オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第112回は「お知らせ」の英語についてです。
注意 言葉は時代、状況、文脈などによって変化する場合があることを留意してお読みください。また、以下の内容はアメリカとイギリス以外の英語圏には該当しない可能性があります。
※投稿日後に情報を更新した箇所とその理由は「お知らせ」に載せています。
Rawpixel / Rawpixel.com
↑「メッセージ」という無意味なお知らせを受け取った人。さて「お知らせ」は英語で何と言う?
まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「お知らせ」はどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
1. announcement
2. information
3. message
4. news
5. notice
6. notification
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
Yahoo!知恵袋
ご覧のとおり、主に6つの訳語が見つかりました。「~したことをお知らせします」と言いたい場合は "We would like to inform you that..." や「お知らせします」の部分を無視して「~しました」と表現でき、「後でお知らせします」であれば "We will let you know" と伝えればいいですが(自分1人の場合は主語は "I")、文書/メールの件名やウェブサイト上の「お知らせ」にはどの表現を使えばいいのでしょうか?
以下では、スペルも意味も似ている notice と notification の違いも含め、これら6つの「お知らせ」の英語について分かりやすい順で説明します。
Information
まず、information は「お知らせ」ではなく「情報」ですが、例えば企業が何かの情報を利用者に文書などで送る場合の件名は「○○についてのご情報」ではなく「○○についてのお知らせ」(または単に「○○について」) と書くのが普通だと思います。つまり、「○○についての情報」という意味で「お知らせ」と言いたい場合はこの単語を使って "Information about/on ○○" と表現できます。
ウェブサイトの場合はサイト内のページの多くが「情報」を伝える目的で作られているため、「お知らせ」というメニューを単に "Information" (情報) と表現すると何の情報か分からない漠然とした感じになってしまうと思います(日本語のウェブサイトでもメニュー名が単に「情報」となっていたらそう感じると思います)。この場合、"General Information" (一般的な情報) と表現すれば違和感はなくなるでしょう。
このように information という名詞には「お知らせ」の意味はありませんが、動詞の inform は「お知らせする」という意味になります。
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↑「観光案内所」と訳されることが多い tourist information office。information という単語には「案内すること」の意味はないのだが...
News
今説明した「情報」のうち、最近の出来事についての情報がこの news です。主な英和辞書ではこれを「(新)情報」や「(新)消息」という不正確/不自然な言葉で表していますが、「ニュース」と表現すると「報道」の意味に思えてしまいます。そのまま「最近の出来事についての情報」と覚えておけばよく、その意味で「お知らせしたいことがあります」と言いたいときに "I have some news for you" のようにこの単語を使えます。
また、ウェブサイトのメニューでも使われ、例えば次に説明する announcement と合わせて "News and Announcements" と表現されることもあります(どちらの内容も含むページであれば)。
Announcement
これは国、団体、個人に関係なく誰でも何か知らせたいことを公の場(インターネット上を含む)で発言することです。「公告/公示 (=国や機関によるお知らせ)」「公言 (=人前での堂々とした発言)」「公表 (=広く世間に発表すること)」などとはやや違うため、数文字の漢字で表せる最適な日本語がない気がします。
公の場でのお知らせですが、相手の有無は関係ありません。例えばまだ読者0人のブログでも1人で勝手に何かをアナウンスできるため、ウェブサイトの「お知らせ」メニューにはこの表現が一番近いと思います。先ほどの information と news と違ってこの単語は可算名詞 (数えられる名詞) としても使えるため、いくつものお知らせが集まった「お知らせ」メニューは複数形で "Announcements" と表現するのがいいでしょう。
なお、ウェブサイトの「お問い合わせ」と「プロフィール」の英語については #51 『お問い合わせ』の英語は本当に Contact (Us)? と #78 『プロフィール』の英語は本当に Profile? で説明しています。
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↑「誰も聞いてないけどお知らせしまーす」
Message
日本語でもカタカナで「メッセージ」と表現されることが多いこの単語は、口頭、文字、ジェスチャー、テレパシーなど方法は問わず相手に伝える内容を意味します。例えばメールで送信する内容は email message ですが、この表現はメールそのもの(1通のメール)の意味でも使われます。
この message を使って「○○さんからのお知らせ」というフレーズを "A message from..." と表現できますが、「お知らせ」よりも「知らせたいこと」という日本語のほうがニュアンスが近いと思います。
Notification, Notice
最後は、残された notification と notice の違いについてです。
notification は notify (通知する) という動詞から派生した名詞で、単に「通知(すること)」を意味します。先ほどの announcement が「皆さんに聞こえる場所でお知らせします」だとすると、notification は「あなたにお知らせします」という意味で、知らせる相手が明確にいます。また、単なる「通知」のため内容は重要とは限らず、例えば「あなたの投稿に返信がありました」のようなメール通知も (email) notification です。
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↑ウィルスが発見されたらしいパソコン。それならば "Alert" (警報) と表示してくれたほうが重大さが伝わるのだが...
一方、notice は「気づく」という動詞としても使われるように、「気づいてください (=見てください)」という意味でのお知らせです。そのため、重要な内容の場合が多いですが、「警報」の alert や warning と違って明確な危険性を意味する言葉ではありません。また、口頭ではなく紙の通知の場合が多いと思います。
この notice は不特定多数の人に見てほしいお知らせにも使われるため、例えば「掲示板」(ネット掲示板ではなく本物の掲示板) は noticeboard と呼ばれています(アメリカでは bulletin board)。ほとんどの人にとっては重要な内容ではなくても、書いた本人たちにとっては見てほしい重要なお知らせだと言えるでしょう。