#55 「ニーズ」の英語は本当に needs や demands?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。
第55回は「ニーズ」の英語についてです。

注意 言葉は時代、状況、文脈などによって変化する場合があることを留意してお読みください。また、以下の内容はアメリカとイギリス以外の英語圏には該当しない場合があります。

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↑「デザートにストロベリーパフェを食べたいというお客様のニーズにも応えないと...」「それってニーズなのか?」


まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「ニーズ」はどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをそれぞれアルファベット順に記載します。

「ニーズ」
インターネット上の主な英語訳
1. demand(s)
2. need(s)
3. requirement
訳語が見つかった辞書・サイト
bab.la(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
Reverso Context(辞書)
weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「ニーズ 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、主に3つの訳語が見つかりました。「ニーズ」の英語は needs と言いたいところですが、そう表現するのが適切ではない場合もあります。

以下では、その場合に使えるいくつかの表現も含め、「ニーズ」の英語について分かりやすく説明します。

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「ニーズ」とは

まず、「ニーズ」は国語辞書で「必要。要求。需要。」のように説明されていますが、これは本当に正しいのでしょうか? 例えば、「学生のニーズを探る」ではなく「学生の要求を探る」と表現すると「要求しているのだから探る必要がないではないか」と言いたくなってしまいます。同じく「学生の必要を探る」と表現するのも不自然なため、「ニーズ」は「必要としているもの」と説明するほうがいいのではないでしょうか?

また、例えば友達に「君のニーズは何?」のように聞く人は普通いないため、この言葉は主にサービスなどの提供者側が使うものと補足する必要もあるでしょう。

一方、「需要」は商品に対して使われる場合は「必要/欲しい」という気持ちに加えて「買えるお金がある」ことも意味するため、必要としていることだけを意味する「ニーズ」とは少し違います。

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↑「さあ、あなたたちの要求を教えてちょうだい」と生徒たちのニーズを探る校長先生。

「○○したい」というニーズは Need(s), Demand(s), Requirement(s)?

さて、冒頭の写真の「ストロベリーパフェを食べたいというお客様のニーズ」のような場合の「ニーズ」は英語で何と表現すればいいのでしょうか?「したいというニーズ」という日本語はインターネット上でも多く見られますが、英語ではこの「ニーズ」を need(s) と表現しないほうがいい場合があります。

そこで、まずは今回訳語が見つかった辞書のほとんどが「ニーズ」の訳語として載せていた need(s)、いくつかの辞書が載せていた demand(s)、そして1つだけが載せていた requirement(s) の違いを簡単に説明したいと思います。

need(s)
"a need" や "two needs" のように可算名詞 (数えられる名詞) として使う場合の need を「欲しいものや必要なもの」と説明している英英辞書もありますが、違和感を感じられたくなければ「必要だから欲しい/したい」と言えるレベルのもの以外は need(s) と表現しないほうがいいでしょう。先ほどのストロベリーパフェの例であれば、単に食べたいという欲求に思えるため別の表現を使うほうが適切と言えます。

なお、必要としているものが1つだけの場合は needs ではなく単数形で need と表現すべきですが、日本語では例えば「御社の一番のニードを教えていただけませんか?」などと言うと相手に「ニード?」と不思議な顔をされてしまうため、私たちは使い慣れた「ニーズ」という複数形を使うしかないのでしょう。

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↑「御社の一番のニードを教えていただけませんか?」「ニード?」

demand(s)
これは可算名詞 (数えられる名詞) として例えば "their demands" と表現すると「(権利としての) 要求」などもっと強い意味になってしまい、不可算名詞 (数えられない名詞) として "their demand" のように表現しても先ほどの「需要」と同じく「必要/欲しい」という気持ちに加えて「買えるお金がある」ことも意味するため、「ニーズ」の英語として使う必要は特にないでしょう。
requirement(s)
例えば「仕事で英語を話せるようになる必要がある」という人が「そのためにはまず英文法を覚える必要がある」と考えた場合、1つめの「必要」が本当のニーズのため need、2つめの「必要」は「必要条件」のため requirement になります。ただ、ネイティブスピーカーでもこの違いを知らない人が多いようなので、ニーズを requirement(s) と表現しても違和感は持たれないかもしれません。

デザイアーズ? ウォンツ? ウィッシズ?

さて、先ほどのストロベリーパフェの例のように単に欲求を満たしたいと思われる場合は need(s) と表現しないほうがいいと説明しましたが、これはそもそも単なる欲求や(単に欲しい場合の)要望まで「ニーズ」と表現する日本語側に問題があると思います。つまり、ストロベリーパフェの例であれば「ニーズ」ではなく「要望 (またはリクエスト)/希望」や「気持ち/願い」などの表現を使うほうがいいでしょう。

そしてこれらを英語で表現すると、「要望/希望」は request(s)、「(したい)気持ち/願い」は desire(s)want(s)、または wish(es) になります。この中で求める・望む気持ちがものすごく強いのが desire(s) で、それより弱い場合は「求めている」のであれば want(s)、「願っている」のであれば wish(es) と覚えるのがいいと思います。そして request(s) は「必要/欲しい」という気持ちを相手に伝えたものです。

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↑「もっと美しくなりたい」というお客様たちのデザイアーズを満たすサロンスタッフ。

「応える」や「満たす」に使われる動詞

最後に、「ニーズ/要望に応える」「欲求を満たす」「願いをかなえる」などの「応える」「満たす」「かなえる」によく使われる動詞を使ってここまでの例のいくつかを少しアレンジして例文にしたいと思います。

We should meet the customers' requests to serve strawberry parfaits for dessert.
(デザートにストロベリーパフェを出してほしいというお客様たちの要望に私たちは応えるべきだ。)
I can't fulfill his need to be able to speak English fluently.
(英語を流暢に話せるようになる必要があるという彼のニーズを私は満たすことができない。)
The salon staff satisfied the customer's desire to be more beautiful.
(もっと美しくなりたいというお客様の願望をサロンスタッフはかなえてあげた。)
他にも似た意味を持つ動詞はありますが、普通はこの3つのどれかを使えばいいでしょう。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回説明した「ニーズ」の英語訳の意味の違いや日英表現のギャップが多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。

今後は「ニーズ」というカタカナ英語を使う前に一歩立ち止まり、それが本当に「ニーズ」なのかを考えるニードがあるかもしれません。

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