#46 『マウスピース』は英語で何と言う?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第46回は「マウスピース」の英語についてです。

◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。

Atikh Bana / Unsplash.com

↑「マウスピースのお手入れを忘れずに」とクールにアドバイスしながらマウスピースと一緒に写真に写る男性。


まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「マウスピース」はどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。

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「マウスピース」
インターネット上の英語訳
1. embouchure
2. gumshield
3. mouthguard
4. mouthpiece
訳語を載せた辞書・サイト
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Imagict(辞書)
Linguee(辞書)
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「マウスピース 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、4つの訳語が見つかりました。この中で圧倒的に多かったのはもちろん mouthpiece です。ただ、マウスピースには種類がいくつかあり、面倒なことに多くの別名を持つタイプもあります。

以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった表現も含め、「マウスピース」の英語について分かりやすく説明します。

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Mouthpiece とは

まず、mouthpiece とは口(と鼻)にかざす/当てるか挿入して使う部分のことで、例えば酸素マスクの口と鼻にかぶせる部分や管楽器などの口にくわえる部分に該当します(口ではなく耳の場合は earpiece)。

このような本体の一部としてのマウスピースではなく、全体を口の中に装着するマウスピースとして日本で最も知られているのがボクシングやアメリカンフットボールで歯などを保護するために使われるマウスピースです。また、歯ぎしり防止や睡眠時無呼吸症候群の軽減のために口の中に装着するものもマウスピースの一種です。

このようにマウスピースには種類がありますが、英語ではそれぞれどう表現されているのでしょうか?

it's me neosiam / StockSnap.io

↑耳に当てる部分が earpiece で口に当てる部分が mouthpiece。スマホはもうどこがその部分か分からない?

Embouchure, Gumshield, Mouthguard

さて、今回見つかった4つの訳語のうち管楽器などのマウスピースを意味するのが embouchure で、日本語でも「アンブシュール」と呼ばれているようです。

一方、スポーツ(特にボクシング)のマウスピースに使われるのが gumshield (歯茎を保護するもの) で、日本語でも「ガムシールド」と呼ぶことがあるようです(普通は「マウスピース」と呼ぶと思います)。ただ、このように歯やその周辺を保護するタイプは mouthguard (口を保護するもの) が最も一般的な表現です。

また、歯ぎしり防止用のタイプも一般的に mouthguard と呼ばれ、日本でも「歯ぎしりマウスガード」などの名称の商品がありますが、スポーツ用のタイプと区別するために別の表現が使われることもあります。

LightField Studios / Shutterstock.com

↑この空手ファイターが手にしているマウスピースは歯ぎしり防止用にそっくり。(別に間違えて買ったわけではない...)

多くの別名を持つ Mouthguard

英語版ウィキペディアの『Mouthguard』のページには、歯や歯茎の保護に使うマウスピースの名称としてこの mouthguard の他に mouth protectorgumguardnightguardocclusal splintbite splintbite plane など多くの表現が見られます(他にも bite guard や bite plate と呼ぶ人もいます)。

この中で歯ぎしり防止用のマウスピースの表現として知名度が高いのが nightguard で、日本でも「ナイトガード」として売られていたり、この名称を使う歯科もあるのでご存知の方も多いかもしれません。

この歯ぎしり防止用のマウスピースは就寝中に装着するため night という表現が合っており(昼間に寝る人もいますが...)、mouthguard と違ってスポーツ用と誤解されることもありません。また、睡眠時無呼吸症候群用のマウスピースも就寝中に装着しますが、guard (保護する) という表現はこの症状には合いません。

用途が分かる単語を付けて意味を明確にする

ただ、この nightguard は単に「夜間に守ってくれるもの」という意味のため、例えば友人に "That store doesn't have nightguards" (あの店に歯ぎしり防止用のマウスピースはないよ) と言うと「そうか、あの店には夜間警備員がいないのか。じゃあ忍び込んでやるか?」などとジョークで返されるかもしれません。

New Africa / Shutterstock.com

↑不審者を発見し、無線機のマウスピースに話しかける夜間警備員。

また、日本も含め大人用おむつの商品の名称やパッケージの一部にこの nightguard という表現を使っている国があり、これも夜間に守ってくれる製品という意味で正しい表現と言えます。

そのため、歯ぎしり防止用ということを明確にするには dental (歯(科)の) を付けて dental nightguard や dental mouthguard と表現し、スポーツ用のものは sports mouthguard と表現するのがいいでしょう。なお、mouthguard/nightguard は guard の前にスペースを入れて2語に分けても意味は変わりません。

進化するデンタルマウスピース

歯に装着するこのようなマウスピースは進化を続けており、歯のホワイトニングに使われるタイプもあれば歯列矯正用として「Invisalign」などの商品もあります。

この歯列矯正用のタイプは歯をきれいに「並べる (align)」のが目的で、透明色のため英語では clear alignerinvisible aligner と呼ばれています(Invisalign という商品名は invisible と align を合わせた混成語だと思います)。これらの表現もこの機会に覚えておくといいかもしれません。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか? nightguard や aligner も「マウスピース」の英語として多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。

気づかないうちに歯をすり減らしてしまう恐ろしい歯ぎしり。一生お付き合いする大切な歯を守るためにもこの機会に歯医者さんでナイトガードを作ってもらってはいかがでしょうか?

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