オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第118回は「ノートパソコン」と「モバイルノート(パソコン)」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
Felix / Rawpixel.com
↑スマホは smartphone でタブレットは tablet。ではノートパソコンやモバイルノートは?
まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「ノートパソコン」と「モバイルノート(パソコン)」はそれぞれどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
1. book-size personal computer
2. lappy
3. laptop (computer/PC)
4. note PC / note personal computer
5. notebook (computer/PC)
6. notebook-size(d) (personal) computer
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英辞郎 on the WEB(辞書)
エイコミュ
English Hacker
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
goo ランキング
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
Reverso Context(辞書)
青春English部
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
インターネット上の英語訳
mobile note
Weblio(辞書)
ご覧のとおり、「ノートパソコン」は主に6つの訳語が見つかりましたが、圧倒的に多かったのは3の laptop (computer/PC) と5の notebook (computer/PC) です。どちらも同じ意味なのでしょうか? また、「モバイルノート(パソコン)」の英語は本当に mobile note なのでしょうか?
以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった表現も含め、「ノートパソコン」と「モバイルノート」の英語について分かりやすく説明します。
「ノートパソコン」は正しい英語?
まず、「ノートパソコン」は6の notebook-size(d) (personal) computer (ノートサイズの(パーソナル)コンピューター) を略した言葉ですが、英語では notebook computer/PC や単に notebook と略し、"The notebook has two USB ports" (そのノートパソコンにはUSBポートが2つある) のように表現します。
この notebook を note と略すと「ノート」ではなく「覚え書き (メモ)」「注釈」「音符」などの意味になってしまうため、4の note PC と note personal computer はどちらも誤りです。これらを訳語に載せているだけでなく、「本」サイズのパソコンを意味する1の book-size personal computer を「主な英訳」として載せている辞書が1つありましたが(『Weblio』)、少なくとも現在はそう表現することはまずありません。
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↑本と違ってノートは薄いのが普通。だから book computer ではなく notebook computer なのだ。
一方、今回同じくらい多く見つかった laptop (computer/PC) もノートパソコンに使われる言葉で、日本語でも「ラップトップを買った」のように表現する人はいると思います。lap は座ったときの腰~ひざの平らな部分を意味する単語で、desktop (computer/PC) (デスクトップパソコン) と違って座った状態で lap の top (上面) に載せて使えるパソコンだから laptop と呼ばれています。
なお、personal computer という言葉がすべてのパソコンを意味するのに対し、その略の PC は "PCs and Macs" (WindowsとMacのパソコン) のようにWindowsパソコンの意味で使われることが多くあります。
Notebook と Laptop の違い
では、ノートパソコンを意味する言葉としての notebook と laptop の違いは一体何でしょうか? 主に次の2つの考え方があります。
B. サイズに関係なく laptop も notebook もノートパソコンで、laptop のほうが一般的な表現。
Aはこの2語の昔の使い方を今でもしている人で、Bはこの2語が(今では)全く同じ意味で使われていることを知っている人です。現在の世界シェア1~3位のパソコンメーカーのアメリカとイギリスの公式ウェブサイトではいろいろなサイズを含むノートパソコンのカテゴリーが単に "Laptops" となっており、ユーザーもノートパソコンを laptop と呼ぶほうが普通のため、notebook という表現は特に使う必要はないでしょう。
なお、laptop の場合は computer/PC を省いて例えば "I bought a laptop" (ノートパソコンを買った) と表現するのが普通ですが、notebook の場合は省略すると紙のノートと誤解される可能性があります。また、1つの辞書だけが載せていた口語の lappy は、一般的な表現ではないので使わないほうがいいでしょう。
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↑notebook-size と呼ぶにはやや大きすぎるノートPCを laptop に載せて take notes する人。
「モバイルノート」は英語で何と言う?
最後は、小さめ・軽量・薄型で持ち運びに便利とされる「モバイルノート(パソコン)」の英語についてです。
ここまでの説明を読めば分かるとおり、今回見つかった訳語の mobile note は「モバイルな覚え書き/注釈」などを意味する誤った表現のため使えません(これも『Weblio』が載せていました)。mobile notebook であれば「モバイルノートパソコン」と解釈できますが、ノートパソコンはすべて持ち運びができるためこの表現では違和感があります(それにパソコンの場合は mobile ではなく portable と表現するほうが普通です)。
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↑小さめで軽量だから「モバイル」と呼びたい気持ちは分かるが...
小さめ・軽量のノートパソコンを意味する subnotebook という単語が英英辞書などに載っていますが、そのようなタイプの最新モデルを紹介したウェブサイトを見る限り、ultraportable (laptop) (携帯性抜群のノートパソコン) や Ultrabook (ウルトラブック ※Intel社認定製品のみ) などの表現のほうが普通のようです。
また、先ほどの世界シェア1~3位のパソコンメーカーの公式ウェブサイトの中には標準タイプと薄手・軽量タイプを分けているものもありましたが、日本向けのサイトではタイプ名が「モバイル」となっているのに対し、アメリカとイギリス向けのサイトではどちらも "Thin & Light" (薄手で軽量) となっていました。
日本語の「モバイルノート」と同じく ultraportable (laptop) なども一般的な表現とは言えないため、少なくともコンピューターに詳しくない人の前ではもっと分かりやすい "a thin and light laptop" (薄手で軽量のノートパソコン) や "a small laptop" (小型のノートパソコン) などの表現を使うほうがいいでしょう。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? これで「ノートパソコン」や「モバイルノート」に使われる英語表現の違いが分かりやすくなったかもしれません。
ノートパソコンを略して「ノーパソ」と呼ぶ人もいるようですが、「パソコンなし」と誤解される可能性や文字で書く場合は「ノーパン」と誤解される危険性もあるのでやめておきましょう...