#138 『サービスエリア』は本当に和製英語?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第138回は「サービスエリア」の英語についてです。

◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。

Jira / Rawpixel.com

↑「今どこにいるかって? 高速道路の service area だよ」(あれ?「サービスエリア」は和製英語だと思ってましたが...)


まず、「サービスエリア」には「高速道路の休憩所」や「ラジオやテレビの受信可能区域」の他に「サーブを打つための区域」の意味もあると説明している国語辞書もありますが、この言葉はオンライン和英辞書や英語学習サイトでどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。

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「サービスエリア」
インターネット上の主な英語訳
1. coverage area
2. rest area
3. rest stop
4. service area
5. service clearance
6. truck stop
訳語を載せた辞書・サイト
bab.la(辞書)
BBTオンライン英会話
CUERBO(辞書)
DMM英会話なんてuKnow?
英辞郎 on the WEB(辞書)

Glosbe(辞書)
goo(辞書)
Imagict(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
車好きとレースファンのための英語の勉強部屋
Linguee(辞書)
みんなのらくらく英語塾
Reverso Context(辞書)
TABIPPO
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
ヨッシーの英語備忘録
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「サービスエリア 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、主に6つの訳語が見つかりました。英語学習サイトのほぼすべてが高速道路の「サービスエリア」は和製英語と説明していましたが、本当に英語圏では service area と呼ばないのでしょうか?

以下では、service arearest area の違いも含め、高速道路とその他の「サービスエリア」の英語について分かりやすく説明します。

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高速道路の「サービスエリア」は英語で何と言う?

まず、イギリスで高速道路のサービスエリアは日本と同じく service area と呼ばれており、service station や services という表現も使われます。イギリスでは高速道路を motorway と呼ぶため(詳細は前回の #137 『高速道路』の英語は highway, expressway, freeway などのどれ? を参照)、「高速道路のサービスエリア」と言いたければ "a motorway service area/station" と表現します。

英語版ウィキペディアの『Motorway service area』のページでイギリス初のサービスエリアは1959年11月にオープンしたと説明されており、日本初のサービスエリアは滋賀県の地域情報サイト『大津e湖都市場』によると1963年の10月にオープンしたとされています。どちらも当時からそう呼ばれていたのかは分かりませんが、service area が和製英語 (=日本で作られた英語) という可能性はかなり低いでしょう。

Matt Rakowski / Shutterstock.com

↑これはイギリスの高速道路。右側にある "Services" は進行方向にサービスエリアがあることを意味している。

一方、アメリカの場合は道路標識で使われることが多い rest area (休憩エリア) や会話などで使われることが多い rest stop (休憩用停留所) が正しい表現で service area は和製英語と説明している英語学習サイトがほとんどでしたが、実はアメリカでも service area という表現は使われています(一般的には確かに rest stop や主にトラックを対象としたものであれば truck stop と呼ぶのが普通だと思います)。

例えば、『Travel in the USA: Service vs. Rest Area』というYouTube動画では rest area が単なる休憩所で service area は各種サービスを提供する休憩所と説明されていたり、ニューヨーク州高速道路 (New York State Thruway) の公式ウェブサイトでは各サービスエリアが service area と表現されています。

SevenMaps / Shutterstock.com

↑ニューヨーク州にある高速道路の N.Y. State Thruway。公式サイトでサービスエリアを service area と表現している。

恐らく英語圏の中でサービスエリアを service area とは呼ばない国や地域にしか居住/滞在しなかった人が「サービスエリアは和製英語」と断言してしまうのだと思いますが、このように和製英語と誤解されやすい英語には他にも kitchen paper (キッチンペーパー)、air con (エアコン)、eat in (イートイン)、corner (コーナー)、home page (ホームページ)、bargain sale (バーゲンセール) などあるので注意が必要です。

なお、日本では休憩所を「サービスエリア (SA)」と「パーキングエリア (PA)」の2タイプに分けていますが、英語では parking area と表現すると単なる駐車場の意味になってしまうのでこれも注意が必要です。

高速道路以外の「サービスエリア」は英語で何と言う?

さて、今回見つかった主な訳語には coverage area と service clearance も含まれていましたが、これらはどのような意味での「サービスエリア」なのでしょうか?

coverage area はラジオやテレビの受信可能エリアや携帯電話の通信エリアを意味する言葉で(普通は area を付けずに coverage だけで十分だと思います)、service area という言葉はそのエリアを「サービス提供エリア」と説明したいときなどに使えます。一方、service clearance は機器を修理点検する際の機器周辺エリアの意味で使われることがあるようですが、これを日本語で「サービスエリア」と呼ぶのかは分かりません。

スポーツの「サーブを打つための区域」としての「サービスエリア」は、例えばテニスの場合は日本のウェブサイトを見るとサーブを打つエリアではなく打ち込むエリアをそう呼んでいるものが多い印象です(「サービスコート」と呼ぶほうが普通かもしれません)。英語ではこのエリアを service box と呼ぶようですが、サーブを打つエリアについては少し調べた限りでは正しい表現が何なのかよく分かりません。

Teddy / Rawpixel.com

↑サーブを打つこのエリアが「サービスエリア」かと思ったが...

バレーボールの場合はサーブを打つエリアを「サービスエリア」と呼んでいる日本のサイトがいくつかありますが、エリア名としては「サービスゾーン」と呼ぶほうが普通だと思います。これもあくまでも少し調べた限りですが、英語サイトでもエリア名としては service zone や serving zone のほうが多い印象です。

他にもサーブを打つスポーツはいくつかあると思いますが、今回主に説明したかったのは高速道路のサービスエリアですので、その他のサービスエリアについてはこの辺で終わりにさせていただきたいと思います...

以上、お役に立てる内容だったでしょうか? これで「サービスエリア」の英語表現の違いが分かりやすくなったかもしれません。

「高速道路の『サービスエリア』は和製英語なので英語圏では通じません」と教えてくれる英語の先生がいたら、「先生、ニューヨーク州やイギリスは英語圏ではないのですか?」と質問してこのページを見せてあげるのがいいでしょう...

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