#98 「受話器」の英語は本当に receiver?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。
第98回は「受話器」の英語についてです。

注意 言葉は時代、状況、文脈などによって変化する場合があることを留意してお読みください。また、以下の内容はアメリカとイギリス以外の英語圏には該当しない場合があります。

Alexas_Fotos / Pixabay.com

↑一昔前の固定電話の受話器。さて「受話器」は英語で何と言う?


まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「受話器」はどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをそれぞれアルファベット順に記載します。

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「受話器」
インターネット上の主な英語訳
1. earphone
2. earpiece
3. handset
4. phone
5. (phone/telephone) receiver
訳語が見つかった辞書・サイト
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Imagict(辞書)
Linguee(辞書)
みんなで作るネーミング辞典(辞書)
Reverso Context(辞書)
weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「受話器 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、主に5つの訳語が見つかりました。この中で最も多かったのは (phone/telephone) receiver で、この訳語しか載せていない辞書もいくつかありました。ということは「受話器」はとりあえず receiver と覚えておけばいいということでしょうか?

以下では、今回見つかった他の訳語との違いも含め、「受話器」の英語について分かりやすく説明します。

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Earphone と Earpiece も「受話器」?

まず、私たちが「受話器」と呼ぶ固定電話機のパーツは、口に当てて「話を送る」部分の「送話器」と耳に当てて「話を受ける」部分の「受話器」の両方で構成されているため、本当は「送受話器」と呼ぶのが正しいとされています(以降の説明ではこの正しい表現を使います)。

今回見つかった訳語の1番目の earphone (イヤホン) には「耳に当てる音声再生装置」という意味があり、2番目の earpiece は #14 「イヤホン (カナル型含む)」は英語で何と言う? などでも説明したとおり「耳に当てる/入れる部分」を意味するため、これらは一部の和英辞書に「受話器」の英語として載っているのです。

Receiver とは

今回最も多く見つかった (phone/telephone) receiver も本当は耳に当てて話を受ける部分だけを意味します。昔の電話機は次の写真のように送話器と受話器が別々に分かれているものが多く、それぞれ transmitterreceiver と呼ばれていました(transmit は「送る」、receive は「受ける」という意味です)。

J Walters / Shutterstock.com

↑「もしもし、そっちは21世紀だと? スマホ??」 

今では receiver という単語は日本語の「受話器」と同じく「送受話器」の意味で使われていますが、あくまで話を受ける「受話器」の部分だと考えるネイティブスピーカーもいます(少数派だと思いますが)。では、そのような人は送受話器を何と呼ぶのでしょうか?

Handset

「送受話器」の英語として receiver と一緒に覚えておきたいのが handset です。手に持って使うものを意味するこの単語のほうが表現として矛盾がなく、英語版ウィキペディアの送受話器についてのページもタイトルは『Handset』になっています。

#83 「端末」の英語は本当に terminal? でも説明したとおり、この単語は(主にメーカーなどによって)携帯電話やスマートフォンの「端末」の意味で使われることもあります。

kwanloy / Rawpixel.com

↑電話機は時代と共にここまで進化したが、通話の発信や切断のアイコンには固定電話の送受話器が使われている。

Phone も「受話器」?

最後に、今回見つかった訳語には「電話(機)」を意味する phone も含まれています。実際、私たちが「受話器」という言葉を使う状況では receiverhandset よりもこの phone を使うほうが多いと思います。

例えば、「受話器を置いた」と言いたければ "put the phone down"、「受話器を落とした」も "dropped the phone" と表現するのが普通のため、receiverhandset のどちらも使う必要がありません。日本語でもコードレス電話機であれば「電話(機)を落とした」と言うかもしれませんが、コードが付いている送受話器の部分でも英語では phone と表現するところが面白いと思います。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか?「受話器」の英語に (phone/telephone) receiver しか載せていないオンライン和英辞書は、handset と phone も載せておく必要があるでしょう。

固定電話を持たない人が増え続ける中で今回の内容を書く意味があるのか最初は疑問でしたが、送受話器のアイコンは多くの人が使っているのでこのページは意外と役に立つかもしれません。