#141 「失業者/失業中」や「無職」は英語で何と言う?

オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。
第141回は「失業」「無職」の英語についてです。

注意 言葉は時代、状況、文脈などによって変化する場合があることを留意してお読みください。また、以下の内容はアメリカとイギリス以外の英語圏には該当しない場合があります。

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↑雇用契約終了によって失業者/無職となる人は多い。さて「失業者」や「無職」は英語で何と言う?


まず、誤解を招きやすい「失業者」という日本語はオンライン和英辞書や英語学習サイトでどう英語に訳されているのでしょうか?

見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをそれぞれアルファベット順に記載します。

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「失業者」
インターネット上の主な英語訳
1. displaced person/worker
2. jobless laborer/man/person/worker
3. man/person(s) out of employment
4. people between jobs
5. people/person out of work
6. people/those/workers who (have) lost their job(s)
7. the jobless
8. the unemployed
9. unemployed people/person(s)/worker
訳語が見つかった辞書・サイト
bab.la(辞書)
CUERBO(辞書)
英辞郎 on the WEB(辞書)
goo(辞書)
実用・現代用語和英辞典(辞書)
Linguee(辞書)
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
WebSaru(辞書)
※主なオンライン和英辞書とGoogle検索結果(キーワード:「失業者 英語」)の1ページ目に表示されたサイトを中心に調べています(◎本日以降に該当ページの内容が更新されている可能性があります)。検索語単体の英語訳の正誤を確認するのが目的のため、検索語を含むフレーズや例文などは調べていません。

ご覧のとおり、似た表現を1つにまとめて主な訳語だけ載せてもかなりの数になりました。この中で最も多かったのは unemployed person ですが、unemployed は「失業した」という意味なのでしょうか?

以下では、今回調べた辞書・サイトで説明が見られなかった「失業」という日本語が持つ2つの意味も含め、「失業」と「無職」の英語について分かりやすく説明します。

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失業者 ≠ 失業した人

まず、主な国語辞書を見ると分かりますが、「失業」という日本語には次の2つの意味があります。

1. 職を失うこと
2. 働く能力も意欲もあるのに職に就けない状態

つまり、職を「失った」のではなく自ら手放して求職中の人や、初めて就職活動をしている人(学生は除く)は1の「職を失うこと」を経験していないのに2に該当するため「失業者」と呼ばれてしまうのです。

では、「失業者」と「無職」の違いは一体何でしょうか? 簡単に説明すると次のようになります。

失業者
職を「失った」ことがあってもなくても、働ける人のうち仕事を探している人(学生以下は除く)。
無職
仕事を探していない人やできない人も含め、現在職に就いていない人(学生以下は除く)。無業者。

takayuki / Shutterstock.com

↑「あたし自分の意志で辞めたのに『失業者』って変じゃない?」「ボクなんてまだ就職してないのに『失業者』だよ」

「失業(中)」や「失業率」は英語で何と言う?

では、「失業」は英語でどう表現すればいいのでしょうか? 英語では次のように状況によって表現が大きく変わります。

失業しました。
I've lost my job.

このように「失業」という日本語を動詞として使っている場合は、先ほどの「1. 職を失うこと」の意味にしかなり得ません。つまり、この場合は迷わず lose one's job (職を失う) というフレーズを使えます。

失業中です。
I'm out of work.

この「失業中です」という日本語は先ほどの「失業者」のうち本当に失業した人 (=職を失った人) が言うセリフだと思いますが、out of work (労働の外にいる) という表現は以前は労働の中にいて(つまり働いていて)それを失った感じがあるため「失業中です」に最適と言えます。

同じく「失業中」の英語として和英辞書などに載っている between jobs (前の職と次の職の間にいる) という表現のほうが前職があったことが明確ですが、「失った感」がないのに加え、次の仕事が決まっていてまだ始まっていない場合にも使えてしまいます(つまり「失業中」のような暗い表現ではありません)。

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↑「ってことはクビになって次の仕事も見つからない私は "I'm between jobs" って言えば哀れな感じがしないのね?」

失業者の割合 (=失業率) は何パーセントですか?
What is the unemployment rate?
失業した人の割合は何パーセントですか?
What percentage (have) lost their jobs?

この2つの日本語は全く同じことを尋ねているように思えるものの、1つめは職を「失った」のではない人たちまで含む「失業者」全体の割合、2つめは職を本当に失った人たちの割合を尋ねています。

先ほど書いたとおり日本では職を「失った」ことがあってもなくても「働く能力も意欲もあるのに職に就けない状態」にある人を「失業者」と呼びますが、英語では employed (雇用されている) の逆の unemployed (雇用されていない) という単語を使って unemployed person (非雇用者) と表現します。そのため、失業者 (=非雇用者) の割合を意味する「失業率」も英語では unemployment rate (非雇用率) と表現されます。

なお、英語圏では自営業者/個人事業主も自らによって「雇われている」と考えるため、self-employed (自雇用者) と表現します(詳細は #130 「自営業/個人事業主」や「自由業」は英語で何と言う? を参照)。つまり、自分自身にも他人にも雇われていない人(で求職中の人)が unemployed person になります。

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↑「スミマセン、日本の非雇用者の割合
どれくらいですか?」「えーと...それって自営業者も含むの?」

今回見つかった「失業者」の主な英語を見ると、本当に職を失った人を意味する表現とそれ以外の非雇用者も含む表現が混ざっているのが分かります。本当に職を失った人を表したい場合は、1人であれば "a person who (has) lost their job" (his or her よりも their のほうが今は普通)、複数人であれば "people/those who (have) lost their jobs" となり、その意味での「失業」は loss of one's job や job loss になります。

「無職」は英語で何と言う?

最後は、「無職」の英語についてです。これも英語ではいくつかの表現があります。

無職です。
I don't work. / I don't have a job. ※単に「働いていない/仕事をしていない」という意味。
I'm unemployed. ※仕事に就けていないこと(経済学では就活中でもあること)を意味する。(仕事を探すのをあきらめた人など、就活中ではない人は経済学で non-employed と呼ぶらしい)
I'm jobless. ※同じく仕事に就けていないことを意味する。unemployed よりもくだけた表現(少なくともイギリスでは unemployed を使うほうが普通)。
I'm retired. ※定年退職者など、もう働かなくてもいい人が使う表現。

unemployed は先ほど説明した「非雇用 (=雇われていない)」という意味で、自分の意志で退職した人や働いたことがない人が使ってもおかしくないため jobless と同じく「失業中」ではなく「無職」の英語だと言えます。例外として、次の派遣先の仕事が決まらない「待機中」の派遣社員の場合は、「無職」の状態のまま派遣会社に「雇われている」のでこの unemployed という表現を使うと嘘になってしまうでしょう。

なお、今回見つかった主な訳語には the unemployed と the jobless も含まれていますが、このように the を付けて形容詞ではなく名詞として使う場合は「失業者たち」という意味になります。

最後の retired は定年に限らず仕事から引退した人たちに使われる言葉です。日本ではこの人たちも「無職」と表現されることが多いですが、英語では unemployedjobless ではなく retired と表現します。

以上、お役に立てる内容だったでしょうか? これで「失業」と「無職」の英語表現の違いが分かりやすくなったかもしれません。

職を「失った」のではなく自分の意志で辞めて次の仕事が見つからない方は、それでも「失業保険」や「失業手当」を受け取れると思いますので、受給条件などを早速調べてみましょう...