#70 『料理人』の英語は chef それとも cook?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第70回は「料理人」の英語についてです。

◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。

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↑レストランで働く「料理人」たち。彼らは「シェフ」と「コック」のどちらなのだろうか...


まず、オンライン和英辞書や英語学習サイトで「料理人」はどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。

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「料理人」
インターネット上の主な英語訳
1. chef
2. cook
訳語を載せた辞書・サイト
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英辞郎 on the WEB(辞書)
現役英語・英会話講師が英語・英会話の(再)勉強・学習を応援するブログ
Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Hapa Eikaiwa 英語学習コラム
Imagict(辞書)

実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
みんなで作るネーミング辞典(辞書)
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
Yahoo!知恵袋
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「料理人 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、「シェフ」と「コック」の英語の chefcook が主な訳語として見つかりました。どちらも同じ意味なのでしょうか? また、アメリカとイギリスで何か違いはあるのでしょうか?

以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった表現も含め、「料理人」の英語について分かりやすく説明します。

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料理人 = 料理する人?

まず、cook を「料理する人 (someone who cooks food)」と説明している辞書がいくつかありましたが、例えば毎日料理をする専業主婦と暮らす夫が「私の妻は料理人です」と言えばそれは料理の仕事をしている人だと誤解されるはずですし、たとえ料理が上手な人でも現役でなければ「元料理人」と呼ばれることからも、「料理人」とは「現在職業として料理をしている人」だと言えるでしょう。

ただ、例えばチェーン店でマニュアルどおりに煮たり焼いたりしているアルバイト店員を「料理人」とは普通呼ばないため、専門的な知識と技術を使って料理をして収入を得ている人が 「料理人」なのだと思います。

Cook は「料理人」とは限らない

さて、料理する人を "a cook" と表現すればそれは職業として料理をしている人を意味しますが、good など評価を表す形容詞を cook の前に付けると必ずしもそうではなくなります。例えば、今回訳語が見つかった英語学習サイトの中には "He is a great cook" (彼は素晴らしい料理人だ) や "She is a good cook" (彼女はいい料理人だ) という例文がありましたが、これらは本当は単に「料理が(とても)上手」という意味です。

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↑「えっ? ど...どこのお店で働いているんですか?」「ケイコ、私は『彼は料理がとても上手なの』って言っただけよ」

また、例えばファーストフード店でハンバーガーを焼いたりポテトを揚げている「料理人」とは呼べないスタッフが short-order cook と表現される場合があることからも、cook は「料理人」とは限らないと言えるでしょう。なお、cook の発音は「クック」で、日本語のように「コック」と発音してしまうと cock (雄鶏、水道などの栓、ち○こ) の意味になってしまうので注意が必要です。

Chef と Cook の違い

さて、chef と cook の違いは一体何でしょうか? 日本語の「シェフ」と「コック」の違いを説明したウェブサイトでは「シェフ」が料理長で「コック」が料理人全員という説明がされていたり、和英辞書や英語学習サイトでも chef を「料理長」や「料理人頭」と説明しているものがありますが、必ずしもそうではありません。

例えば、動詞の cook (料理する) は加熱する料理に使う単語のためか、一部のメニューを除けば加熱する食材が(お米以外には)ほとんどないお寿司を握る寿司職人は sushi cook ではなく sushi chef と表現するのが普通です。もし chef が「料理長」だとしたら、寿司職人全員が料理長になってしまうではありませんか?

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↑「ここの料理長はオレだからな」「2人とも料理長らしいぞ...」

ただ、そのような例外を除けばアメリカでは確かに料理長(ただし料理学校やシェフの下で正式なトレーニングを受けた人のみ)が chef でその下で働く料理人たちを cook と呼ぶ場合もあれば、正式なトレーニングを受けた人たち全員を chef と考えてランク順に上から chef de cuisinesous chefchef de partie と呼ぶ場合もあります(お店、話し手の立場、状況などによって "head chef" など呼び方は変わると思います)。

イギリスでは Cook にいいイメージはない?

一方、イギリスでは例えば "He is a cook" と表現するとファーストフード店と料理店の中間に位置するような(学校や病院の)食堂で料理をしているレベルの人を想像する人が多いようで、料理学校で学んだりシェフに指導を受けた経験がなくても料理店で働いている料理人は(chef ではないため)本当は cook と呼ぶべきですが、そう呼ぶのをためらうくらい cook という表現にあまりいいイメージを持たない人が多いようです。

だからといって professional を足して "He is a professional cook" と呼ぶのも違和感があるらしく、料理学校で学んだりシェフに指導を受けた chef (イギリスでも先ほどのようにランクに分かれます) と学食などで料理をする cook の間に位置する「正式なトレーニングは受けていないけれど料理店で働く料理人」のことは何と呼んだらいいのか分からない、という人がイギリスには多いようです。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回説明した cook と chef の意味や使われ方の違いが多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。

chef ではなく cook の方は、英語圏ではくれぐれも発音に注意して絶対に「アイ アム ア コック」とだけは言わないようにしましょう...

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