オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第26回は「リニューアル」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
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↑「再生可能エネルギー」は英語で renewable energy。でも日本語で「エネルギーのリニューアル」と言う?
まず、「一新すること」の意味でよく使われる「リニューアル」という言葉はオンライン和英辞書や英語学習サイトでどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
1. improvement
2. overhaul
3. redesign
4. renewal
5. renovation
6. repair
7. revamp
8. update
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
英辞郎 on the WEB(辞書)
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
誤訳の泉
Imagict(辞書)
Linguee(辞書)
Reverso Context(辞書)
スクーグ咲の英会話アドバイス
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
Write a Diary in English
ご覧のとおり、いろいろな訳語が見つかりました。この中でほぼすべての辞書が載せていたのが日本語の「リニューアル」の元になっている renewal です。リニューアルは本当に英語でも renewal なのでしょうか?
以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった表現も含め、「リニューアル」の英語について分かりやすく説明します。
パスポートや都市をリニューアル?
まず、日本語の「リニューアル」を英語でも renewal と表現するのが適切な例はほとんど(または全く)なく、例えばウェブサイトや商品パッケージ(のデザイン)をリニューアルした際に renewal の動詞の renew を使って "We have renewed (the design of) the website/packaging" とはまず言いません。
英語の renewal や renew が使われるのは主に契約やパスポートなどの更新の他、都市やエネルギーの再生などです。これらを日本語で「リニューアル」と表現するでしょうか? 例えば、「パスポートのリニューアル」と言えば誰でもパスポートのデザインなどが新しくなったと思うのではないでしょうか?
都市の再生も英語では urban renewal ですが、日本語で「都市のリニューアル」と表現するのを聞いた記憶はありません(「都市の再生」や「都市の再開発」はよく耳にします)。使うべきところに使われず、使うべきでないところに使われている英語は他にもありますが、renewal はその代表格と言っていいと思います。
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↑「パスポートをリニューアルいたしました」「えーと、リニューアルじゃなくて更新してほしかったんですが...」
リニューアル全般に使える便利な単語
では、私たちがお店やウェブサイトの広告・告知などでよく見聞きする「リニューアル」は英語でどう表現すればいいのでしょうか? update は「最新の状態にすること」という別の意味で、improvement は大幅な変更でなくても使えるため「リニューアル」という感じがあまりしません。overhaul は徹底的に見直してリニューアルする場合には使えますが、細かいことを考えずに勢いでリニューアルしてしまった場合には合いません。
そこで、「一新する」という意味でリニューアル全般に使える便利な単語が revamp です(名詞と動詞の両方の意味があります)。これはウェブサイト、ロゴ、パッケージ、お店などに加え、自分のルックス、履歴書、タンスの中身など大幅な変更を加えて良くする意味で多くのものに使えます。今回調べた辞書・サイトで「リニューアル」の英語にこの revamp を載せているものは2つだけでした(『Glosbe』『誤訳の泉』)。
なお、リニューアルする対象物にこの単語が使えるかどうかを判断するには、検索エンジンで "revamp the {名詞}" や "revamp your {名詞}" というフレーズを入力して実際の使用例を探すのがいいでしょう。
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↑「リニューアル」という日本語をリニューアルし、これからは「リバンプ」と表現しよう(響きが悪いから無理?)
特定のリニューアルに使える単語
この便利な revamp に加え、リニューアルする内容に合わせて次のような単語も使えます。
◎お店やウェブサイトのリニューアル ⇒ renovation(動詞は renovate)
◎会社や商品のイメージのリニューアル ⇒ rebranding(動詞は rebrand)
◎商品パッケージのリニューアル ⇒ repackaging(動詞は repackage)
◎食品や飲料の味のリニューアル(原材料や調合の変更) ⇒ reformulation(動詞は reformulate)
*「デザイン」にはウェブサイト、商品パッケージ、ロゴなどさまざまなデザインが含まれます。また、design には「設計」の意味もあるため redesign は「再設計」の意味にもなります。
なお、これらの単語を使わなくても例えば「リニューアルされたデザイン」であれば new design のように単に new を付けて表現したり、「(見た目が) リニューアルされたウェブサイト」であれば new-look website と表現することもできます。
ウェブサイトをリフレッシュ?
最後に、ウェブサイトや商品パッケージの見た目をリニューアルする意味で refresh (名詞も動詞も同じ) が使われることもあります。
ただ、例えば翻訳の仕事で「ホームページのデザインをリニューアルしました」という日本語を "We have refreshed our website" と正しく訳したとしても、翻訳チェック担当者の日本人がその refresh の用法を知らないとそのサイトにマッサージやヒーリングを施したのかと思われる可能性があるため、やはり revamp、redesign、renovate などの単語を使うほうがいいでしょう。
なお、日本語ではなぜ「リバンプ」や「リデザイン」ではなく「リニューアル」が使われるのかを考えてみると、言葉の意味よりも「響き」を重視してしまう日本人にとっては「リバンプ」や「リデザイン」は耳に心地よい音ではなく、発音する際も「リニューアル」のようにスムーズではないからだと思います。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回説明した「リニューアル」の適切な英語表現や訳語の意味の違いが多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。
翻訳の現場では例えば「パッケージのリニューアル」という日本語を英語ネイティブの翻訳者でも仕方なく日本語に合わせて "package renewal" と表現しなければならないこともあるため、英語翻訳が必要な文書やページを作成されている方は、今後は「一新」「新しくなりました」「変更」などの日本語を使うほうが翻訳者が苦悩せずに済むでしょう。
どうしてもカタカナを使いたい場合は、例えば「ウェブサイトをリノベートしました」や「あのカップ麺がリパケして復活!」のように意味的に適切かつ耳に心地よい表現を使うのがいいでしょう。