#52 「味覚」は英語で何と言う?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。
第52回は「味覚」の英語についてです。

注意 言葉は時代、状況、文脈などによって変化する場合があることを留意してお読みください。また、以下の内容はアメリカとイギリス以外の英語圏には該当しない場合があります。

Nishihama / Shutterstock.com

↑「秋の味覚」に挙げられることが多いサンマ。さて「味覚」は英語で何と言う?


まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「味覚」はどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをそれぞれアルファベット順に記載します。

「味覚」
インターネット上の主な英語訳
1. flavo(u)r
2. gustation
3. gustatory modality
4. gustatory perception
5. gustatory sensation
6. gustatory sense

7. palate
8. sense of taste
9. taste
10. taste perception
11. taste sensation
12. taste sense
訳語が見つかった辞書・サイト
bab.la(辞書)
Cheer up! English
ちゅいパラダイス
CUERBO(辞書)
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
Reverso Context(辞書)
U-FUL
weblio(辞書)
weblio 英会話コラム
WebSaru(辞書)
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「味覚 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、訳語がずらりと並びました。その中には「味」を意味する flavo(u)rtaste まで含まれています。「味覚」と「味」は同じ意味なのでしょうか? また、その他の訳語にはどのような意味の違いがあるのでしょうか?

以下では、今回訳語が見つかった辞書・サイトのほぼすべてが載せていなかった表現も含め、「味覚」の英語について分かりやすく説明します。

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「味覚」には6つの意味がある?

まず、「味覚」という日本語は国語辞書や日本語版ウィキペディアで「味を感じる感覚」や「食する物質に応じて認識される感覚」と説明されていますが、この「感覚」とは何でしょうか? 例えば、「このスパイシーな感覚がたまらない...」と言えばその「感覚」はスパイシー感 (ヒリヒリ感?) のことですが、このスパイシー感が「味覚」なのでしょうか? それともそのスパイシー感を知覚した舌の能力が「味覚」なのでしょうか?

広告などで「スパイシーな味覚をお楽しみいただけます」のような表現がありますが、この場合の「味覚」がスパイシーな「(味の) 感覚」のことであれば英語では (taste/gustatory) sensation「(知覚した) 味」であれば (perceived) taste になります(科学的には辛さは「味」ではないようですが)。なお、flavo(u)r は舌以外で感じる香りなども含めた味 (風味) を意味しますが、多くの人は taste と同じ意味で使います。

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↑「このスパイシーな感覚がたまらない...」とスパイシーな味覚を楽しむ男性。

一方、「あいつは鋭い味覚の持ち主だ」のような場合の「味覚」は「味を知覚する能力」のことですが、この味覚(力)を意味する英語が sense of taste や gustatory sense です(英英辞書で名詞の sense は「能力」を意味する faculty や ability という単語で説明されています)。gustatory は硬い表現のため普通は sense of taste を使うといいと思いますが、taste sense は自然な表現ではないため使わないほうがいいでしょう。

taste という名詞自体や gustation という硬い響きの名詞にもこの「味を知覚する能力」という意味はありますが、例えば "his taste" と言うと状況や文脈によっては日本語の「テイスト」や「センス」と同じく「彼の好み・趣味」という意味になってしまいます。また、gustation には「味わうこと」の意味もあります。

今回調べた英語学習サイトの中には 「味覚」を sense of taste とだけ説明しているものがありましたが、「味覚」にはこの「味の感覚」「知覚した味」「味を知覚する能力」という3つの意味に加え、以降で説明するように他に少なくとも3つの意味があるためそれに合わせて英語の表現を変える必要があると言えます。

秋の味覚 vs 味覚の秋

「秋の味覚」や「冬の味覚」という表現はテレビなどでよく使われますが、例えば「秋の味覚といえば?」という問いには味や感覚ではなく「サンマ」「松茸」「栗」など食べ物の名前を答えるのが普通のため、「味覚」の4つめの意味は「食べ物」だと言えるでしょう(飲み物もあるかもしれませんが、普通は食べ物を指すと思います)。つまり、「秋の味覚」や「冬の味覚」は「秋・冬が旬の食べ物」という意味のはずです。

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↑「ほら、母さんも早く冬の味覚を楽しもうよ!」
「あたしの味覚は年中ずっと同じだよ...」

実際、和英辞書で「秋の味覚」は autumn/fall fooddelicacy of autumntaste of autumn/fall のように食べ物(または味)を意味する単語を使って表現されています。「秋」にはイギリスでは今は普通使わない fall よりアメリカでも使う(詩的な感じの) autumn を使い、「珍味」や「ごちそう」と呼べるものであれば delicacy/delicacies of autumn、その他のものは autumn food(s) と表現するのがいいでしょう。

一方、語順が逆の「味覚の秋」は国語辞書で「食欲をそそられる秋」と説明されていますが、和英辞書では「飲食が楽しい秋」と解釈して "autumn which brings with it the pleasures of the table" のように訳しています。先ほどの「秋の味覚」のように「味覚」を「食べ物」と解釈すれば「味覚の秋」は「食べ物がおいしい秋」とも考えられるため、「味覚の秋」の「味覚」の英語は日本語の解釈次第で変わると言えるでしょう。

味蕾?

さて、「味覚」の5つめの意味は例えば「あんたの味覚おかしいよ」と言う場合の「味の感じ方」です(ただしこの場合の「味覚」は先ほどの「味を知覚する能力」と考えることもできます)。そしてこの「味の感じ方」という意味での「味覚」に該当する英語がやや硬い響きのある (taste/gustatory) perception です(これは「味を知覚する能力」を意味する場合もあります)。

この perception と違ってくだけた会話でもよく使われるのが今回調べた辞書・サイトのうち1つ (『実用・現代用語和英辞典』) しか「味覚」の訳語に載せていなかった taste buds です。これは味を感じ取るために舌の上に約5千~1万個も存在するつぼみ状の「味蕾 (みらい)」という器官のことですが、今の「あんたの味覚おかしいよ」であれば "There's something wrong with your taste buds" と表現できます。

Jan Vasek / JESHOOTS.com

↑「このシャンパン、グリーンティーみたいな味しない?」「あんたの味覚おかしいぞー」

口蓋?

最後となる「味覚」の6つめの意味は、例えば「これ、あなたの味覚に合うかしら?」と言う場合の「味の好み」です(「口に合う」のほうが正しい表現かもしれませんが、「味覚に合う」という日本語は和英辞書の例文でも使われています)。そして、この「味の好み」という意味での「味覚」が「口蓋 (こうがい)」という口の中の天井部分を意味する palate です(これには「味を見分ける能力」という意味もあります)。

今の「あなたの味覚に合うかしら?」であれば "I wonder if it will suit your palate" と表現できますが、料理専門家やワイン通が言いそうな表現のため普通はもっと自然な "I wonder if you'll like it" などの表現を使うほうがいいでしょう。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか?「味覚」という日本語を「1. 味の感覚」「2. 知覚した味」「3. 味を知覚する能力」「4. 食べ物」「5. 味の感じ方」「6. 味の好み」という6つの意味に分けて説明してきましたが、1と2、そして3と5と6はそれぞれ意味が似ていたり重なる部分もあるため英語ではあまり明確に分けて考えないほうがいいでしょう。

味覚の秋もそろそろ終わりですが、冬もおいしい旬の食べ物がたくさんあります。そんな味覚の冬にぜひあなたの味覚に合った冬の味覚を選び、その味覚や味覚を味わいながらあなたの味覚を日記やブログに書いてみてはいかがでしょうか?

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