オンライン和英辞書や英語学習サイトの英語訳を訂正・修正・補足して解説する『Eiton English Vocablog』。第167回は「使用(済み)感」や「使い心地」の英語についてです。
◆当ブログはアメリカ英語とイギリス英語が対象です。その他の英語では表現が違うことがありますのでご注意ください。
Jira / Rawpixel.com
↑「えーと...少し使用感はありますが、使用感は抜群です」(ん? どういうことですか?)
まず、2つの意味を持つ「使用感」とそのうちの1つと同じと言える「使い心地」はオンライン和英辞書や英語学習サイトでそれぞれどう英語に訳されているのでしょうか?
見つかった主な訳語とその訳語を載せた辞書・サイトをアルファベット順に記載します。
インターネット上の主な英語訳
1. feeling of use
2. impression from use
3. one's impression of a product after trying it out
4. sense of use
5. the feel of a product (as perceived by a user)
6. usability
7. usage sensation
8. used
9. wear
インターネット上の主な英語訳
1. comfort level
2. ease of use
3. pleasantness of use
4. usability
5. usage sensation
DMM英会話なんてuKnow?
教えて!goo
Reverso Context(辞書)
Weblio(辞書)
ご覧のとおり、主に use (使う(こと)) という文字を含むいろいろな訳語が見つかりました。「使用感」という日本語は本来は「使い心地」と同じく「使ったときの感じ」を意味するものですが、フリマアプリなどで品物を売る際に「使用済み感あり/使用した感じあり」という意味で「使用感あり」のようにも使われています。
以下では、どの辞書・サイトも載せていなかった表現も含め、この2つの意味を持つ「使用感」の英語について分かりやすく説明します。
「使ったときの感じ」という意味での「使用感」は英語で何と言う?
まず、上の「使用感」の英語のほとんど(1~7)はこの「使ったときの感じ」という意味での使用感ですが、使用自体の感じ(という分かりにくい言葉)を意味する feeling/sense of use や直訳の usage sensation はお勧めできない表現です。同じく「使い心地」の英語に含まれている pleasantness of use という表現も直訳で、comfort level は単に「心地よさ(の度合い)」を意味します。
この「使ったときの感じ」の意味での「使用感」にはどの辞書・サイトも載せていなかった the feel during use (使用中の感じ) というフレーズを使うのが最適で、例えば「その製品の使用感」であれば "the feel of the product during use" と表現できます。ただ、普通はそのようなフレーズを使うよりも "The product felt good when I used it" (その製品は使ったときの感じが良かった) のように表現するほうが自然です。
今の例文の felt (feel の過去形) は「~な感じを与える」という意味のため主語が製品側でしたが、例えば市場調査で製品を試した人に "How did you feel when you used it?" (使ったときの感じはどうでしたか?) と主語を人にして尋ねると "I felt great" (最高の気分でした) のような役に立たない回答をされてしまうため、これも主語を製品にして "How did the product feel when you used it?" と尋ねるのがいいでしょう。
McKinsey / Rawpixel.com
↑「実際にお2人で使ってみたときの感じはいかがでしたか?」「そりゃもう最高の気分でしたよ」
なお、「使用感」という日本語が「使いやすさ」や「使い勝手」を意味する場合は、今回見つかった主な訳語にも含まれている ease of use や usability が最適です。ただ、この場合も使用した感じについて尋ねるのであれば "Was it easy to use?" (使いやすかったですか?) のようにもっと自然な表現を使うのが普通です。
「使用済み感」という意味での「使用感」は英語で何と言う?
では、フリマアプリなどで使う「使用(済み)感」は英語でどう表現すればいいのでしょうか?
今回見つかった「使用感」の主な訳語で残されたのは8番目の used と9番目の wear ですが、これもどの辞書・サイトも載せていなかった signs of use (使った形跡) が正に同じ意味の表現で、例えば「この品には(多少)使用感があります」と言いたければ "The item shows (some) signs of use" と表現できます(この場合もわざわざこのフレーズを使わなくても "The item looks (somewhat) used" と表現できます)。
ただ、使用による劣化や損傷のことであれば wear (発音もスペルも「着る/服」の wear と同じ) を使うほうが多く、その場合は例えば "There are (absolutely) no signs of wear on this item" (この品には劣化や損傷が(全く)ありません) や "The item shows (some) signs of wear" (この品には(多少)劣化や損傷があります) と表現できます(この2文目も no signs とすれば劣化や損傷がない意味になります)。
Rawpixel / Rawpixel.com
↑「汚れも傷みもないのにこの枕は何だか使用感があるわよ」「臭うってことか??」
なお、wear の場合は signs of を使わずに "There is (absolutely) no wear on this item" や "The item shows (some) wear" と表現することもでき、2文目の場合は shows ではなく has も使えます。
また、簡潔に書く場合は use と wear のどちらの場合でも "Shows signs of use" のように主語を省いたり、some や no を使う場合は動詞まで省いて "No signs of wear" のように表現することもできます。
以上、お役に立てる内容だったでしょうか? 今回説明した the feel during use と signs of use が「使用感」の英語として多くのオンライン和英辞書に載ることを期待したいと思います。
国語辞書も「使用感」の定義に「使ったときの感じ」だけでなく「使用済み感」の意味も載せておくべきでしょう。