#59 『マルチカバー』は英語で何と言う?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第59回は「マルチカバー」の英語についてです。

◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。

Peter Cripps / Shutterstock.com

↑用途が広くて便利な「マルチカバー」。さて英語では何と言う?


まず、ベッドカバーやソファーカバー、そしてテーブルクロス、ラグ、カーテンなど用途の広い大きな布の「マルチカバー」はオンライン和英辞書や英語学習サイトでどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。

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「マルチカバー」
インターネット上の英語訳
1. multi use cover
2. multiuse cover
訳語を載せた辞書・サイト
産業翻訳だよ! 全員集合(辞書)
Weblio(辞書)
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「マルチカバー 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、「マルチカバー」の英語を載せた辞書・サイトは2つ、訳語もほぼ同じものが2つだけ見つかりました。これらの表現は英語圏で使われているのでしょうか?

以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった表現も含め、「マルチカバー」の英語について分かりやすく説明します。

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英語圏にマルチカバーはある?

まず、「マルチカバー (multi cover)」という表現は英語として正しくありませんが、multi-use cover (多用途カバー) や multi-purpose cover (多目的カバー) であればマルチカバーと同じ意味になります(今回見つかった訳語のようにハイフンの箇所はスペースにしたり、1語につなげることもできます)。また、general-purpose cover (汎用カバー) と表現しても同じ意味になります。

ただ、アメリカやイギリスには「マルチカバー」という商品カテゴリーはないため、実物や写真がない状況では large (大きい) や cloth (布の) などの単語も使わないとサイズや素材がイメージできないかもしれません。

なお、今回のマルチカバーとは全く違うタイプの製品ですが、スカーフや車の座席カバーとしても使える授乳ケープは multi-use nursing cover などの名称で売られています。

スロー?

さて、マルチカバーは部屋の雰囲気を変えるためにソファー全体にかぶせたり、見苦しい(?)ベッドを隠すためにベッドカバーとして使うことが多いと思いますが、アメリカやイギリスではそのようなカバーを必要としている人がいるとしても、それを multi-use cover や multi-purpose cover とは普通呼びません。

ベッドの外側に掛ける上掛け (bedcover) としては bedspreadcoverletquiltthrow blanket などがありますが、これらは就寝中も掛けておく寝具のため普通はマルチカバーより生地が厚めです。この中で椅子やソファーでも活躍するのが throw blanket で、略して throw と呼ばれています(日本では「スロー」と略すと「何が遅いんですか?」と誤解されそうなためか「スローケット」と略すようです)。

Alena Ozerova / Shutterstock.com

↑猫にも好評の throw。折り畳んでいるため巨大マフラーにも見える。

この throw blanket は通常のブランケットよりも小さく、寒くなったらすぐにひざや肩に掛けて使えるよう普段から椅子やソファーに掛けたり放り投げておくものです(「放り投げる」という動詞の throw を名詞化した名称です)。上の写真のようにフリンジが付いたものが多く、タペストリー風などデザイン性の高いものもあり、ベッドでは二つ折りまたはそのまま足・下半身エリアの掛け布団の上に載せて使われます。

この throw blanket より大きかったり薄くてもソファーカバーやその他の目的で使える布は(少なくともイギリスでは)throw と呼べるため、「マルチカバー」は単に throw と表現してもいいのかもしれません。

Ake / Rawpixel.com

↑マルチカバー...ではなく throw を掛けてソファーで熟睡する人。

ベッドの上掛けをマルチカバーとして使う

先ほど挙げた寝具の中の quilt は、異なる形や色の布をはぎ合わせた(または1枚の)表地と1枚の裏地の間に中綿を詰めて刺し縫いした薄手の上掛けです(イギリスでは #15 『敷き布団』『掛け布団』『布団(全体)』は英語で何と言う? で説明したとおり厚手の掛け布団の duvet を意味します)。この quilt には壁掛け、テーブルクロス、ピクニックシートなどに使えるものもあるため、これもマルチカバーに似た存在と言えます。

melnikof / Shutterstock.com

↑「ベッドにこたつカバー!?」と言いたくなるがこれは quilt。

また、先ほどの bedspread (ベッドから床まで届く大きな上掛け) や coverlet (bedspread と同じ意味または少し小さめのもの) にも薄手で軽量のものがあるようなので、これも日本のマルチカバーと同じくソファーカバーやクリップで留めるカーテンとしても使えるかもしれません。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか?「マルチカバー」が多くの和英辞書に載り、該当する商品カテゴリーがアメリカやイギリスにはないことも記載されるのを期待したいと思います。

マルチカバーをソファーカバーにされている方は、寒くなったらそのままソファーから外してブランケット代わりに羽織ってみるといいかもしれません(大して温かくならないと思いますが...)。

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