#53 「うがい薬」の英語は本当に mouthwash や gargle?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。
第53回は「うがい薬」の英語についてです。

注意 言葉は時代、状況、文脈などによって変化する場合があることを留意してお読みください。また、以下の内容はアメリカとイギリス以外の英語圏には該当しない場合があります。

Iakov Filimonov / Shutterstock.com

↑「のどに一番効くタイプはどれかしら?」とマウスウォッシュの各商品を比較するカゼ気味の女性。


まず、カゼの予防や口の中の粘膜の炎症を鎮める作用があるとされている「うがい薬」はオンライン和英辞書や英語学習サイトでどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをそれぞれアルファベット順に記載します。

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「うがい薬」
インターネット上の主な英語訳
1. collutorium
2. gargle
3. mouthwash
訳語が見つかった辞書・サイト
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
eigonary(辞書)
English-info
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
みんなで作るネーミング辞典(辞書)
Reverso Context(辞書)

weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
Yahoo!知恵袋

※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「うがい薬 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

※フィリピンでのうがい薬やうがいの英語表現を説明したサイトもありましたが、当ブログはアメリカ英語とイギリス英語に限定しているため一覧には含めていません。

ご覧のとおり、主に3つの訳語が見つかりました。日本ではうがい薬とマウスウォッシュは別物ですが、「うがい薬」の英語に mouthwash が含まれているのはなぜでしょうか?

以下では、今回調べた辞書・サイトで見落とされていた点も含め、「うがい薬」の英語について分かりやすく説明します。

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日本のマウスウォッシュ

まず、「うがい」とは液体をのどで「ガラガラ」やることだと思いますが、主な国語辞書では「口やのどをすすぐこと」とされています。口だけすすいでも「うがい」なのか分からない曖昧な説明ですが、少なくとも日本のマウスウォッシュは歯の周辺で「クチュクチュ」やるもので、使い方の説明にも「うがいをしてください」ではなく「すすいでください」と書いてあるため「うがい」はやはりのどで「ガラガラ」やることだと思います。

日本のマウスウォッシュは口の中の殺菌や口臭の予防が主な目的の「洗口液」と称される従来のタイプ、そして歯磨きまでできる新しい「液体歯磨き」の2タイプに分かれますが、以降で説明するマウスウォッシュはすべて「洗口液」のことです。そしてアルコールを含むマウスウォッシュは刺激が強く、とても「うがい」などできるようなものではありません(実際に試してみたところ1秒も耐えられませんでした...)。

アメリカやイギリスのマウスウォッシュ

一方、アメリカやイギリスのマウスウォッシュには驚くことに gargle (うがい) するよう指示が書かれているものがあり、マウスウォッシュの使い方を実演した英語のYouTube動画でも確かに出演者が「クチュクチュ」した後に「ガラガラ」やっています。日本で売られている製品よりも刺激が弱いのかそれとも日本人よりものどが強いのかは不明ですが、和英辞書で「うがい薬」の英語に mouthwash が載っているのはこのためです。

blambca / Shutterstock.com

↑だいぶ苦しそうに見えるが、日本と違ってマウスウォッシュでうがいまでやるのである。

日本でも「デンタルリンス」などの表現があるように、英語でも mouthwash の他に mouth rinse や oral rinse などの呼び名があります。これらは成分や使用タイミング(歯磨きの前か後か)などの点でそれぞれ違うと説明しているウェブサイトもありますが、どれくらいの人がそのことを知っているのかは分かりません。

mouthwash はその名が示すとおりのどではなく口をケアする製品ですが、のどの感染症の予防や対処をしてくれる殺菌・抗菌成分を含むタイプが多いため「マウスウォッシュ兼うがい薬」のような存在になっているのだと思います。一方、主にのどをケアするのが目的(またはのど専用)のうがい薬もありますが、ショッピングサイトを見る限り日本と違って処方箋なしで買える市販薬のうがい薬はほとんどないようです。

「うがい薬」は英語で何と言う?

では、日本で一般的に市販されている医薬品 (医薬部外品も含む) の「うがい薬」は英語で何と言うのでしょうか? 今回見つかった訳語の2番目にあるように「うがいする」という動詞の gargle をそのまま名詞として使えますが、これは例えば英英辞書サイトの Dictionary.com で "any liquid used for gargling" (うがい用のあらゆる液体) と説明されているように厳密には「うがい薬」ではなく「うがい液」です。

のどの痛みには温かい塩水や紅茶でうがいをするのが効果的とされていますが、これらの液体もうがいをする目的で使われる場合は「うがい液」のため gargle です。ただ、医薬品ではないこれらの液体も効果があるという意味では「薬」と言えるため、うがいをすることで症状を緩和・改善できる液体は医薬品かどうかに関係なくすべて「うがい薬」なのかもしれません。

Thomas Foldes / Shutterstock.com

↑「俺ナチュラル派だから薬は嫌なんだよ」「紅茶だから安心して早くガラガラしなさ~い」

一方、医薬品のうがい液をその他のうがい液と区別して英語で表現する必要がある場合は、「薬用の」という意味の medicated を付けて medicated gargle と表現するのが適切です。今回調べた辞書・サイトで「うがい薬」の英語にこの表現を載せているものはありませんでしたが、通常は gargle と表現するだけで処方薬や市販薬のうがい薬(ただしマウスウォッシュを含む可能性も有)と解釈されるでしょう。

なお、今回調べた辞書・サイトの1つ(『weblio』)だけが載せていた collutorium は、mouthwash と同じ意味ですが医学用語のため普段の会話などでは使わないほうがいいでしょう。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか? うがい薬は口よりものどのケアを目的としているため、口の中の殺菌や口臭の予防など口のケアが主な目的の mouthwash を「うがい薬」の英語として載せるのは適切でないように思います。

ドラッグストアなどにお勤めの方は、外国人の買い物客に "Excuse me, where are mouthwashes?" と尋ねられることがあるかもしれません。その際は「クチュクチュ」「ガラガラ」のジェスチャーをしながら念のためマウスウォッシュとうがい薬のどちらなのかを確認するのがいいでしょう。