オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第150回は「オープンカー」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
dapple-designers / Pixabay.com
↑屋根がなく開放された車だから「オープンカー」。そう呼ぶのは本当に和製英語?
まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「オープンカー」はどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
1. convertible
2. open car
3. open-top car
4. roadster
5. soft-top
bab.la(辞書)
BBTオンライン英会話
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英辞郎 on the WEB(辞書)
エイコミュ
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
Reverso Context(辞書)
Vague
ワラウクルミ
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
ご覧のとおり、主に5つの訳語が見つかりました。すべての英語学習サイトと一部の辞書によると「オープンカー」の正しい英語は convertible で open car は和製英語とのことですが、本当にそうでしょうか?
以下では、多くの辞書・サイトで見落とされていた「オープンカー」と convertible の違いも含め、「オープンカー」の英語について分かりやすく説明します。
オープンカー ≠ Convertible
まず、主な国語辞書を見れば次のどちらのタイプの車も「オープンカー」に該当することが分かります。
B. 折り畳み式や脱着式の屋根がなく、雨が降ったらびしょ濡れになってしまう車
では、今回すべての英語学習サイトで「オープンカー」の正しい英語とされていた convertible は何を意味するのでしょうか? これは convertible car (切り替えられる車) を略した言葉で、屋根の有無を切り替えられる車のことです(つまりAだけに該当し、日本でもこのタイプを「コンバーチブル」と呼んでいます)。
オープンカーはほとんどがこのタイプのため確かに convertible と呼ぶのが普通ですが(英語の発音は「カンヴァータボゥ」に近い)、珍しいBのタイプまでそう呼んでしまわないよう注意が必要です。
では、どちらのタイプも含む総称の「オープンカー」は英語で何と言うのでしょうか?
Rawpixel / Rawpixel.com
↑座席の後ろにある幌 (ほろ) が屋根に convert する (=転換する) から convertible。今回見つかった主な訳語に含まれている soft-top とはこのように柔らかい屋根を持つ車を意味する(硬い屋根の場合は hard-top)。
Open Car は本当に和製英語?
さて、先ほど書いたとおりすべての英語学習サイトと一部の辞書で open car は和製英語と説明されており、英語圏で使うと「何も意味しない」や「ドアが開いている状態の車をイメージされてしまう可能性がある」と説明しているサイトもありましたが、本当にそうでしょうか?
下の2つの英文はアメリカの新聞記事からの抜粋ですが、これを見ると少なくともアメリカでは1927年頃まで屋根のない車を open car と呼んでいたことが分かります(下段は記事名(年月日)と新聞名)。
-『Windshield Wipers』(2014/10/7) / The Happy Herald
-『Closed Cars Show Greater Increase』(1925/11/15) / The Oregon Statesman
これでも open car を「和製英語 (=日本で作られた英語)」と呼ぶのであれば、いつ頃日本で作られた英語なのかも説明する必要があるでしょう。「和製英語」や「英語圏では通じない」のように断言されてしまう英語には他にも air con (エアコン)、eat in (イートイン)、corner (コーナー) などがあるので注意が必要です。
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↑高速道路の service area (サービスエリア) も和製英語と誤解されやすいネイティブ英語。
なお、次のイギリスの新聞記事の抜粋を見れば分かるように、open car という表現は今でも屋根が開いている車に使われることがあります。
-『The Queen's BRILLIANT comeback after being pelted with eggs REVEALED』(2019/3/22) / Express
ただ、この open car という表現は (ドアが閉まっていても)「鍵を掛けていない車」の意味で使われることもあるため、誤解を避けるには open-top car (上部が開いた車) という表現を使うほうがいいでしょう(コンバーチブル式の場合は屋根が開いている状態のときだけこの表現を使えます)。今回調べた辞書・サイトで「オープンカー」の英語にこの表現を載せているものは2つだけでした(『Reverso Context』『Weblio』)。
本当にアメリカが Convertible でイギリスが Roadster?
最後に、オープンカーの一般的な表現はアメリカが convertible でイギリスが roadster と説明している英語学習サイトもありましたが、本当にそうでしょうか?
この2つのタイプの車の違いについて説明したイギリスの最近のインターネット記事を見てもそのような説明はなく、convertible は屋根の有無を切り替えられるオープンカーで特に4人乗りのもの(cabriolet と呼ぶメーカーもあり)、一方の roadster は屋根がある状態にはできないオープンカーも含む2(~3)人乗りで特にスポーティーな外見のものに使われることが多いと説明されています。
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↑イギリスの Caterham Super Seven というオープンカー。スポーティーというよりレーシングカー風だが、英語版ウィキペディアではこの車も roadster に分類されている。
2人乗りのオープンカーにはこの他にも spyder (または spider) や speedster という呼び名のものがあるようですが、どの表現を使うかは(2人乗りか4人乗りかに関係なく)メーカーによって違うとされており、消費者の中にはこれらの違いがよく分からない人も多いようなのであまり気にする必要はないと思います。
今回の内容を分かりやすくまとめると、オープンカー全般(ただしコンバーチブルの場合は屋根が開いている状態のみ)が open-top car または文脈が明確であれば open car、屋根の有無を切り替えられる一般的なオープンカーが convertible、そして2人乗りのオープンカーには roadster、spyder、speedster などの呼び名のものがあるということになるでしょう。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? これで「オープンカー」の英語表現の違いが分かりやすくなったかもしれません。
「オープンカーは和製英語です」と教えてくれる英語の先生がいたら、「本当にそうでしょうか?」と疑問を投げかけてこのページを見せてあげるのがいいでしょう。