#154 『営業職』と『販売職』の英語は両方とも sales job?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第154回は「営業職」「販売職」の英語についてです。

◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。

roungroat / Rawpixel.com

↑営業職の男性の肩幅を測る販売職の女性。さて「営業職」と「販売職」はそれぞれ英語で何と言う?


まず、自社の製品やサービスを他社に売り込んで契約を取る「営業職」と主にお店で商品を売る「販売職」はオンライン和英辞書や英語学習サイトでそれぞれどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。

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「営業職」
インターネット上の英語訳
1. sales
2. sales job

3. salesperson
「販売職」
インターネット上の英語訳
1. employment in sales and marketing
2. sales job
3. sales position
4. selling profession
訳語を載せた辞書・サイト
英辞郎 on the WEB(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「営業職 英語」「販売職 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、仕事内容も職場もだいぶ違うこの2つの職業のどちらも sales job と訳されており、他の訳語にも sales/selling (販売/売ること) という単語が使われています。本当にこれでいいのでしょうか?

以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった表現や「営業員/販売員」などの表現も含め、「営業職」と「販売職」の英語について分かりやすく説明します。

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「営業職」と「販売職」の違い

まず、最初に書いたとおり日本では自社の製品やサービスを他社に売り込んで契約を取る仕事を「営業職」、主にお店で商品を売る仕事を「販売職」と呼び分けるのが普通です(職業図鑑などでそう説明されています)。

製品やサービスを売ることは「販売」であり、これを英語では sale(s) と呼びます(日本では「セール(ス)」と表記/発音されるこの単語は英語では「セイル(ズ)」のように発音します)。ということは両方とも販売をするのが仕事の「営業職」と「販売職」はどちらも英語では sales job と表現するのが正しいということでしょうか? まずは「営業職」やその仕事をする「営業員」の英語から見ていきたいと思います。

「営業職」や「営業員」は英語で何と言う?

「営業職」は英語で sales job (販売の仕事) や sales position (販売職)、または単に sales と表現するのが普通です。販売をする「営業員」は salesperson (複数形は普通は salespeople)、「営業スタッフ」は sales staff、その営業員/スタッフたちが所属する「営業部」は sales department と表現されます。

そして「営業職をしています」と伝える場合は実際に売り込む営業員であれば "I'm a salesperson" と表現するのが最適で、"I work in sales" (営業職です) という表現は営業コーディネーターなどでも使えます。

G-Stock Studio / Shutterstock.com

↑salesperson は性別に関係なく使える「販売員」を意味する単語。この助手席にいるような車のセールスマン (salesman) や次のセクションで説明する店員などにも使われる。

このように「営業」という日本語が「販売」を意味する場合は英語では sales と表現するのが最適ですが、中には「販売の仕事」と表現すると違和感のある営業職もあるかもしれません。そもそも「営業職」という日本語は「事業を営む職業」という理解不能な言葉のためはっきりとは言えませんが、「販売の仕事」と表現するのが適切でないと感じる営業職の場合は sales ではなくその仕事に適切な表現を使うのがいいでしょう。

「販売職」や「販売員」は英語で何と言う?

では、主にお店で商品を売る仕事の「販売職」やそこで働く「販売員」は英語で何と言うのでしょうか?

商品を企業などにではなくお店のように消費者に売ることは「小売り」であり、これを英語では retail と呼びます(「リーテイル」のように発音します)。つまり日本で「営業」と呼ばれている販売の仕事は sales、「販売」と呼ばれている小売りの仕事は retail となるため、日本語と英語のギャップに注意が必要です(ちなみに生産者や輸入業者から商品を仕入れてお店などの小売業者に売り渡す「卸売り」は wholesale です)。

販売職について説明した日本のウェブページではレジ打ちや品出しも「販売職」の例に挙げられていますが、レジ打ちや品出しだけをしている人が「販売の仕事をしています」と自己紹介することはまずないと思います。英語でもこれらの仕事は retail job/position に分類されていますが、"I work in retail" (販売職です) と言えばお店で買い物客の相談に乗ったり商品を勧めて購入に至らせる仕事をイメージするのが普通です。

Dean Drobot / Shutterstock.com

↑レジ係も販売職 (retail job/position) に分類されているが、日本語でも英語でも「販売職をしています (I work in retail)」と自己紹介すると誤解を与える可能性が高いのでやめておこう。

そしてそのようにお店で商品を売る人は先ほどの「営業員」と同じく salesperson ですが、営業員ではなくお店の販売員だということを明確にしたい場合は retail salesperson や in-store salesperson と表現できます。一方、販売助手やレジ/品出し係などにも該当する「小売業で働く人」は retail worker です。

お店には販売員以外の店員もいるお店や販売員と呼べる店員が全くいないお店もありますが、この「店員」の英語は #6 『店員』の英語は本当に salesperson や store clerk? で詳しく説明しています。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回説明した retail を使った表現が「販売職」の英語として多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。

私と同じくフリーランスの方は、たとえ自分も「事業を営む職業」をしているからといって「営業職をしています」と自己紹介するのはやめておきましょう...

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