#36 「マドラー」の英語は本当に muddler?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。
第36回は「マドラー」の英語についてです。

注意 言葉は時代、状況、文脈などによって変化する場合があることを留意してお読みください。また、以下の内容はアメリカとイギリス以外の英語圏には該当しない場合があります。

Jakub Kapusnak / StockSnap.io

↑後方にさりげなく写る「マドラー」と呼ばれる撹拌棒(かき混ぜ棒)。本物のマドラーがあれを見たら怒るだろう。


まず、コーヒーやカクテルなどを飲むときにかき混ぜる目的で使われる「マドラー」はオンライン和英辞書や英語学習サイトでどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをそれぞれアルファベット順に記載します。

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「マドラー」
インターネット上の英語訳
1. muddler
2. stir stick
3. stirrer
4. swizzle stick
訳語が見つかった辞書・サイト
アメリカ人と結婚してはみたけれど。。
bab.la(辞書)
カナダ学校生情報
浮世逍遥録
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
ケント・ギルバートの知ってるつもり
Linguee(辞書)
村上春樹を英語で読む
weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「マドラー 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、4つの訳語が見つかりました。このうちコラム/ブログ系サイトを除いた辞書サイトの半数以上が最初に載せていたのが muddler です。「マドラー」は英語で何かと言えばそれは確かに muddler なのですが、その場合の「マドラー」は冒頭の写真のようなマドラーとは別物です。

以下では、飲み物をかき混ぜるのに使われるその他の棒状のアイテムの英語名も含め、「マドラー」の英語について分かりやすく説明します。

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Muddler とは

まず、日本語版ウィキペディアの『マドラー』のページにさりげなく書いてありますが、英語の muddler はカクテルを作るときにハーブや果物を潰すために使われる次のような太い棒を意味します。

Andrey Trush / Unsplash.com

↑これが本物のマドラー(ステンレス製もあり)。こんな太い棒でコーヒーをかき混ぜろと言うのか?

アメリカやイギリスではカクテルを作る人以外でこの muddler という単語を知っている人は少なく、もちろんコーヒーやカクテルをかき混ぜるのに使うあの「マドラー」にこの言葉が使われることもありません。

この本物のマドラーは日本のショッピングサイトで「マドラー」や「撹拌棒」として販売されている場合もあれば、偽者のマドラーと区別するために「果物粉砕棒」などの名称が使われている場合もあります。

飲み物をかき混ぜるのに使う棒状のアイテム

さて、日本で「マドラー」と呼ばれているあの細い棒も含め、飲み物をかき混ぜるのに使われる棒状のアイテムには次のような種類があります。


1. 砂糖を入れてかき混ぜるのに使う小さいスプーン

この小さいスプーンには coffee spoon と teaspoon の2種類があり、teaspoon のほうが一回り大きいとされています。

JanBaby / Pixabay.com

↑これが coffee spoon。

pompi / Pixabay.com

↑coffee spoon よりも一回り大きいとされる teaspoon。(この角度ではよく分からない...)


2. 単にかき混ぜるのが目的の長いスプーン

カクテルを作るときに使う長いスプーンは bar spoon、アイスティーなどに入れた砂糖などをかき混ぜるのに使う長いスプーンは iced tea spoon や soda spoon と呼ばれているようです。これらのスプーンは容器の中のものを混ぜるのが目的のため、mixing spoon という名称で販売されている場合もあります。

Maksim Fesenko / Shutterstock.com

↑グラスに対してスプーンが長すぎる気がするが、これが bar spoon だ。


3. 日本で「マドラー」と呼ばれている撹拌棒

この棒は木製であればアイスキャンディーの持ち手のような平たい板、プラスチック製であれば先端が超小型のスプーン状のものから持ち手の部分がいろいろな形をしたものまであり、バラエティーに富んでいます。そしてこれらの「マドラー」は英語で stirrerstir stick、または swizzle stick と呼ばれています。

英語版ウィキペディアの『Swizzle stick』のページによると swizzle stick の語源は Rum Swizzle(バミューダのカクテル)をかき混ぜる特殊な棒とのことですが、今ではこの表現は一般的なカクテルだけでなく普通のホットコーヒーなどお酒ではない飲み物をかき混ぜる棒にまで使われることがあります。

ただ、この swizzle stick がどのような形の棒なのか知らない人もいたり、ホットコーヒーなどをかき混ぜる木製のマドラーはそう呼ばないと言う人もいるため、飲み物のタイプに限らず「かき混ぜる (stir)」ことが目的のこれらの「マドラー」はすべて stirrer または stir stick と呼び、swizzle stick は使うとしてもプラスチック製のマドラーにだけ使うのがいいでしょう。

Peter Heeling / Skitterphoto.com

↑これがホットドリンク用の木製マドラー。

Warren Price Photography / Shutterstock.com

↑カクテル用のプラスチック製マドラー。これは見た目がかなりシンプルなタイプ。


4. プラスチック製または紙製の細い管

これはもちろん straw です。ストローも一応かき混ぜるのに使える棒と言えるでしょう。

Peter Heeling / Skitterphoto.com

↑マドラーと間違えそうな極細ストロー。これで氷入りの飲み物をかき混ぜたら折れてしまう?

以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回調べた辞書・サイトのうちコラム/ブログ系サイトはすべて日本語の「マドラー」と英語の muddler が別物だということを説明していましたが、辞書サイトにはその点を説明しているものがありませんでした。

この「マドラー」と呼ばれる細い撹拌棒は英語の stirrer に似せて「スターラー」と呼ぶと何となくだらしない響きがするため、stirrer と muddler をミックスさせた「ストラー」と呼ぶことを提案しようと思ったのですが、マドラーとストローが一体化した同名の商品があることが判明したため廃案となりました(それにストローで飲む人のことも「ストラー」と呼びたいですので...)。