイト」はやはり先ほど説明したとおり「買い物ができるサイト」という意味であれば online shopping site、「通信販売をするサイト」という意味であれば online retail siteretail website、「電子商店街」のような専門用語を使いたい場合は online marketplace と表現するのがいいでしょう。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回説明した「通販サイト」に最適な英語表現が多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。

日本でも専用ハガキや申込書で注文するものを「メールオーダー」と呼ぶことがありますが、先ほど説明したとおりこの「メール」は「郵便」という意味ですので誤ってメールでオーダーしてしまわないよう注意しましょう...

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