#65 「マフラー」の英語は本当に muffler や scarf?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。
第65回は「マフラー」の英語についてです。

注意 言葉は時代、状況、文脈などによって変化する場合があることを留意してお読みください。また、以下の内容はアメリカとイギリス以外の英語圏には該当しない場合があります。

huweijie07170 / Pixabay.com

↑「あたしどうしたらいいんだろう...自分が身に付けてるのがマフラーかスカーフか分かんない」(それは闘魂タオルです)


まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「マフラー」はどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをそれぞれアルファベット順に記載します。

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「マフラー」
インターネット上の主な英語訳
1. muffler
2. scarf
3. silencer
訳語が見つかった辞書・サイト
ABCアカデミー
AEON スクールブログ
bab.la(辞書)

CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
デュープラー英語学院・オフィシャルブログ

ECCフォリラン!
英辞郎 on the WEB(辞書)

Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Imagict(辞書)
Linguee(辞書)
Perky
Reverso Context(辞書)

産業翻訳だよ! 全員集合(辞書)
鈴木杏樹のいってらっしゃい
weblio(辞書)

WebSaru(辞書)
Yahoo!知恵袋
Yumi's English Boot Camp

※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「マフラー 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、主に3つの訳語が見つかりました。「マフラー」には首に巻く「えり巻き」と車やオートバイの排気口に装着されている「消音器」の2つの意味がありますが、上の訳語はすべて正しいのでしょうか?

以下では、今回調べた辞書・サイトで見落とされていた点も含め、「マフラー」の英語について分かりやすく説明します。

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「マフラー」は和製英語ではない

まず、3つのサイトで首に巻く「マフラー」を和製英語と断言しているコメントがありましたが、アメリカでもイギリスでもこのマフラーに以前は muffler という単語も使われていたため和製英語ではありません(どちらの国でも地域などによって今でもそう呼ぶ人はいるようです)。

また、「死語に近いので海外ではほとんど通じない」というコメントも見られましたが、かつてイギリスの植民地で今はアメリカの次に英語を話す人口が多いインドのショッピングサイトでは、男性用マフラーのカテゴリーに muffler が使われています。日本人は欧米のことを「海外」と言う傾向がありますが、「海外」とは日本以外のすべての国を意味することを忘れないようにしましょう。

AS photo studio / Shutterstock.com

↑「どう? この muffler 似合う?」(スーツもメガネもヒゲもとてもオシャレです)

マフラー ≠ Scarf

さて、「マフラー」は和製英語ではないものの、首に巻くマフラーにはアメリカでもイギリスでも日本語の「スカーフ」の元になっている単語の scarf (複数形は scarves) を使うのが今は普通です。そのため、この意味の「マフラー」の英語に muffler を載せている和英辞書は、それが古い表現だということを補足する必要があるでしょう(今回調べた辞書の中にこの点を説明しているものはありませんでした)。

ただ、だからといってマフラーを単に scarf としていいのでしょうか? 日本では厚めの防寒用が「マフラー」で薄手のおしゃれ用が「スカーフ」と呼び分けるのが普通で、マフラーはあくまで scarf の1つのタイプにすぎません。もし「マフラーは英語で scarf です」と説明してしまったら、例えば「スカーフじゃなくてマフラーが欲しかった」と言いたいときに "I wanted a scarf, not a scarf" となってしまうではありませんか?

「マフラー」は英語で何と言う?

さて、私たちが「マフラー」と呼ぶ厚手のえり巻きは scarf の1つのタイプのため、そのタイプが英語で何と表現されているのかを調べればいいことになります。

英語版ウィキペディアの『Scarf』のページではこのタイプを thick knitted scarf (厚手の編んだスカーフ) と表現していますが(knitted は knit でも可)、織ったものであれば thick woven scarf になるためどちらにも当てはまるよう単に thick scarf でいいでしょう。また、マフラーは防寒用で素材がウールのものが多いため wool/wool(l)en scarf と表現してもいいかもしれません(woollen は主にイギリスでのスペルです)。

その他、winter scarf (冬用のスカーフ) という表現も英語のショッピングサイトなどで使われています。春や秋でもマフラーをする人はいますが、「冬」と表現することで防寒用ということが明確になります。今回調べた辞書・サイトで「マフラー」の英語にこれらの表現を載せているものはありませんでした。

Teddy Rawpixel / Rawpixel.com

↑scarf と bandanna を身に付け muffler が装着されたスクーターで飛ばすカップル。

なお、車やオートバイの排気口に装着されている消音器の「マフラー」はアメリカでは muffler ですが、イギリスでは silencer と表現するのが普通です。muffle という動詞には「音を小さくするために包む」という意味があり、「静けさ」の意味で知られる名詞の silence には「静かにさせる」という動詞の意味もあるため、mufflersilencer がどちらも「消音器 (静かにさせるもの)」を意味するのは分かりやすいと思います。

この silencer を「マフラー」の英語に載せている和英辞書でそれが主にイギリスで使う表現だということを記載しているものは2つだけでした(『英辞郎 on the WEB』『goo』)。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回説明した首に巻くマフラーの適切な英語訳が多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。

もし英語の先生が「マフラーは英語で scarf です」と説明していたら、「本当にそうでしょうか?」と疑問を投げかけて熱い議論を繰り広げてみてはいかがでしょうか?(このページを見せるほうが話が早いと思いますが...)

※格子柄のマフラーの英語表現も含め、スカーフの英語については #81 「スカーフ」の英語は本当に scarf? で詳しく説明しています。