オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。記念すべき第100回は「パンツ」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
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↑「おい...何でオレたちがここにいるんだ??」「オレらが履いてるのだって日本じゃ『パンツ』と呼ぶだろーがー」
まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「パンツ」はどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
1. boxer shorts / boxers
2. briefs
3. drawers
4. knickers
5. panties
6. pants
7. shorts
8. trousers
9. trunks
10. underdrawers
11. underpants
12. undershorts
13. underwear
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英辞郎 on the WEB(辞書)
goo(辞書)
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
日刊英語ライフ
OKWAVE
Reverso Context(辞書)
ワラウクルミ
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
ご覧のとおり、主な訳語だけでもこれだけの数になりました。なぜ「パンツ」は pants だけではいけないのでしょうか? また、underwear 以外はなぜすべて複数形になっているのでしょうか?
以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった表現も含め、「パンツ」と「ズボン」の英語について分かりやすく説明します。
ズボンがなぜ「パンツ」?
まず、日本では昔から股の下で2つに分かれた下半身用の洋服を「ズボン」と呼んできましたが、それを pants と呼ぶアメリカを真似して「パンツ」と表現するお店や人たちがいつからか登場しました。日本ではズボンやスカートの下に履く下着を「パンツ」と呼んできたため、この現象に違和感を感じた人は多かったと思います。
私たちの中には物事をよく考えずにすぐ欧米の真似をしてしまう人たちがいますが、ズボンを「パンツ」と呼ばないほうがいい明確な理由があります。それは、ズボンを「パンツ」と呼んでしまったら、例えば「パンツを脱いでください」という指示があったときにそれがズボンと下着のパンツのどちらか分からなくなるからです。
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↑パンツを下げてパンツを見せている人たち。
ズボンの「パンツ」と下着の「パンツ」は発音のイントネーションが違うため、会話では間違われることはないかもしれません(「高品質パンツ」や「パンツ泥棒」のようなフレーズになると同じイントネーションになりますが)。一方、例えば男性が女性に何色のズボンを履くのが好きかを尋ねたいときに、「普段は何色のパンツを履いているのですか?」などとSNSで聞いたら変態と勘違いされてしまうではありませんか?
幸いなことに、男女1600名以上が参加した2015年3月のアンケートの結果によると、ズボンを「パンツ」と呼ぶ人の割合は3割程度しかおらず、しかも予想に反して若年層ほどその割合が低くなっています。理由は、「ズボン」や「パンツ」ではなく「ボトムス」など別の呼び方をする人が多いからのようです(「ボトムス」については #75 『上着 (ジャケット等)』『アウター』『トップス』は英語で何と言う? で説明しています)。
「ズボン」は英語で何と言う?
では、まず「ズボン」は英語で何と言うのでしょうか?
アメリカでは先ほど説明したとおり pants、イギリスでは trousers と呼ぶのが普通です(アメリカの影響で pants と呼ぶ人もいます)。trousers はアメリカで背広のズボンやフォーマルなスラックスを意味すると言う人もいれば、pants と同じ意味(で少し気取った/古風な/イギリス風の表現)だと言う人もいます。
今の説明に出てきた「スラックス」の英語の slacks は、アメリカでセミフォーマルな男性用のズボン(背広のズボンと違ってフォーマルではなく上下セットでもないもの)の意味で主に業界内で使われていますが、昔は女性用のズボンをそう呼んだようです。イギリスでも昔(女性のズボンをまだ trousers と呼ぶのに違和感があったころ)は使われていたようですが、今は男性用も含めてズボンにこの単語を使うことは普通ありません。
日本はどの国の英語を使ってもいい立場にあるため、「ズボン」がダサいと感じたのであればイギリス英語を真似して「トラウザーズ」と呼べば良かった気もします。ただ、「ズボン」のほうが明らかに言いやすく、フランス語の jupon から来ているという説もあるため、そのままでも十分にかっこいいではありませんか?
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↑デニムのトラウザーズがきつすぎて履けず、パンツが見えてしまっている女性。
なお、ズボンも下着のパンツも右足側と左足側の2つのパーツで構成されているため、1着/1枚でも s を付けて複数形にする必要があります。例えば、「あたしのズボン(1着)はどこ?」と言いたい場合は "Where are my pants/trousers?" になりますが、着数/枚数を明確にしたい場合は pair (ペア) という単語を加えて例えば「ズボンを2着買った」であれば "I bought two pairs of pants/trousers" と表現します。
下着の「パンツ」は英語で何と言う?
さて、ズボンの話はこれくらいにして、ここからは下着のパンツの英語についてです。
結論として、国、性別、形などに関係なく使えて確実に下着のパンツを意味する英語は(少なくとも一般的な表現では)存在しないと言えます。
以下は、今回調べた辞書・サイトが載せていなかった bikinis、Y-fronts や1~2つだけが載せていた boxer briefs、undies も含め、下着のパンツに使われる英語表現をアルファベット順に並べて簡単な説明を加えたものです(どの表現を使うかは国、地域、年齢層、人などによって変わる場合があります)。
ビキニ。露出部の多いツーピースの女性用水着を意味するが(その場合は上下セットで単数形)、アメリカでは男性用の浅い水着やパンツにも使われることがある単語(そのことを知らないアメリカ人もいる)。略さずに (a pair of) bikini briefs と表現するか、bikini underwear と表現すれば複数枚の水着のビキニと間違われることはない。
日本でも「ボクサーブリーフ」と呼ばれている伸縮性が高くて体にフィットするトランクス型の男性用パンツ。国・地域や人によって tight boxers や trunks と呼ぶこともある(boxer briefs より短めのものを trunks と分類しているウェブサイトもある)。
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例えば、大手通販サイトのAmazon.com (アメリカ) では boxer briefs、boxers、trunks の3つのカテゴリーがあり、その中の商品の見た目は下のイラストと一致する印象。一方、Amazon.co.uk (イギリス) には boxer briefs カテゴリーがなく、boxers と trunks のどちらのカテゴリーにも長めと短めのボクサーブリーフと日本で「トランクス」と呼ばれている男性用の短パン風のパンツが混在している印象。
日本で「トランクス」と呼ばれている男性用の短パン風のパンツを意味するのが普通(ボクシング選手のトランクスに似ているため)。
性別に関係なく使える「ブリーフ (股下の短い伸縮性のあるパンツ)」を意味する単語。男性用の白いブリーフには tighty-whities(異なるスペルあり)という俗語もある。
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↑男性用パンツの種類。国、地域、年齢層、人などによって呼び方が違う可能性があるので参考程度に。
性別に関係なく下着のパンツに使われることがある古風またはおどけた表現。日本語の「ズロース」や「ドロワーズ」はこの単語をカタカナにしたもの。
イギリスで女性用のパンツに使われる一般的な単語。「ニカーズ」と発音する。
アメリカで女性用のパンツに使われる一般的な単語。イギリスでもアメリカの影響で使われることがある。日本では単数形で「パンティー」と呼ぶ。
Viktoria Kazakova / Shutterstock.com
↑こちらは女性用パンツの種類。これも国、地域、年齢層、人などによって呼び方が違う可能性があるので参考程度に。(※THOHGS は THONGS のスペルミス)
性別に関係なくアメリカでは「ズボン」、イギリスでは下着の「パンツ」の意味で使われる単語。
長めの下着のパンツ、半ズボン、スポーツのユニフォームで膝くらいまでの長さのものに使われる単語。股の下で2つに分かれた下半身用の衣服で短めであれば、どんなタイプにでも使われる可能性のある表現。
先ほどの boxer briefs と同じまたはほぼ同じもの。男性用のあらゆる水着(人によってはトランクスタイプやブリーフタイプのみと解釈)やもちろんボクシングのトランクスにも使われる単語。
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↑この人が履いているのは boxer briefs と trunks のどっち?
先ほどの drawers が「(半)ズボン」を意味する一部の地域ではパンツをこう呼ぶことがあるらしい。
アメリカで性別に関係なく使える下着の「パンツ」。イギリスでは男性のパンツを意味するのが普通。
アメリカで underpants と同じ意味で使われることがある単語。
「下着」を意味する一般的な単語。上半身の肌着やブラジャーも含むものの、男性の場合は下半身の下着 (=パンツ) と解釈される可能性が高い。同じく「下着」の英語には underclothes、underclothing、undergarment(s) もある。underwear は不可算名詞 (数えられない名詞) のため、1枚の下着は an item of underwear と表現する。
辞書では女性(子供含む)の下着に使われる口語表現とされているものの、男性の下着に使う人もいる(国・地域や年齢層によって違う可能性あり)。パンツ1枚を (a pair of) undies と表現できる。
イギリスで前面に開口部のある男性用のブリーフに使われる単語。もともとはアルファベットの Y を上下逆にしたデザインの開口部があるブリーフの商標名。
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↑これが本当の Y-fronts。
他にも skivvies (男性用のパンツを意味する口語)や shreddies (イギリスで男性のぼろいパンツを意味する俗語) などもありますが、画像も含め上に挙げたものだけで普通は十分だと思います。
日本でも「ビキニ」「ボクサーブリーフ」「ブリーフ」「パンティー」「パンツ」「ショーツ」「トランクス」「アンダーウェア」という表現は使われますが、こうして見ると英語のほうが下着のパンツに使われる表現が多いことが分かります。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? これでズボンと下着のパンツのそれぞれに使われる英語表現の違いが分かりやすくなったかもしれません。
どうしても日本でズボンを「パンツ」と呼ばせたい方は、まずは #75 『上着 (ジャケット等)』『アウター』『トップス』は英語で何と言う? で少し触れたように下着を「アンダー」と呼び、パンツは「アンパン (=アンダーパンツ)」と呼ぶ習慣を定着させる必要があるでしょう...