オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第175回は「携帯(機器/端末/電話)」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
Rawpixel / Rawpixel.com
↑この中に「携帯機器」や「携帯端末」はいくつある? そして「携帯」と「機器/端末」はそれぞれ英語で何と言う?
まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「携帯機器」と「携帯端末」はそれぞれどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します(※どちらもほぼ同じ訳語が見つかったため1つにまとめています)。
インターネット上の主な英語訳
1. handheld device
2. mobile device/equipment
3. mobile terminal
4. portable device/equipment
5. portable terminal
DMM英会話なんてuKnow?
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
ご覧のとおり、「機器」の意味で使える device と equipment を1つにまとめると、主に5つの訳語が見つかりました。この2つの単語や「携帯」の部分に当たる mobile と portable の違いは一体何でしょうか?
以下では、アメリカとイギリスでの mobile の発音の違いや「携帯電話」の表現の違いも含め、「携帯(機器/端末/電話)」の英語について分かりやすく説明します。
Device と Equipment と Terminal の違い
まず、device は何かの目的のために作られた器具 (=簡単な器械や道具類) のことで、特に小さめの電子機器に多く使われます(カタカナの「デバイス」はこの電子機器の意味です)。そしてこの単語は可算名詞 (数えられる名詞) のため、「1つ」「2つ」と言いたければそれぞれ "a device" "two devices" と表現できます。
equipment は複数のもの(例えば複数の device)から成る装備や装置全体を意味します。device (器具)、tool (道具)、machine (機械) など個々のものと違って全体を指すこの単語は、不可算名詞 (数えられない名詞) のためその中の「1つ」と言いたい場合は「つ」に当たる piece を使って "a piece of equipment" と表現します(device と呼べるものであれば "a device" のほうが短くて言いやすく、具体的でもあります)。
terminal は「端末」を意味する単語ですが、携帯端末などの「端末」という日本語は本来の「通信の末端にある機器や装置」ではなく単に「本体」や「操作機」の意味と化しています(詳細は #83 『端末』の英語は本当に terminal? を参照)。「携帯端末」を mobile terminal や portable terminal と訳している辞書がいくつかありましたが、少なくとも普段の会話で携帯電話などの端末をそう呼ぶことはまずありません。
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↑「ほら、モバイルターミナルのほうが小さくて便利だと思いません?」「Terminal?」
Mobile と Portable の違い
では、アメリカでは「モゥブゥ」、イギリスでは「モゥバィゥ」のように発音する mobile (モバイル) とどちらの国でも「ポータボゥ」のように発音する portable (ポータブル) の違いは一体何でしょうか?
mobile が移動中も使えるもので portable は持ち運んだ後に使うもの(またはそのニュアンスを含む場合がある)と説明している日本語のウェブページもありますが、例えば移動中に音楽が聴ける機器でかつて流行った「iPod」は portable MP3 player、もっと昔の「ディスクマン/CDウォークマン」も portable CD player など mobile ではなく portable という形容詞が使われていました。
もともと mobile はそれ自身が動けたり車などに設置して移動中に使えるものも含む「移動可能」、portable は自分の手で楽に持ち運べる「携帯可能」を意味していたため、例えばノートパソコンを「携帯パソコン」と表現する場合は portable が使われてきました(今でも例えば小型軽量の「モバイルノート」は #118 『ノートパソコン (モバイルノート含む)』は英語で何と言う? で説明したとおり ultraportable と表現されます)。
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↑「え? じゃあ何でケータイは portable phone じゃなくて mobile phone なんだ?」
携帯電話は mobile phone と呼ばれますが(アメリカでは cell(ular) phone が普通)、これは車に装備された電話機などに使われていた「移動電話機」を意味する言葉で、その後登場した携帯電話は portable mobile phone (携帯可能な移動電話機) や単に portable phone と表現するのが本当は正しいですが、イギリスでは mobile phone、アメリカでは cell(ular) phone (セルラー式の電話機) が一般的な呼び名となりました。
このように mobile と portable という単語の使い分けには歴史的な背景があり、今は同じ意味で使われることが多いですが、この2語の違いを説明した最近の英語のウェブページによると移動中にインターネットが使えるワイヤレス接続可能な機器を mobile device、それができない機器を portable device と呼ぶ傾向があるようです(今はノートパソコンもモバイル機器と考えられることが多いと説明されています)。
なお、今回見つかった主な訳語には手で持ちながら使える機器を意味する handheld device という表現も含まれていますが、携帯電話の「端末」には同じく hand (手) という言葉を含む handset が使われることがあります(詳細は #98 『受話器』の英語は本当に receiver? を参照)。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? これで「機器」に使われる device と equipment の違いや「携帯」に使われる mobile と portable の違いが分かりやすくなったかもしれません。
今移動しながらこのブログをモバイルターミナル(...ではなくモバイルデバイス)でご覧になっている方は、mobile という単語が「移動可能」を意味することを記憶しながら新着順などのページにそのまま自分も「移動」して気になる投稿に目を通してみましょう...